太田 惠一朗 院長の独自取材記事
ホリスティッククリニック東京
(中央区/銀座一丁目駅)
最終更新日:2025/11/12
銀座一丁目駅、有楽町駅、東京駅から徒歩圏内。ビルの3階に位置する「ホリスティッククリニック東京」は、2024年7月に開業したクリニックだ。院長の太田惠一朗先生は、長年、大学病院やクリニックなどで多くの診療経験を積み重ねてきたベテランドクター。声楽家を志していたという太田院長は、ハキハキとした口調でわかりやすく治療や症状の説明を行ってくれる頼もしい存在だ。特に消化器系の疾患に対する薬物治療や外科治療に詳しく、必要に応じて連携施設で自ら外科治療にも参加するという。「患者さんに対してベストな治療法は何か考え、どんなときも前向きに治療に取り組めるようにしていきたい」と笑顔で語る太田院長。どのような診療に取り組んでいるのか、話を聞いた。
(取材日2025年10月15日)
経験に基づく知識と専門性を診療に生かす
開業に至った経緯を教えていただけますか?

6年前に大学を定年退職し、知り合いが経営に関わっている西麻布のクリニックに勤務していました。しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに自由診療に切り替えることとなり、都内にある別のクリニックで理事長や院長職に就きました。その後、がんを専門とする医師が生前に診療していたクリニックをリニューアルオープンする話が持ち上がったことを機に、2024年7月、当院を開業しました。これまで培ってきた経験やスキルを生かし、場所を変えてここ八重洲で新たにスタートいたしました。
どのような診療体制が整えられているのでしょうか。
開業から約1年がたち、少しずつ院名を知っていただき、新たな患者さんが増えてきています。八重洲という土地柄、企業に勤めている方が多いですね。「健康診断で引っかかって」と、二次的な相談も多いです。大学病院と違い、クリニックは患者さんが最初に受診する窓口的な役割が大部分を占めています。詳しい検査が必要な場合は、今までの人脈を生かして症例ごとに医療機関を紹介できるよう体制を整えています。これからは、一般の方が対象の健診体制を整えて、生活習慣病の早期発見や指導も充実を図る予定です。
先生は漢方薬についても詳しいとお聞きしました。

大学病院時代、手術後に起こるさまざまな症状や合併症へのアプローチとして、漢方薬を使っていました。勉強するきっかけになったのは、大学病院の手術で着用するゴム手袋です。今でこそノンパウダーの製品がありますが、当時はそれがなく、手袋の着用をスムーズにするために中にパウダーがついていたんです。そのパウダーで手がひどくかぶれてしまい困っていたところ、漢方薬に出会いました。以来、漢方薬を勉強して、西洋薬ではカバーできない部分を補ってきました。ですから、漢方薬との付き合いは、かれこれ40年以上になるんですよ。
外科の医師で、漢方薬に詳しい先生は少ないのではないでしょうか。
まだ少ないと思いますね。しかし、外科の領域として見ると漢方薬は親しみやすいんです。例えば、薬物療法の際の副作用などを軽減する目的で行う支持療法といった、西洋薬では対応しきれない部分を漢方薬でカバーする外科の医師は多いように思います。私も含め、漢方薬に興味を持って勉強会に参加している外科の医師は増えてきていますし、こうした経験が、現在の総合診療体制にも生かせていると思います。
患者とのコミュニケーションを大切に幅広い症状に対応
こちらでは、どのような場合に漢方薬を使用するのですか?

