松村 勝 院長の独自取材記事
北九州まつむら日帰り外科クリニック
(北九州市小倉北区/片野駅)
最終更新日:2024/12/12
北九州モノレール片野駅から徒歩1分というアクセスの良い場所にある「北九州まつむら日帰り外科クリニック」は、鼠径ヘルニアと手掌多汗症の日帰り手術に特化したクリニックだ。松村勝院長はこれまでさまざまな病院やクリニックで鼠径ヘルニアの内視鏡手術を手がけてきたが、特に北九州市には「患者の負担が少ない“内視鏡を用いた日帰りでの手術”」を受けられる場所が少なく、患者が福岡市などまで出向いている現状を打破したいと考え、開業を決意。開業間もないながらも多くの患者が来院し、ニーズの高さを実感しているという。わかりやすい説明と穏やかな雰囲気が魅力的な松村院長に、内視鏡手術のメリットや各医療機関との連携、手掌多汗症に対する考え方など、さまざまな疑問について詳しく答えてもらった。
(取材日2024年10月23日)
北九州エリアの「日帰り手術」へのニーズに応えたい
貴院は鼠径ヘルニアと手掌多汗症の日帰り手術に特化しているそうですね。
勤務医時代は消化器外科医として、胃がん、大腸がん、胆嚢結石症、鼠径ヘルニアなどの手術も数多く担当してきました。特に鼠径ヘルニアは外科手術が必要で、とある病院で腹腔鏡手術による鼠径ヘルニアの治療を経験しました。それまでの手術では脚の付け根の部分を、短くても5cm以上は切る必要がありましたが、腹腔鏡手術だとおへそに1cm、他に5mmの傷を2ヵ所切るだけなので、脚の付け根からの手術よりもかなり患者さんの社会復帰が早くなることが望めます。北九州市の病院でも鼠径ヘルニアの専門の外来を立ち上げましたが、なかなか周知されませんでした。一方、福岡市内の鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っているクリニックに勤務したこともありますが、北九州市から来院される方もおられ、患者さんの強いニーズを感じたことが、開業の決め手の一つになりました。
内視鏡手術のメリットは、患者さんの負担の少なさなのですね。
前述したように傷口がかなり小さくなりますから、社会復帰の早さにつながる点が大きなメリットですね。また手術としても、おなかの中から病変を精密に観察し、適切に治療をすることができる点が大きな魅力だと考えます。病院の外来での治療が浸透しなかった理由の一つに、どうしても入院が必要である点があるとも感じていました。福岡市内の日帰り手術のクリニックでは、皆さん必ず、当日自宅、もしくはホテルなどにお帰りいただいていました。その日帰り手術の便利さ、そして内視鏡手術による侵襲の少なさを北九州市の皆さんにもお届けし、地域に貢献したいと考えています。
開業してまだ半月ほどですが、患者さんの反応はいかがでしょうか。
ありがたいことに、多くの患者さんに来ていただいています。ほぼ手術を受けることを決めた状態で来院される方がほとんどで、その場合、当院で行うのは手術の詳しい説明と日程調整となるので、やはり「日帰り手術」という点にニーズがあるのではないかとこの短期間でも実感しています。また当院では土曜に加え、第1、3、5日曜と祝日も診療・手術に対応しています。日帰り手術とはいえ翌日には傷口の確認もありますから、余裕をもって手術を受けたいという方にも喜ばれているようで、私としてもとてもうれしいですね。逆に入院を希望される方などの場合は連携先の総合病院に出向いて、私が執刀するという連携体制も確立しています。
病診連携なども行い、日帰り手術に対する不安を払拭
病院との連携など、フォロー体制について詳しく教えてください。
鼠径ヘルニア、手掌多汗症いずれも基本的に朝8時半に受付し、手術と術後のリカバリーを経て、午後には帰宅するという流れです。ただ、手術当日に自宅に戻るのは不安だという方もおられますよね。当院は小倉駅からつながっている北九州モノレール片野駅から徒歩1分、小倉駅からタクシーを選んでも約10分ほどとアクセスが良いので、小倉駅周辺のホテルを取るのもお勧めです。また近隣の療養型の病院と連携して、1泊もしくは2泊の宿泊ができるようお約束いただいています。術後の痛みが気になる、自宅まで片道1時間ほどかかるので移動が不安だという方は宿泊のフォローも行っていますので、遠慮なくご相談いただければと思います。
鼠径ヘルニアと手掌多汗症、それぞれどんな症状があると相談すると良いのでしょうか?
