日常生活に支障を来す強迫性障害
早めの受診で改善をめざす
横浜ゆりまりメンタルクリニック
(横浜市都筑区/センター南駅)
最終更新日:2025/04/15


- 保険診療
欧米では、全人口の1~2%が強迫性障害を発症しているといわれる。日本でも同程度と考えられており、手の汚れが気になるといった強迫観念と、手を何度も洗ってしまうなどの強迫行為に悩まされている人は多い。「横浜ゆりまりメンタルクリニック」の内田信也院長は、幅広い医療現場で心の悩みを抱えるさまざまな世代の患者と接してきただけでなく、一般企業や政治の世界でも働いていたという経歴の持ち主だ。だからこそ、あらゆる世代のメンタルの不調に敏感で、「強迫性障害を放置すると症状が悪化したり、うつ病などほかの精神疾患を発症したりする場合もあるため、無理をせず早めに精神科を受診してください」と語る。そんな内田院長に、強迫性障害の症状や治療法などについて聞いた。
(取材日2025年4月4日)
目次
強迫性障害は、患者一人ひとりに合わせたカウンセリングや投薬が大切。一人で抱え込まずに、まずは受診を
- Q強迫性障害とはどのような疾患ですか?
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A
▲事前にウェブ問診にて、医師に病状を伝えておく
強迫性障害とは、「自分の手が汚い」「家族が命を落としてしまう」といった「強迫観念」、つまり自分の意思に反して頭に浮かんでくる考えやイメージと、それを打ち消すため「鍵やガス栓を繰り返しチェックする」「手を繰り返し洗う」などの行為をくり返す「強迫行為」を特徴とした精神疾患です。自分でも取るに足りないことだと理解しているのに、それが頭の中から消えない、理解はしているけれど何回もチェックしてしまう、など普段の生活に影響が出てしまいます。環境要因、器質要因、遺伝要因、生理学的要因により強迫性障害が発症しやすくなるといわれていますが、はっきりした原因は現在でも特定されていません。
- Q「強迫観念」と「強迫行為」について詳しく教えてください。
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A
▲待合室。コンセントがある座席を設置
強迫観念と強迫行為は、次のように連動します。「手の汚れが気になることから、手を何度も洗う、もしくは触ることができなくなる」「被害を加えたのではないかと心配になり、何度もニュースをチェックする」「自分で決めた順番で物事を実行しなければ不吉なことが発生すると心配になり、いつでも同じやり方で家事や仕事を行うようになる」「数字へのこだわりが強くなり、幸運な数字や不吉な数字に験を担ぐ程度では収まらないこだわりを持つようになる」「家電のスイッチや戸締まりなどが気になり、何回も確認したり、家に戻ったりする」「物の配置にこだわりが生じ、常にそのとおりにしなければ気が済まない」などが特徴的な例となります。
- Q日常生活にはどのような支障がありますか?
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A
▲疾患についてわかりやすい説明を心がけている
強迫性障害は、手洗いや戸締まりのチェックなど、日々の暮らしの中で通常行うこととつながりがあるため、日常生活に深刻な影響を及ぼします。例えば、手洗いや確認行為に多くの時間を費やすことで、仕事や学校に遅刻するなど、社会的な活動が制限されることがあります。また、家族や友人との関係にも悪影響を及ぼすため、孤立感を感じたり、行動範囲が制限され家の中に引きこもってしまったりすることもあります。強迫性障害を放置すると症状が悪化し、うつ病、全般性不安障害、パニック障害、摂食障害などほかの精神疾患を発症する場合もあります。早めに治療を始めれば早期の回復も期待できるといわれていますので、精神科にご相談ください。
- Q治療法について教えてください。
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A
▲優しい藤色の看板が目印
強迫性障害の治療には、主に認知行動療法(CBT)と薬物療法が用いられます。認知行動療法では、曝露反応妨害法(ERP)を通じて不安に立ち向かい、強迫行為を減らすことをめざします。普段の生活に影響を及ぼさないよう、強迫性障害を引き起こしている思考法を徐々に変えるトレーニングを行うのです。薬物療法では、心のバランスを調整するために抗うつ薬のSSRIを使用します。患者さんによって適正な薬の量が異なるため、一人ひとりの状態を確認しつつ、薬の量を調整します。まずは低用量から開始して、薬との相性を確認しながら量を増やしていくのが一般的な方法です。
- Qこちらで行っている治療の特徴について教えてください。
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A
▲しっかりと話し合いながら、その人に合った治療法を提案する
当院では、患者さんの状態に合わせた個別の治療を提供しています。医師の診療だけではなく、患者さんの希望や状態に合わせて、心理士による心理検査やカウンセリングを行い、病態を理解しながら治療を進めます。日々の診療においては、患者さんのお話をよく聞き、行うべき検査や処方内容などについて相談しながら治療を進めていきます。薬についても、患者さんの体への影響も考え、一人ひとりに合ったものを提案します。薬を処方する際は、診察に加えて血液検査や心電図検査を行うこともあります。