村岡 渡 院長の独自取材記事
恵比寿あごと歯のクリニック
(渋谷区/恵比寿駅)
最終更新日:2025/10/30
顎関節症、口腔顔面痛、口腔外科の3つの専門領域に加え、一般歯科診療まで幅広くカバーする「恵比寿あごと歯のクリニック」。院長の村岡渡先生は「原因不明のお口の痛みに困られている方に、当院の専門性がお役に立てれば」と柔和に語る。2025年7月に開院したばかりの真新しい院内は、落ち着いた内装。「患者さんの通院しやすさにこだわりました」という村岡先生の言葉どおり、恵比寿駅そばという立地や全室個室の診療室、精度にこだわった検査設備に至るまで、随所に患者への配慮が感じられる。朗らかな人柄が印象的な村岡先生だが、専門とする領域の診療について聞くと、確かな熱意を感じる一幕も。芯が通った言葉選びに、開業への強い思いを感じた取材となった。
(取材日2025年9月19日)
3つの領域の専門性で「あごと歯」の不安に寄り添う
印象的なクリニック名ですが、名づけの由来や開業の経緯をお聞かせください。

私の専門である顎関節症や口腔顔面痛の分野で患者さんのお役に立ちたい、という思いを前面に出したかったんです。「あごと歯」と範囲の広いクリニック名にしたのは、虫歯や歯周病といった一般歯科にも細かく対応できるクリニックにしたかったから。過去に勤務していた大学病院や総合病院の口腔外科は、顎関節症の治療に特化しており一般歯科はお受けしていませんでした。時折患者さんから「ここで虫歯の治療はできないんですか?」とご相談いただく場面も多く、対応できないもどかしさを抱えていました。そこで顎関節症と、以前より力を入れていた口腔顔面痛、一般歯科も合わせて診療できるクリニックの必要性を感じ、開業に踏み切った次第です。顎の痛みのご相談で来院された際、虫歯などが見つかった場合に一緒にケアできるのは当院の強みの一つとなっています。
あまり聞き慣れない病名ですが、口腔顔面痛とはどんな病気なのでしょうか?
通常、患者さんから「歯が痛い」という訴えがあれば、歯や歯周組織などの処置を行います。口腔顔面痛は、顎や口周りなどに痛みを感じるものの、原因がはっきりせず不調が続く病気です。症例を見てみると、体の神経痛を歯の痛みだと感じてしまっていたり、心臓の痛みを歯の痛みと思ってしまっていたり、メンタルからくる痛みだったりと、原因はさまざま。鑑別には体全体も含む広い視野が必要となりますから、歯科だけでなく医科的な目線も重要となるんですね。持病のある患者さんや注意が必要な患者さんに関しても状態を丁寧に把握し、可能な限り院内で対応させていただきます。
大規模病院ではなく「街のクリニック」で診療する理由はどんなところにあるのでしょう。

顎関節症や口腔顔面痛の診療を専門に行っているクリニックは限られており、大規模病院で対応していても通院が難しいというケースが見受けられました。また口腔外科も含め、これらの3つの分野に精通する歯科医師は少ない印象があります。だからこそ、街のクリニックで専門的な診療が提供できれば、多くの患者さんの助けになると考えました。口腔外科で研鑽を重ねていた時期に恩師から「口腔外科でも虫歯や歯周病の治療スキルは大切だ」との教えを受け、一般歯科への対応力も磨いてきました。その経験が、総合的な歯科診療の提供という私の目標にもつながっています。街のクリニックといっても、部分麻酔での手術であれば大学病院や総合病院と同等のレベルを届けられるよう経験を積んできました。例えばインプラントの治療では、ベーシックな埋め込みの手術はもちろん、骨造成が必要な難症例の実績も豊富です。
通いやすさへの配慮に満ちたクリニック
恵比寿駅前を開業の地に選んだ理由をお聞かせください。

