重田 浩貴 院長の独自取材記事
しげた歯科クリニック
(名古屋市千種区/吹上駅)
最終更新日:2025/06/09

千種駅から徒歩約13分、ショッピングモールから徒歩6分の場所に2025年4月1日、新たに開院した「しげた歯科クリニック」。かつて祖父の代より地域に根差した診療を続けていた「重田歯科医院」が父・祖父の他界により一度閉院を余儀なくされたものの、約17年の時を経て、現院長の重田浩貴先生によって同じ地で再開した。「重田歯科医院を閉じてしまったことがずっと心残りだった」と語る重田院長。自らが生まれ育った地域に歯科医療で貢献したいという強い想いのもと、地域医療の再出発を果たした。診療モットーは、患者の希望を第一に寄り添うこと。温かな笑顔と気さくな語り口も魅力の重田院長に、同院のこだわりや診療方針、そして今後の展望について話を聞いた。
(取材日2025年5月8日)
世代を超えて愛され、地域に根差した診療を提供したい
このエリアで開院された経緯をお聞かせください。

この地を選んだのは、私の実家であり、かつて祖父と父が診療していた「重田歯科医院」があった場所だからです。大学卒業後は関東で勤務していましたが、実は在学中に父が亡くなり、その約5年後に祖父も急逝したことで歯科医院は途絶えました。その後、大学教員を経て開業を検討する中で、この地に戻る決意を固めました。地域の診療ニーズや家族の事情を総合的に考慮し、私たち親子3代が暮らしてきた、地域に根差した場所での再出発が最適だと感じたからです。当地では約17年ぶりの歯科医院の開院となりますが、地域の皆さんに貢献できればと思っています。
思い出がたくさん詰まった地での開院なのですね。
そうですね。開院してまだ1ヵ月ほどですが、祖父や父の代に通ってくださっていた患者さんに来院していただくことも多く、「また近くに歯科医院ができて助かる」と喜んでいただいております。実は、私が子どもだった頃に比べてこのエリアは若い世帯の方々が増えており、出身小学校でも児童数が増えているそうです。ですので、ご高齢の方やお子さんも多く住んでいる地域なので、特定の分野や年齢層に特化せず、幅広い診療を通じて地域の皆さんのお役に立てるよう心がけています。特別なコンセプトは設けていません。身近なかかりつけの歯科医院として、小さなお子さんからご高齢の方まで、どなたでも気軽にご相談いただけるよう、末永く安心して通ってもらえるような歯科医院をめざしています。
すてきな院内ですが、特にこだわった部分などはありますか?

院内設計でまずこだわったのは、「白くない壁」です。いかにも医療機関らしい無機質な空間ではなく、グレーの壁にすることで圧迫感のない落ち着いた雰囲気をめざしました。また、患者さんとスタッフの動線を分離することで、安全性とプライバシーの確保にも配慮しています。私自身が子育て中ということもあり、医療機器に子どもの手が触れないようなレイアウトにしたのもポイントです。診療室はすべて半個室で、キッズスペースやカウンセリング設備を設けたファミリールームも用意し、小さなお子さん連れでも安心して通院できるようにしました。さらに、妻のアドバイスでスリッパを廃止して土足にしました。特にご高齢の方やお子さん連れの方は履き替えが大変だと思うんです。どなたにとっても来院しやすい歯科医院であるよう、負担の軽減や衛生面、バリアフリーにも配慮しています。車いすやベビーカーのまま、診療室までスムーズに入っていただけます。
「相談して良かった」と思ってもらえるように
先生は大学にお勤めの際、研究に従事されていたとお聞きしました。

