本田 和也 理事長の独自取材記事
ほんだ内科クリニック
(川口市/蕨駅)
最終更新日:2025/10/30
蕨駅からバスで約25分、静かな住宅地にたたずむ「ほんだ内科クリニック」。理事長を務めるのは本田和也先生だ。大学病院で培った腎臓内科の専門知識を地域医療に還元すべく、2024年7月に継承開業して、新たな一歩を踏み出した。「いつも笑顔で」を診療のモットーとしている本田先生。インタビューではどんな質問に対しても丁寧に答える姿勢が印象的だった。そんな本田先生は、腹膜透析を活用した通院負担が少ない「おうち透析」や、患者との長期的な関係構築を大切にする訪問診療に注力しているそう。取材では、地域医療への思いや今後の展望について詳しく話を聞いた。
(取材日2025年10月3日)
高度医療から地域医療へ、クリニック開業への決意
まずは、病院での勤務医から開業医への転身を決めた経緯をお聞かせください。

大学卒業後は、日本赤十字社医療センターや東北の大学病院にて、腎臓内科の医師として勤務していました。当時は主に重度の腎炎や透析、腎臓移植など、専門性を要する医療に携わってきましたが、次第に病気の根本には生活習慣病が大きく関係していることが多いと気がついたんです。それから、「患者さんともっと近い距離で、さまざまな病気に関係する生活習慣病にきちんと向き合いたい」という思いが強くなりました。また、勤務医時代に訪問診療も経験する中で、それを自分の力で実現・提供したいとも考えていたことから、開業を決意しましたね。埼玉県は人口に対して医師数が少ない地域であるため、自分が携わることで地域医療に貢献できたらと考えて、この地での開業に至りました。
腎臓内科を専門に選ばれた理由を教えてください。
透析をはじめとする腎臓の病気は、年齢を問わず誰もがなる可能性がある病気が多いです。つまり、幅広い年齢層の患者さんに対して、医療を通じて寄り添うことができると考えました。また腎臓内科は、採取した病変部を調べて診断する病理の一面のほか、移植という外科的な一面もある領域です。さまざまな経験を積み、しっかりと納得した上で進路を選択できると、まだ自分のやりたい領域が定まっていなかった頃に考えたついたことも理由の一つですね。さらに、腎臓内科は内科の中でも比較的新しい領域なので、自分の強みをつくれるのではないかとも考えました。実際に専門家として経験を積む中で、腎臓が老廃物の排出や血圧調節、赤血球の生成など、多くの重要な機能を担っていることを改めて実感し、この分野の重要性を確信しました。
こちらのクリニックの診療理念は何ですか?

当院は「何でも気軽に相談できるクリニック」をめざしています。私は腎臓内科に限らず内科全般を学んできたので、腎臓に関する悩みや疾患はもちろん、日常の些細な不調もご相談いただけます。高血圧症や糖尿病、花粉症をはじめとするアレルギー症状まで、幅広く対応しています。健診で異常を指摘された方の精査も行っていますので、体調に関することで気になることがありましたら、何でもお話しください。また、クリニックのロゴマークで診療理念を表現してみました。私の苗字である本田の「H」をもとに人と人が支え合うデザインにして、温かさや安心感を感じてもらえるように木のモチーフを加えたのです。
「おうち透析」をはじめ多様なニーズに応えようと尽力
こちらのクリニックで対応している腎臓内科の診療について教えてください。