例えば、女性特有の不定愁訴で処方することはよくありますね。また、特に今年のように暑くて熱中症や夏バテが起こりやすい時期などは、暑さから来る体調不良に対して処方できる漢方薬もあります。西洋薬ではなかなか合う薬がなくても、漢方薬は細かい症状まで適応範囲が広く、さまざまなお悩みへの対応が可能です。西洋薬と漢方薬のメリットやデメリットを知っているからこそ、うまく使いこなせていると思っています。漢方薬のことを知っているのと知っていないのでは、診療もまったく変わってきます。新型コロナウイルス感染症罹患後の諸症状への診療にも力を入れています。倦怠感や不眠などの症状に対して、主に漢方薬を用いて治療を行っています。
こちらでは、胃切除後障害にも対応しているとか。
消化器腫瘍の治療は、私の専門分野です。胃がんなどで胃を切除すると、さまざまな障害が出てくるんですね。胃が小さくなることで生じる小胃症状や、消化・吸収不良のほか、胃液の分泌量が低下して、食物をためこむ機能が衰え、食べ物が急速に腸へと排出されてしまうダンピング症候群などがあります。当院は、こうした手術後の不調を減らすための相談や診療の窓口としての役割もになっています。また、胃切除後障害の諸症状に対しても漢方を処方しているんですよ。
オンライン診療も可能なのですね。

はい。これまでもセカンドオピニオンを主としたオンライン診療に長く携わってきました。新型コロナウイルス感染症の流行により通院を控えたり、発熱で通院できなかったりする人も多いでしょうが、当院ではオンライン診療でも発熱症状のある患者さんに対応していますので、ぜひ活用していただきたいですね。セカンドオピニオンは自由診療ですが、発熱などのオンライン診療は健康保険が適用されます。流れとしては、ホームページより予約していただくと、折り返し予約確定と日時の案内が送られます。予約時間になるとオンライン診療用のURLが記載されたメールが送付されますので、スマートフォンやパソコンからアクセスしてください。薬は、薬局からご指定の住所にお届けします。直接受診したほうが良い場合は、その旨をきちんとこちらからお伝えしますので、安心してご利用ください。
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?
患者さんが何を訴えているのかを十分に聞かなければならないと思っています。今の医学生は傾聴を含めたコミュニケーションスキルを身につける場がありますが、われわれの時代にはありませんでした。ただ、私は大学病院時代から緩和ケアや多職種とのチーム医療に関わっていて、その際にコミュニケーションスキルがとても重要視されるんです。講習会でも、患者さんやそのご家族とのコミュニケーションスキルを高めるための項目を学びました。立場上、若い先生方にも指導をしなければならなかったこともあり、ずいぶん勉強しましたね。それが、普段の診療にも役立っているのだと思います。
医師かそれとも声楽家か、最後まで迷っていた学生時代
医師になろうと思ったきっかけを教えてください。

やはり、外科の医師であった父の影響が大きかったと思います。常に父を見て育ってきましたから。私は子どもの頃から合唱団に所属していて、将来は東京藝術大学の声楽科に絶対進学しようと思っていました。高校3年生の最後まで願書を出すつもりでいたのですが、担任の先生から「医師になっても歌は歌えるけれども、藝大に進むと、その後医学部に入るのは難しいよ」と言われ、医学部の道を選びました。ですから、医師になっていなかったら、声楽家になっていたかもしれませんね。
休日はどのように過ごされていますか?
歌うことは大好きなのですが、新型コロナウイルス感染症の流行で、それがままならなくなりました。最後に歌ったのは2019年の3月です。それまでは、聖路加国際病院や日本医科大学付属病院などで毎年院内コンサートを開催していました。新型コロナウイルス感染症が落ち着いた今、今年の3月末より、本格的に声楽のレッスンをしています。友人に勧められ、5月と8月にはコンクールにも出場しました。将来的にはリサイタルを開催することも考えています。がんと総合診療専門の医師と声楽家の二刀流をめざしています。
最後に、地域の方に伝えたいことや、読者へのメッセージをお願いします。

総合的に診療を行っていますので、気になる症状がありましたら気軽に相談してください。不定愁訴など、どこに相談すればいいのだろうという症状にも、きっと力になれると思います。また、仕事で忙しい人にこそ、オンライン診療という方法があることをぜひ知っていただき、利用してほしいですね。具合が悪いのに医療機関に足を運ばなくても済みますよ。情報があふれる昨今、誤った判断に振り回されないよう、適切な治療方針を客観的に提示したいと思っています。

