てんかん治療に安心感を
患者と家族に寄り添った専門的診療
上本町ふるえと頭痛 ・脳神経クリニック
(大阪市天王寺区/大阪上本町駅)
最終更新日:2025/05/15


- 保険診療
「てんかん」に対して、正しい知識を持っている人はごく限られているのが現状だろう。特徴的な発作を連想しがちだが、「上本町ふるえと頭痛・脳神経クリニック」の星田徹先生によると、明らかな発作を伴わない場合も多いそうだ。また、周囲の理解不足から、患者や家族がつらい思いを経験したり、不利益を被ったりすることもあるそうで、病気に対する社会の認知度の向上、環境の整備の必要性を、星田先生は強く訴える。同院では、てんかんの専門知識を持ち、長年にわたりてんかん診療に携わってきた星田先生を中心に、患者と家族に寄り添った診療を提供している。伴走型の同院のてんかん診療の特色やてんかん診療の抱える課題などについて、星田先生に聞いた。
(取材日2025年4月9日)
目次
患者・家族の思いやさまざまな条件を踏まえて患者とともにてんかん治療を実践する
- Qてんかん治療に注力している理由を教えてください。
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A
▲てんかんのさまざまな症状について説明している星田先生
てんかんが正しく理解されておらず、適切な対応が取られていないことが多いからです。てんかんというと、急に震えやひきつけ、意識がなくなるなどの発作を起こすというイメージが強いと思います。そのイメージは間違ってはいません。しかし、意識を失うことがなく、変な気持ちがする、今までに見たことのないものが見える、聞いたことない音が聞こえるといった症状が突然起こり、急激に治まるといったタイプもあります。それまで普通に読めていた字が読めない、平仮名が書けない、通常の会話をしたのにその時の会話の記憶がないといったケースもあります。こうした場合、一般的な病気のイメージと違うことから、てんかんだとは気づきません。
- Q他の病気と勘違いしてしまいそうですね。
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A
▲てんかんとともに他の疾患を合併しているケースもある
そうですね。てんかんの発作は、その方の癖や認知症と勘違いされがちで、実際にてんかんと認知症を合併している方も多くおられます。また、脳卒中の治療を終えた後に、てんかんにより震えなど脳卒中を思わせる症状が出ることがあります。この場合、てんかんではなく、再び脳卒中が起こったと考えるのも、無理ありません。さらに、頭痛、片頭痛との関わりも指摘され、さまざまな疾患との関わりを意識した診療が必要です。以前に比べると、状況は改善されてきましたが、このような場合にはてんかんと診断されないことも多く、治療の開始がどうしても遅れがちになるだけでなく、てんかんではないのに、てんかんと診断されるケースもあるのです。
- Qこちらの診療の特徴を教えてください。
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A
▲詳細な問診に加え、ビデオモニタリングも紹介している同院
初めに問診を行い、服用中のお薬やその作用についてお話をお伺いします。症状の把握には、患者さんの負担が少ない脳波検査を定期的に実施するほか、必要に応じてCTやMRIなどの画像診断を用いて脳の状態を確認します。てんかんの診断精度を高めるために、設備の整った入院施設のある病院で長時間脳波ビデオモニタリングを取り入れているのも特徴です。脳波の計測と同時にビデオで患者さんの様子を記録し、脳波と発作を思わせる動作や症状との関連性を確認できる検査です。当院では奈良医療センターと連携し検査を実施しています。当院ではてんかん診療だけでなく、本態性振戦など“震え”の症状に対しても専門的な診療を提供しています。
- Q診断後の対応についても教えてください。
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A
▲問診と精密な検査をもとに、適した薬を選択している
診断が確定すると、次にすべきは適した薬の選択です。かつては、処方できる薬がかなり制限されていましたが、近年は、使用できる薬が増え、検査の結果を踏まえて患者さんに合ったものを処方できます。新しいお薬は、著しい効果が見込めるわけではありませんが、てんかんの場合は長期間にわたり服用することが多いため、副作用が少なく、継続して処方しやすい点は利点です。患者さんには定期通院していただき、飲み始めの時期は、1週間ごとに薬の作用を見つつ血液検査を行うなどして副作用がないかをしっかり確認します。当院には脳外科専門の医師が在籍しており、てんかんの原因が明確になっている方の場合は、外科的治療も検討できます。
- Q診療以外でのサポートも必要ですね。
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A
▲患者一人ひとりに寄り添ったサポートの実施が重要となる
てんかんの患者さんには、抑うつ症状、気分障害などを抱えておられる方、知的障害、身体障害がある方もおられます。そうした問題のない方でも、社会の病気に対する理解が不足しており、職場で発作を起こすと、その後の就労が難しくなるケースも現実にあります。ある程度の年齢に達すると身体的な問題を抱える方も増え、8050問題への対応も急務です。こうした状況が正しく理解されておらず、支援のための社会制度がほとんどなかった時代から、当事者のご家族が力を合わせて施設の立ち上げなどに取り組んできた経緯があります。状況は少しずつ改善してきましたが、今後、社会の理解がさらに深まることを期待します。