藤解 邦生 院長の独自取材記事
広島DS 内視鏡・日帰り手術クリニック
(広島市中区/本通駅)
最終更新日:2024/11/19
広電1号線・本通駅、アストラムライン・県庁前駅、広島電鉄路面電の紙屋町西停留場・紙屋町東停留場からいずれも徒歩1分というアクセス至便な場所に、2024年9月開業した「広島DS 内視鏡・日帰り手術クリニック」。藤解邦生(とうげ・くにお)院長は、父が廿日市市に開業した「とうげ外科胃腸科」で副院長を務めてきた。しかし同院は近隣道路拡張のため、2024年7月末をもって閉院。これをきっかけに紙屋町に移転、クリニック名も変更し、新たなスタートを切った。内視鏡検査と日帰り手術に特化した診療で、新たな地でも患者のニーズに応えるべく尽力する藤解院長に、その思いを聞いた。
(取材日2024年10月17日)
日帰り手術をライフワークに、がんの早期発見にも尽力
内視鏡検査と日帰り手術に特化されているそうですね。
クリニック名の「DS」は、Day Surgery(日帰り手術)という意味で、自分のライフワークとして続けてきた身近な言葉です。もう一つ、Digestive System(消化器系)という意味もあり、内視鏡でがんの早期発見をめざし一人でも多くの命を救いたいという思いを込めてつけました。僕はもともと外科の医師でしたが、中でも消化器外科の道を志した頃から日帰り手術のニーズの高さに着目していました。そして、「この日しか都合がつかない」という忙しい患者さんのために、安全な日帰り手術を提供できる場所をつくりたいと考え、研鑽を積んできました。日帰り手術を行うためには、設備はもちろん、医師の技量が必要です。麻酔の量や侵襲の大きさなどのバランスが重要になるため、一般の外科手術とはまた異なる、一歩踏み込んだ技量が必要なんです。
内視鏡を専門に間口を広げていらっしゃるのはなぜなのでしょうか。
「とうげ外科胃腸科」では地域の方々のホームドクターの役割を果たしながら、内視鏡検査と外科領域の日帰り手術といった、専門領域の診療を担当していました。胃がん・大腸がんは男女ともに日本人の死因の上位3位以内を占めています。消化器系のがんで亡くなる方を減らしたい、健診で引っかかった方の予防と早期発見に注力していきたいという思いで、これまで診療してきました。そもそものルーツは、僕が外科医として消化器がんの手術を担当する中で、がんが進行しており手術では治癒できない症例を数多く診てきたことです。早期発見の必要性を感じ、もっと早い段階で異変に気づける内視鏡での検査に注力したいと思うようになりました。クリニック名に「内視鏡」を掲げたのもこれが理由で、前身のクリニックよりも今後はさらに胃と大腸の内視鏡検査を増やし、一人でも多くのがんを未然に防いでいきたいですね。
開業にあたりこの場所を選んだのはなぜですか?
ありがたいことに「とうげ外科胃腸科」時代の患者さんが廿日市市から通って来られますし、広く広島県内や県外から来られる患者さんもいらっしゃいます。どなたでも通いやすい環境を考え尽くして、この場所に決めました。内視鏡検査は苦痛を伴うことが多いので、「楽に受けたい」というのが患者さんのニーズです。そのニーズにお応えするため、当院では内視鏡検査時に鎮静剤の使用が可能です。鎮静剤を使った検査後や、麻酔を使用した手術後に安全に帰宅していただくためには、公共交通機関でのアクセスが良い場所がいいだろうと考えました。手術をしたら通院も必要になりますから、そういった意味でもアクセスの良さを重視しました。
患者のニーズに応えて、土日の診療にも対応
痔の手術も日帰りで受けることができるのですね。
従来では痔の手術は入院することが一般的ですが、当院では日帰りで受けていただくことが可能です。痔は、市販の薬ではなかなかスッキリ治すことが難しく、長年悩まれている方が多いですね。痔には大きく分けるとイボ痔、切れ痔、穴痔(痔ろう)の3つがあります。そして実は、複数の痔を持っている方が多いんです。患者さんの痔がどれにあたるのかは、医師が診察をしてみないとわかりません。肛門の病気は複雑で、専門性を必要とする難解なものが多いんです。もちろん、いきなり手術をするということはありません。切らないで治療できるものに関してはそのほうが良いと思っていますので、まず診察をした上で手術が必要かどうかを見極めて、必要となった場合は次の予約の際に実施するようにしています。
