櫻井 悠加里 院長の独自取材記事
ゆかりクリニック
(稲沢市/国府宮駅)
最終更新日:2025/03/24

JR東海道本線・稲沢駅から車で4分ほど。田園も広がるゆったりとした住宅地に「ゆかりクリニック」がある。生まれ育った地元にいつか恩返しをしたい、と長年考えていたという櫻井悠加里院長は、「近隣のクリニックや医療機関とも連携しながら、地域医療を支える力になりたい」と熱い思いを抱き、同院を開業。日本呼吸器学会呼吸器専門医、また日本内科学会総合内科専門医として、研鑽してきた技術と温かな人柄を併せ持つ櫻井院長に、特に注力している呼吸器・アレルギー疾患・感染症の治療について、さらに「なんでも話してほしい」と語る治療の方針や患者への思いについて聞いた。
(取材日2025年1月16日)
その人らしさを守る医療をめざしたい
医師をめざしたきっかけを教えてください。

子どもの頃、同居していた祖父が肺がんで亡くなりました。当時のがん治療は、抗がん剤の副作用が比較的大きく、痛みの緩和も今と比べると進んでいませんでした。「苦しい、痛い」と繰り返し、壮絶な闘病の後に亡くなったのを見て、ショックを受けましたね。病に苦しむ人を助けたい、もっと苦しまないような治療はできないものかと思い、いつしか医師の道を志していました。しかし一歩及ばずで、医学部の受験に一度失敗。合格した理学部で生物などを学び、広い意味で医学分野に関わろうと気持ちを切り替えました。ところが、そこで勉強すればするほど、「臨床で患者さんに向き合いたい、治療をしたい」という気持ちが強まり、諦められなくなってしまったんですよ。そこで再受験を決意し、翌年医学部に入学できました。
憧れていた医師になっていかがでしたか。
祖父の肺がんがきっかけで、自然と呼吸器内科の道を選びました。開業前はさまざまな病院で勤務医をしていましたが、亡くなる患者さんも少なくなかったです。残念な思いや悔しさ、患者さんを助けられなかったことに対する無力感を感じることもありましたが、亡くなった患者さんのご家族から感謝されることもしばしばあったんですよ。患者さんがその人らしく闘病や生活を重ね、その人らしく亡くなる、その経過をご家族は見守り納得してくださっているのだと感じ、報われる思いがしました。ですから、手を尽くして治癒や回復をめざした先に、これ以上の治療が難しいとしても、患者さんの尊厳を守り、最期までその人らしく過ごすことができるよう支援する。そんな医療をめざしていきたいと心に留め、現在に至ります。
地元である稲沢で開業されたのはどうしてですか。

稲沢という地域で育ててもらったという感謝の気持ちがあって、いつかは地域に貢献したいと思っていました。家族、友人、学校……本当に地域の方に見守ってもらいながらここまで来たので、恩返しをしたかったんです。開業への思いを知り合いの医師に語っていたら、その先生の手引きで、あっという間に開業まで漕ぎ着けることができました。近くに産婦人科や小児科のクリニックもあるので、私も開業によって地域医療を支える力の一端になれたらと思っています。患者さんの多くは、体の不調があって不安な気持ちで来院されると思います。そのため、院内は圧迫感を感じさせない、天井の高い開放的な造りにしました。少しでもリラックスしていただけるとうれしいですね。発熱している患者さんは、待合から診療、お会計まで動線を分けており、感染対策にも配慮しています。地域の方が通いやすい、開かれた場所にしていきたいです。
長引く咳、アレルギー、生活習慣病などの治療に注力
先生は呼吸器内科がご専門ですが、どんな症状があったら受診したほうが良いですか。

