神経発達症は個性の一つ?
保護者として知っておきたい基本とは
ひだまりこども診療所
(堺市中区/白鷺駅)
最終更新日:2024/07/12
- 保険診療
自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症、限局性学習症など、何かと話題に上ることが多い子どもの神経発達症。「うちの子もそうではないか?」と心配している親は決して少なくないだろう。こうした神経発達症に真正面から向き合うべく、自身のクリニックをスタートしたのが「ひだまりこども診療所」の藤田賢司院長。小児神経の専門家としての豊富な知識と経験を生かしつつ、苦しさを抱えている親子のための地域連携の実現にも情熱を燃やしている。神経発達症とはそもそも何か、どのような方法で乗り越えていけばいいのか、そのヒントとなるベーシックな知識を藤田院長にじっくりと解説してもらった。
(取材日2024年6月17日)
目次
生まれ持った性格を、いかに状況に応じてコントロールできるかが最大のテーマ
- Q子どもの神経発達症とはどのようなものでしょうか?
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A
子どもの神経発達症には大きく3つあり、対人関係が苦手な自閉スペクトラム症(ASD)、うっかりミスが多く落ち着きのない注意欠如・多動症(ADHD)、読み書きや算数などに限って不得意さが目立つ限局性学習症(SLD)が代表例です。はっきりした原因は解明されていません。生まれつきの脳の機能障害といわれていますが、運動のできる子や苦手な子、引っ込み思案の子、積極的な子などと同じで、コミュニケーションの苦手な子、落ち着きのない子など、その子の個性でもあり、それが強く出ていても社会にうまく適合できれば病気として悩む必要はありません。ただ、本人や家族が苦しいようであれば、何らかの手助けが必要と考えられます。
- Qどのような症状が見られれば受診すべきでしょうか?
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A
園や学校でのトラブルが多い、落ち着きがなく授業などで座っていられないなど、神経発達症ではないかと悩んでいるような状況であれば、一度受診して相談してみても良いかもしれません。成長するにつれて、日常生活を大きなトラブルなく過ごせるのであれば、無理に診断をつける必要はなく、手助けが必要な場合に病気として診断をするでよいと思います。ただ大きくなってから困り事が増えてくるケースもあり家庭や学校でどのような行動を取っていて、トラブルが増えていないか、何か悩んでいることはないかなど普段から少し気にかけてあげるのもよいと思います。
- Q実際の診察の流れについて教えてください。
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A
問診を行い、生活状況を確認するため園や学校の先生へ記入式の聞き取りを行います。また必要であれば検査を行います。お話を伺っているときにスタッフに遊んでもらうことが多く、そのときの様子も参考にしています。家庭や学校、園、病院の様子を総合的にみて判断しています。ニーズも多いので最近は堺市の初診前アセスメント(客観的評価)といった問診や検査を受診前に行える公的な医療支援を活用し、より早く判断して支援を受けられるようにと考えています。堺市でもできたばかりの制度ですが、全国に広がると神経発達症の診療を行える施設が増え、受診するまでに半年待ちや一年待ちといった状況が改善するのではないかと期待しています。
- Qどのような方法で問題を解決していくのでしょうか?
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A
薬物療法もありますが、あくまで症状を軽減し生活しやすくすることを期待して使用しています。薬でその子の特性を変えることはできないので、大きな3本柱としては環境調節とソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニングです。生まれ持った性格と向き合いながら、困り事なく生活していけるか、一緒に考えることが大事です。忘れ物の多い子が、自分なりに考えてお友達に嫌がられないように忘れた物を借りるコミュニケーション術を身につけて、うまく乗り切るなども立派な対処法の一つです。また怒られることで、自信をなくしている子が多いので、得意なことで成功体験を重ねて自信をつけてあげることも一つ大きな鍵になると思います。
- Q小児神経を専門とする医師を受診するメリットを教えてください。
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A
神経発達症の中にはほかの病気が隠れていることがあり、神経疾患も多く含まれます。こうした病気をスクリーニングできる点でも、小児神経に詳しい医師にかかることは安心材料の一つといえると思います。神経系の疾患は難病も多いですが、医学・医療の世界はどんどん進化しています。原因がわかっていれば将来的に改善できる可能性も期待できるので、心配でしたら一度ご相談ください。日本小児科学会小児科専門医・日本小児神経学会小児神経専門医としてよりよく過ごせるようにお手伝いをしていきたいと考えています。