下肢静脈瘤の日帰り手術について教えてください。
下肢静脈瘤は、脚の静脈がぼこぼことコブ状になる病気です。血液の逆流を防ぐ静脈弁が壊れ、本来心臓に戻っていくはずの血液が足にたまることで起こります。手術方法として、発症している静脈を抜き取るものもありますが、現在はレーザー治療がメインですね。静脈の中にレーザーファイバーを挿入し、血管内をレーザーで焼き血管内を閉塞させます。従来はレーザー治療であっても静脈瘤を完全になくすためにはメスを入れて血管を抜き取る必要がありましたが、近年ではメスを入れずにレーザーだけで治すための術式が研究されており、当院でもそれを取り入れています。下肢静脈瘤の術後は積極的に歩くことがお勧めですので、1時間ほど休んでいただいた後は歩いて帰ることができ、日帰り手術が向いている手術だといえます。
内視鏡検査についてはいかがでしょうか。
検査に使用する内視鏡は、新型のものを備えています。画質が良く、細かい血管や模様を見たり拡大観察したりできますので、病変の発見率向上につながっていますね。わかりやすく言うと、画像がとても明るいので治療が必要な病変かどうかの見分けがしやすいんです。当院では予約制をとっていますが、忙しい方の「どうしてもこの時間に受診したい」というニーズにできるだけ応えたいと思っています。土曜は夕方まで診療しており、内視鏡検査は日曜にもいくつか受付日を設けています。
「真心」と「醫心」で患者の不安に寄り添う
診療ではどのようなことを心がけていますか?
どんな検査や手術も患者さんは不安や緊張を抱えていらっしゃいます。その不安や疑問に僕一人で向き合うのではなく、看護師や受付のスタッフを含めた全員でチームとして寄り添い、サポートできる体制づくりを行っています。中には高齢なので年齢的に手術に耐えられるか心配という方もいらっしゃいますが、これまで下肢静脈瘤の日帰り手術を行ってきた中には90代の患者さんもおられます。術前検査をしっかり行い、体制を整えて臨みますので、不安な際にもまずご相談いただきたいですね。また、肛門科の受診に関しては恥ずかしいという方も多いと思います。当院では受付の問診で口に出さなくてもいいように、紙をお見せして受診理由を指さしていただく方法を取っています。診察の際もタオルでなるべく隠し、女性の患者さんの場合は、必ず女性のスタッフが立ち合います。
院内の設計にもこだわられたそうですね。
院内の配置のほとんどは僕が考えさせていただきました。機能面や動線を考慮したレイアウトは僕のこだわりです。このビルは中央の通路を挟んで左右にエリアが分かれているため、設計は結構悩みましたが、一番は、リカバリーが必要な麻酔を伴う治療と外来診察のエリアを分けたことです。検査となると検査着で薄着になるため、外来患者さんからの目線を気にせず移動いただけるほうが良いと考えました。ナースステーションを設け、リカバリー中に看護師が近くで様子をうかがえる動線にしているのもこだわりです。また、遠方にお住まいの方が家で下剤を飲んでから来院しなくて済むよう、トイレつきの個室を8室用意して、来院後にリラックスして下剤が飲めるようにしています。付き添いの方の同席も可能ですし、ご夫婦や親子で受ける方のために広い個室も用意しています。
読者へのメッセージをお願いします。
外科の医師、内視鏡の専門家として、日々進歩する医学に対応しながら「真心」と「醫心」という2つの心を持って患者さんに向き合っていきたいと思っています。「真心」は、思いやりを持って患者さんの不安に寄り添うということ。また、医療の心である「醫心」は僕の造語ですが、プロとして患者さんのために最善の医療を追求し、困っている方にどんどん手を差し伸べていくということです。この2つは廿日市市にいた頃から変わらず大切にしている、医療人として根底にある僕のポリシーです。不安な気持ちに思いやりを持って接し、誠実に対応することをスタッフ全員が常に心がけています。まずは内視鏡検査が必要なのか、検査は楽にできるのか、などの不安な気持ちを気軽に相談しに来ていただけたらと思います。