一番は脚の付け根の膨らみ、次に違和感、そして痛みです。鼠径ヘルニアの発症の9割は男性で、発症年齢のピークが60代ということもあり、加齢によって筋肉が衰え、腹圧に耐えきれなくなった腸や内臓脂肪が出てきてしまう病気です。放っておくとだんだん出てきた部分が大きくなり、ひどくなると腸閉塞になってしまうこともあるため注意が必要です。手掌多汗症の場合は、お悩みであるなら遠慮なくご相談いただきたいですね。日常生活に大きく影響を及ぼすことも多く、思春期の学生さんや20代の若い方にとっては定期試験や受験、就職活動に影響することも。受験前の高校生から相談を受けることもあります。体質だと思われることも多いのですが、れっきとした病気であり、治療法があります。まずはその点を患者さんにも知っていただきたいと考えています。
手掌多汗症の場合、さまざまな治療法があるようですね。
塗り薬などもありますが、内視鏡を使った手掌多汗症の手術(ETS・胸腔鏡下交感神経遮断術)では、脇の下2ヵ所、それぞれを3mmだけを切開し、手掌多汗症の原因となっている交感神経節の切断を図ります。なので一回の手術で長期的な効果が期待できます。また保険診療ですから、北九州市であれば中学生から18歳までならば月の金額の上限もありますし、それ以上の年齢であっても高額療養費制度が適用されますから、かなり費用に配慮されています。
手汗の多さは体質ではなく病気。だから治療法がある
手掌多汗症は病気であると知ることが大事なのですね。
皮膚科、精神科などに次々に相談されるほど困っておられる方もおられますが、まずは体質ではなく病気であり、病気であるからこそ外科的な治療法があるのだということを知ることが大事ですし、そう思えばきっと未来も開けてくるのではないでしょうか。当院では手掌多汗症後の代償性発汗を少しでも抑えるため、過去のさまざまなエビデンスに基づき、基本的には利き手側のみ、かつ手汗を止めることに効果が期待できる第4交感神経節切除を行います。利き手の手汗が減ることが望めるだけでも、生活はガラッと変わると思いますので、ぜひご相談ください。
お話を伺っていて感じるのですが、先生の説明はとてもわかりやすいですね。
ありがとうございます。患者さんとお話しする際には極力オープンクエスチョンにするように心がけています。オープンクエスチョンとはイエス・ノーで答える質問にするのではなく、患者さんが自由に返答できるような質問を投げかけることです。やっぱり患者さんが抱えておられるお悩みや不安をしっかりとお聞きするためにはこういった自由な会話が大切なのではと考えています。また基本的なことではありますが、パソコンやモニターばかりを見るのではなく、患者さんの目を見てお話しすることも大切にしています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
鼠径ヘルニアは他人に相談しづらい部分もあるかと思いますが、そうしているうちに大きくなり、日常生活に支障が出ることも。何かおかしいな、気になるなということがあればお気軽にご相談ください。もし鼠径ヘルニアではないとわかったとしても、その先の医療機関へとしっかりとおつなぎします。また鼠径ヘルニアや手掌多汗症以外の、例えばイボや粉瘤などの切除にも対応しています。症状の大小にかかわらず、お困りのことがあれば何でも相談してください。そうして患者さんのお悩みを取り除き、笑顔になって帰っていただける、そんなクリニックにしていきたいですね。