はい、主に材料の研究に取り組んでいました。例えば、歯に詰める詰め物の強度や耐久性などを評価するような内容で、新しい製品がメーカーから発売される前に、その性能を検証し、データを提供するといった研究です。このような経験は、実際の診療の場でも生かせる部分があると感じています。例えば、使用する材料を選ぶ際、「どのような構造でできているのか」「どういった特性があるのか」といった点を理解した上で判断できるところです。イメージとしては、車を選ぶときに技術的な知識を持った人が、ただディーラーに勧められるままではなく、自分なりにその車の技術的背景を理解して選ぶような感覚に近いと思います。私自身も、材料についてある程度の知識がありますので、その知識をもとに納得のいく物を選び、治療に活用しています。
診療の際に心がけていることはありますか?
診療において心がけているのは、患者さんにきちんとご納得いただいた上で治療を進めることです。特に初診では、応急処置やクリーニングを除き、カウンセリングを中心に行います。生活背景やご希望を丁寧に伺いながら、その方に適した治療方針を一緒に考えます。環境面でも、当院ではカウンセリングルームを併設した診療ユニットを導入し、診察中にその場でしっかりご説明できる体制を整えています。ご家族の同席も可能です。また、もう一つ大切にしているのは「患者さんの希望を最優先にする」ことです。必要な処置であっても、歯を抜きたくないというご希望があれば、リスクを丁寧にご説明し、複数の選択肢を提示するよう心がけています。痛みの軽減にも配慮し、「相談して良かった」と思っていただける診療をめざしています。
お子さんの治療ではいかがでしょうか。

お子さんの治療でも基本の考え方は同じで、「歯科医院は嫌な場所ではない」と感じてもらうことを大切にしています。緊急性がなければ、まずは椅子に座ることや器具に慣れることから始め、無理なく進めるよう心がけています。当院ではキッズスペースを、待合室ではなく診療室に併設しています。診療室に入りたがらないお子さんでも「中におもちゃがあるよ」と声をかけると、自然に入ってくれるのではと考えました。診療用チェアに座れない場合でも、キッズスペースで口の中を診たり掃除したりすることもあります。無理に治療して歯科医院が嫌いになってしまうより、少しずつ慣れてもらうことが、将来的にも大きなプラスになると考えています。
父や祖父の志を継ぎ、再び新たなスタートを
歯科医師をめざしたのは、お父さまやおじいさまの影響からですか?

はい。やはり父や祖父の影響は大きかったと思います。ただ、両親から「歯科医師になれ」と言われたことは一度もありませんでした。歯科医院が2階、自宅が3階という環境で育ち、日常的に仕事している姿を見ていたことで、小学生の頃から自然と歯科医師をめざすようになりました。独特のにおいや音にも親しみがあり、むしろ好きでしたね。患者さんに「ありがとう」と言っていただける仕事であり、患者さんとじっくり向き合いながら信頼関係を築ける点に大きなやりがいを感じています。ときに一生のお付き合いになることもあり、そんな深い関係性が築ける職業に魅力を感じて、この道を選びました。
今後の展望を教えてください。
当院は「尖った特徴がないのが特徴」と思っています。年齢や症状を問わず、地域の皆さんの困り事に幅広く対応できる歯科医院でありたいと考えていて、「この治療はできません」と極力言わずに済む体制を整えています。今後はさらに多くの患者さんに対応できるよう、体制強化を進めていきたいですね。特に子どもの歯列矯正に重要性を感じており、精密検査が可能なエックス線機器も導入しました。また、予防やメンテナンスにも力を入れるため、診療ユニットを最大5台まで増設可能なスペースを確保しています。治療後の健康を守るためにも、安心して通っていただける歯科医院づくりを、これからも心がけたいです。
抱負も込めて、読者へメッセージをお願いします。

歯科医師として研究や臨床など多様な経験を積んできましたが、家業の歯科医院を一度閉じることになってしまったのは、ずっと心残りでした。父が亡くなったときはまだ学生で、祖父のときは本当に急なことで、継承もかないませんでした。当時の患者さんには何のお知らせもできず、突然の閉院となってしまったことを、今でも申し訳なく思っています。その想いを胸に、ようやくまたこの地で再出発できたことをうれしく思います。父や祖父の時代を知っている患者さんから声をかけていただく度に、地域の皆さんに支えられていることを実感している毎日です。これからも、一人ひとりに寄り添う診療を心がけてまいりますので、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。