野口 亮介 院長の独自取材記事
天王寺 整形外科クリニック N
(大阪市天王寺区/天王寺駅)
最終更新日:2025/01/14

大阪メトロ御堂筋線、大和路線、大阪環状線などが乗り入れる天王寺駅より徒歩3〜5分、谷町筋沿いに立つビルの2階に「天王寺 整形外科クリニック N」がある。動線を考えて設計されたクリニック内はゆとりのスペースが確保され、リラックスして過ごせる空間となっている。院長の野口亮介先生は、各地の病院で手術を中心に診療経験を積み、「手術後も患者さんの診療に関わりたい」と同院を開設した。院内には運動器リハビリテーションを行うための広いリハビリルームを備えるほか、体外衝撃波治療や、エコー下で痛みのある場所に薬剤を注射するハイドロリリースといった新しい治療も積極的に取り入れている。「患者さんには、いつまでもしっかり動ける体でいてもらいたい」と語る野口院長に、同院の診療ポリシーや力を入れている治療などを聞いた。
(取材日2024年12月23日)
長く患者の診療に関わりたいと継業を決意
医師をめざしたのはご家族の影響ですか?

私は、よく風邪などをひく子どもで、そんな時に内科医の父に診てもらって、家族に医師がいると安心できるなと思ったのがきっかけです。虫垂炎になって父が勤務する病院に入院したこともあり、小学校の高学年の頃には医師になるという気持ちが定まっていました。医学部入学してからは、父と同じ内科よりもケガの治療や救急医療に興味があり、当初は救急救命を志望しようと考えていました。ただ、救急医療は初期治療についてはとてもやりがいのある分野なのですが、その後は患者さんを診ることがほぼなく、外傷を扱う診療科で、かつ手術などの治療後も患者さんと関わっていける整形外科を選びました。小学生の頃から水泳や剣道、野球などスポーツに関わってきたことも、整形外科を選んだ理由の一つです。
これまでのご経歴を教えてください。
大阪を中心に病院の整形外科に勤務してきました。大阪厚生年金病院(現・JCHO大阪病院)では、手の外科の先生について手外科の診療を専門的に学ぶことができました。整形外科の領域の中でも、手の外科は多種多様なケガや疾患があり、骨や関節、筋肉だけでなく、腱や神経など扱う範囲が広いのが特徴です。手術の方法もさまざまで、そうした幅広さに惹かれて、自分の専門分野として手の外科を選びました。
開業を決意された理由は?

勤務医時代はさまざまなケガや疾患に対して手術を行い、患者さんを救うことが誇りでした。しかし時代が進むと、手術を行わない保存療法の選択肢が広がり、保存療法やリハビリの重要性を実感するように。それに伴ってだんだんとリハビリをはじめとする保存治療で患者さんの訴えや悩みを改善したいと考えるようになり、開業することを決めました。開業にあたってこの場所を選んだのは、母校の医学部、これまで勤務してきた病院がこの周辺に集まっていることが最大の理由です。私自身にとっても非常になじみがあり、思い入れのある地域でもあります。
患者さんと接する際はどのようなことを意識されていますか?
できるだけ丁寧に話を聞いて、専門とする手の外科以外の訴えについても、きちんと対応できるよう、患部に触れたり、実際に体動かしてもらったりしながら、患者さんの状態をしっかり把握するようにしています。整形外科疾患の場合、痛みを感じる部位と、痛みの原因になっている部位が違うことも少なくないので、丁寧な診察が欠かせません。
先進的な治療法も積極的に導入
こちらの診療ポリシーを教えてください。