顎関節症や口腔顔面痛を専門とするクリニックはあまり多くないため、遠くから通ってくださる患者さんのためにも、アクセスの良さにはこだわりました。いくつか候補地があったのですが、恵比寿駅は複数路線が通っていて、通いやすいイメージのある街だったこともあって惹かれるものがありました。以前に勤務していた病院は東急東横線の沿線が最寄りだったため、続けて通ってくださる患者さんにとっても乗り換えが少ないのは喜んでいただけそうだなと。気軽にかかれるのが街のクリニックの良さだと思いますので、通いやすさや駅の雰囲気、近県からの距離など、すべてがぴったりだったこの場所に決めました。
利便性の他に、診療で大切にされていることはありますか?
診察の基本は患者さんとの会話のため、コミュニケーションは特に重視しています。伝えにくいことを伝えてもらうためにはどうしたらいいか、どこまで会話を掘り下げるかなど、適切な関係性を構築しながら問診するよう努めています。併せて注力しているのが、診察をスムーズに行うための事前準備です。診察前にウェブ問診表にご記入いただくのですが、経過や症状の項目が細かく分かれています。ご面倒に思われるかもしれませんが、ご入力いただいた内容はそのまま電子カルテに反映されるため、診察時に何度も症状を聞き直す手間が省け、速やかに検査に移行できるというメリットにつながっています。
会話や検査から治療のヒントを得るため、設備にも工夫を凝らしたそうですね。

特に顎関節症や口腔顔面痛の診察では、患者さんとしっかり向き合い、さまざまな聞き取りをすることが大切です。安心感を持ってお話ししていただけるよう、診療室はすべて個室になっています。一方で、閉鎖的な空間で歯科医師と話すことに緊張感を持つ方もいらっしゃるかと思いますので、隣室の声が聞こえない程度にオープンスペースを設けるなどパブリックな空間も意識。圧迫感を与えないバランスを大切にしました。検査設備については、CTやMRIは大学病院の口腔外科でも扱っていましたので、開業前からこだわりがありました。例えばCTは顎の関節まで撮影できる機械を導入しており、これはインプラントの治療時、骨造成を行う際の大きな指針となります。顎関節症の治療においても検査機器は欠かせませんから、機器の精度は妥協したくない部分でしたね。
高い専門性と総合力で笑顔の通院を後押し
現在のご専門を学ばれたきっかけを教えてください。

鶴見大学歯学部を卒業時、感じていたのは「総合的に歯科医療を学びたい」という思いでした。そこで、口腔外科をはじめインプラントや補綴、歯周病、一般歯科など各分野の診療を3ヵ月おきにローテーションで経験できる慶應義塾大学医学部の歯科・口腔外科に進みました。特に興味を持ったのが、顎関節症と口腔顔面痛の分野です。当時、日本国内で口腔顔面痛の研究が盛んになり始めていて、「好きを得意にしたい」という気持ちと分野の盛り上がりが後押しとなり、専門性の確立につながりました。慶應義塾大学病院の歯科・口腔外科では現在も非常勤講師として顎関節・口腔顔面痛の外来を担当していますので、難しい症例は大学病院と連携して迅速に対応します。
専門家の視点から見た、顎関節症や口腔顔面痛の受診のタイミングを教えてください。
顎関節症については、「口が開けにくい」「顎が痛い」「カクカクと音が鳴る」といったお悩みがあればご相談にいらしてください。また今使用しているマウスピースが合わない、症状がなかなか良くならない……そんなお悩みがある方も、ぜひ一度ご相談ください。当院ではマウスピースの調整や再診察を行い、必要に応じて痛みを抑えるお薬も処方しています。食いしばりが強い方には、超音波による治療を併用することもありますが、医療的な必要性をしっかりご説明した上で行います。口腔顔面痛については、「いくつも歯科医院を回ったけれど原因がわからない」「虫歯も歯周病もないのに歯が痛む」という方はぜひご来院ください。口腔顔面痛の診療は専門性が求められるため、かかりつけ医の先生からのご紹介で来院される方がとても多いです。
最後になりますが、患者さんへのメッセージをお願いします。

顎関節症や口腔顔面痛の診療をしていると、長年痛みに悩んできたという患者さんと出会う機会がたくさんあります。歯科治療そのものに不安を覚える方も多いですから、つらさを少しでも和らげられるクリニックをめざしたいですね。丁寧な問診や治療前後の経過説明を重視したり、予防歯科を見据えた治療をご提案します。「痛い、不安」と通っていた場が、「安心できるクリニック」「将来の自分のために」と笑顔で通える場になれるよう、精いっぱい努めています。専門的かつ総合的な歯科治療を提供する身近な存在として、皆さんのお役に立てれば幸いです。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療(検査費用含む)/54万2000円~、骨造成/11万円~、口腔顔面痛の診療/5万5000円~、顎関節症の治療/4400円~