腎臓内科では慢性腎臓病やIgA腎症、血尿・タンパク尿、尿の泡立ちなど幅広い症状に対応しています。採血や採尿、エコー検査など、多様な検査による診断から治療まで、なるべくすべてを院内で完結できる体制を整えました。生活習慣の改善指導も含め、患者さん一人ひとりに合わせた治療を心がけています。その中でも特に力を入れて取り組んでいるのが、腹膜透析ですね。腹腔内に透析液を入れて老廃物や余分な水分を除去するための透析方法であり、患者さんご自身がご自宅で管理できる「おうち透析」が実現できるんです。透析というと病院にこまめに通院する必要があるイメージがありますが、腹膜透析を活用すれば通院の手間を大幅に減らせるでしょう。透析の負担を少しでも減らしたいとお考えの方は、ぜひ相談しに来ていただければと思います。
訪問診療やオンライン診療にも対応されているそうですね。
ええ。開業してから、専門的な診療を主に提供する病院の勤務医とは異なり、開業医は医療の窓口として幅広い診療を提供するということを実感しました。これまでに培った多様な診療知識・技術を生かせると、また患者さんと長期的な関係を築けるとも考え、訪問診療も提供できる体制を整えたのです。訪問診療でも高血圧症や糖尿病、認知症、脳梗塞など幅広く診ています。私は総合内科の医師としても研鑽を積んできたので、受診すべき状態かご自宅で様子を見て良いかの適切な判断も可能です。またオンライン診療では、内科や皮膚科、アレルギー科などの症状に対応しています。移動時間や待ち時間を節約したい方、いつもの薬が必要でも忙しくて通院する時間がなかなか取れない方にご利用いただいています。今後は、医療が届きにくい地域へのサポートもしっかりとできるように、体制を整えようと考えています。
診療の際に心がけていることはありますか?

「ずっと笑顔で、決して怒らないこと」を心がけています。病気・症状に対して怖さを感じている患者さんは少なくありません。それなのに、医師が怖い雰囲気をつくってしまうと、さらに患者さんの不安をあおってしまうことになるでしょう。患者さんが安心して何でも相談できる環境をつくれるように、私は常に笑顔でいることを大事にしているのです。また、患者さん一人ひとりに対して本気で向き合うことも大切にしています。実現に向けて、「お話ししたいことありますか?」とお声がけして患者さんがお話ししやすい機会をつくったり、なるべく目線を同じ高さに合わせたり、会話をしない時間も設けて手足を観察したり、一秒一秒を大事にしながら診療しています。
情報発信と予防医療で地域貢献を図る
スタッフの皆さんの強みについて教えてください。

看護師のほとんどが病院勤務の経験があるなど、ベテランぞろいです。そのため専門性もありながら、さまざまな状況に満遍なく対応できるのが強みだと感じています。事務スタッフも、レセプトチェックから電話対応まで、幅広くこなしてくれていて、本当に頼りになりますね。ちなみに当院には鍼灸師も在籍しているんですよ。さらに前院長も週2日ほど診療に携わり、専門である外科系の相談にも対応してくださっています。こうしたチーム体制を生かし、より良い診療を提供できていると実感しています。
今後の展望について教えてください。
医療機器のさらなる充実化を考えています。まずは訪問診療用のポータブルエコーを導入予定でして、腹部や腎臓だけでなく関節なども含めて診られるようにして、診療の幅を広げたいのです。また、正しい医療情報を一人でも多くの方に知っていただけるように、SNSや動画配信サービスを活用した情報発信を計画しています。「皆で健康になろう」というコンセプトで、お子さんから高齢の方まで誰でも理解しやすい、医学の話をわかりやすくまとめた内容を発信したいんです。インターネットには間違った情報も多くあるので、勘違いにつながらないように、「少なくともこれだけは知っておいてほしい」という内容を伝えていきたいですね。さらに学校での講座なども開いて、病気や健康に対する教育にも力を入れたいです。地域全体で予防を強く意識できるような取り組みができたらと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

受診はしていないけれど、実はいろいろな悩みや症状で困っているという方は多いと思います。そのときは、病気かどうかわからない場合でも、まずは一度受診していただくか、オンラインで相談してみることをご検討ください。また、健康の基本は「よく食べて、よく動き、早く寝る」ことだと考えています。「当たり前」だと感じると思いますが、本当に大事なことですのでぜひそこから意識を始めてみるのがお勧めです。当院は地域の方々にとっての「頼りになるかかりつけ」になれるよう、スタッフ一丸となってサポートさせていただきます。何か困ったことがあれば気軽にご相談ください。「受診して良かった」と思っていただけるよう、これからも邁進していきます。