診療の際には、エックス線のほかエコー検査も使ってしっかり検査するようにしています。エコーは、エックス線検査のような被ばくの心配がなく、体を動かしながら状態を確認できるのがメリットです。生理食塩水に少量の麻酔薬やステロイドを混ぜて、痛みの原因となっている筋肉や神経の周囲に注入する疼痛治療を、当院ではハイドロリリースと呼んでいますが、この治療においても、エコーは重要な設備です。薬については、希望される方、必要と判断した方には処方しますが、できる限りリハビリを中心にしながら、機能の回復、生活の質の向上、お仕事やスポーツへの早期の復帰をめざします。
運動器リハビリに力を入れておられるのですね。
年齢を重ねていくと、どうしても体の機能が低下していき、場合によっては寝たきりになることもあります。だからこそ当院の患者さんには、痛みなどに悩まされることなく、きちんと動かせる体でいてもらいたいと考えています。体に痛みが出る場合は、体の使い方に問題のあるケースが多く、リハビリを通して負担がかからない体の動かし方を身につけ、体幹の内側にあるコアマッスルと呼ばれる筋肉を鍛えることで、動作の際の負担軽減や、痛みの軽減、機能回復を図ります。受診した日だけではなく、普段からリハビリに取り組んでいただけるよう、リハビリの動画が見られるアプリも提供しています。
手の外科について教えてください。

指先から肘までが手の外科が扱う範囲です。機能が複雑で小さな範囲にたくさんの関節が集まっており、整形外科の領域の中でも診療が難しいとされています。腱鞘炎でも、指で起こる場合もあれば、手首で起こることもあり病気の種類が多い分、手術の種類も多いのが特徴ですね。診断が異なると適した治療法も異なりますから、状態をきちんと見極めて診断するために、やはり手の外科について専門的な知識を持つ医師に相談されることをお勧めします。当院には、理学療法士に加えて作業療法士も在籍しており、手外科の疾患に適したリハビリにも対応しています。
こちらでは体外衝撃波治療も行っているそうですが、これはどのような治療ですか?
体への負担がほとんどない、慢性的な痛みの緩和や組織の再生を促すための新しい治療法です。当院の装置は収束型で、体のより深いところにある組織にアプローチします。対象となるのは難治性の足底腱膜炎で、健康保険が適用されます。
縁の深い天王寺で地域の健康に貢献していく
骨粗しょう症の治療にも注力されていますね。

骨粗しょう症で骨折が起こりやすい腰骨と太ももなど2ヵ所の骨に、種類の異なるエックス線を当てて検査するDEXA(デキサ)法の骨密度測定器を導入しています。かかとなどで図る超音波式の装置より、精密に骨の状態をチェックできるのが利点です。さらに、当院の場合は採血も行い、骨を造る機能を評価するマーカーを確認して、患者さんに適した薬を処方するようにしています。以前に比べて、骨粗しょう症の薬の種類が増え、どの薬を使うのか、治療期間が長いのでどういった順番で使うのかといったことをきちんと判断することが大切です。処方する薬の順番を誤ると、改善につながらない恐れもあるので、専門的な知識を持った医師に相談していただきたいですね。
スタッフさんとの連携についてお聞きします。
全員でクリニックのポリシーを共有するとともに、節目ごとに確認するようにしています。ポリシーに共感して集まってくれたスタッフなので、特に厳しく指導する必要はなく、みんなしっかり働いてくれています。また、当院では理学療法士や作業療法士は担当制なので、毎回同じスタッフが患者さんの治療を担当します。電子カルテを活用し、カンファレンスも行いながら、患者さんの情報をお互いに共有して治療を進めます。
先生のリフレッシュ方法を教えてください。
できるだけ本を読むようにしています。マインドフルネスや自己啓発、アンガーマネジメント、リーダーシップなどの本が多いですね。それがリフレッシュになっているかどうかは疑問ですが(笑)。
今後の展望を聞かせてください。

現在のところ、スポーツによる故障や外傷のリハビリで受診される患者さんがまだ少ないので、今後はその領域にいっそう力を入れていきたいと考えています。当院の治療の中心はリハビリなので、理学療法士、作業療法士の人数もさらに増やしていきたいですね。開業して間もないクリニックですが、一人ひとりの患者さんを丁寧に診察して、来られた時より少しでも良い状態で帰っていただけることをめざしています。私自身にとっても縁の深いこの天王寺の地で、地域の方々の健康にご奉仕したいと考えておりますので、悩みや困り事がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。