気になったら、どんな症状でも相談してください。特に長引く咳は、喘息や咳喘息、肺炎、感染症などが隠れている場合があります。1ヵ月以上続くようであれば、一度受診したほうが良いでしょう。新型コロナウイルス感染症の流行以降は、感染症にも敏感になっている方が多いので、割と早めに受診していただいていると感じます。当院には肺機能検査をして喘息の鑑別ができる機器も備えています。また、咳があって、喉あめをなめても一向に良くならないので検査したら、なんと肺炎だった、ということもあり得ますので、ぜひ検査を受けてほしいですね。最初に言ったとおり、私はどんな理由でも気軽に来てもらえたらうれしいです。話したいだけでも(笑)。くだらないと思われる悩みでも、その人にとっては非常に重大なことだと思いますし、皆さんの力になりたいと思っています。
鼻炎や花粉症など、アレルギーの治療にも注力されていますね。
アレルギー性鼻炎や結膜炎など、アレルギー疾患は身近なものです。特に花粉症に悩まされている人は多いですよね。鼻水、目のかゆみ、喉のイガイガだけでなく、肌に湿疹などが出る場合もあります。気になる症状があったら受診し、症状の程度や生活に合わせた治療を選択しましょう。花粉症の症状が重い方には舌下免疫療法もお勧めしています。これは薬を舌の下に置き摂取することで、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の症状の改善をめざすものですが、3年以上時間をかけて治療をする必要があります。あくまでも患者さんの希望や生活を尊重して、ベストな治療を選択できるよう、ご説明しています。
生活習慣病の治療にも力を入れていらっしゃるそうですね。

総合内科専門医として、生活習慣病についても積極的に治療に関わっていきたいと思っています。生活習慣病は名前のとおり、日々の生活習慣によって引き起こされるもので、治療としては特に食事、運動の習慣を見直すことで、症状の改善をめざします。近年はさまざまな薬も出ていますが、まずは食事と運動を無理のない形で改善して、なるべく薬を減らしていきたいですね。無理をしても続かないので、できることから少しずつ変われるようなコツをアドバイスします。二人三脚で治療に向き合っていきますよ。
困り事、悩み事を気軽に話せる場所に
先生の診療のモットーを教えてください。

患者さんの話をしっかり聞きたいと思っています。ですから診療時間が比較的長くなってしまうんですよね。他の患者さんを待たせるのは心苦しいのですが、患者さんが言いたいこと、聞きたいことをしっかりと話せないと、満足いく治療にはなりません。自分の悩みを受け止めてもらえたと感じるとき、患者さんは初めて納得して治療に向き合えるのではないかと思います。一見、症状とは関係のないようなことも、治療のヒントになる可能性もあります。ですから、気負わず好きなだけ、お話しいただいて構いません。女性ならではのデリケートな話や子育ての悩みなどは、私も当事者でもあるので、共感しながらお話しできると思います。子どもは3人おりますし、おしゃべりも好きなので(笑)。ぜひリラックスしてお悩みを教えてほしいですね。
開業早々、スタッフとのチームワークもばっちりのようですね。
当院のスタッフは、私が昔から知っている人で、全幅の信頼を置いています。一緒に働いていた経験もあるので、さまざまな部分でやりやすいですし、信頼関係があるので任せられる部分も大きいです。スタッフには、困ったことや患者さんにまつわることはすべて共有するようにしています。ですから、患者さんはふと気になったことがあれば、看護師や事務スタッフに話していただいても大丈夫です。診療時間を長く取っているとはいえ、言い逃してしまうことを、待合で思い出すこともあるでしょう。そんな時にはその場でご相談いただいて結構ですよ。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

自分が生まれ育った稲沢で開業し、地域の方に少しでも恩返しできることが本当にうれしいです。地域の雰囲気はあまり変わっていないなあと思う反面、少しずつ新しいマンションや住宅などが増え、新たに移り住んでいらっしゃったご家族も多いと感じます。そういった地域の幅広い世代の方に、気兼ねなく受診していただきたいですね。もちろん私は医師なので体のこと以外は解決できるわけではないのですが、それでも困ったことや悩みがあれば、気にせずお話しいただきたいです。さまざまな悩みの奥で、もしかしたら病気や疾患が原因になっている可能性もないとは言えませんからね。「クリニックに行ったらなんだかすっきりした」と思っていただけたら、これ以上の喜びはありません。