土屋 博基 院長の独自取材記事
横濱元町メンタルクリニック
(横浜市中区/元町・中華街駅)
最終更新日:2026/08/31
元町・中華街駅に近い「横濱元町メンタルクリニック」の土屋博基院長は、30歳で医学部に入学し、卒業後は自分の社会経験を患者のために生かしたいと考え、精神科医になった。「以前に比べるとメンタルクリニックを受診する心理的なハードルは下がっていますが、私はヘルスケアの一つとして当たり前にメンタルに関する相談をしていただきたいと思い、『心のかかりつけ医』をめざして診療しています」と語る。さまざまな年代の患者が訪れる同院では、働き盛りの世代のメンタルケア、適応障害で勉強や仕事に支障が出ているケースなどの対応にも力を入れる。「心身の不調が続くようなら『自分ファースト』で早めの受診を」と促す土屋院長に、同院の診療方針や特色について聞いた。
(取材日2026年7月29日)
気軽に受診できる「心のかかりつけ医」に
メンタルクリニックへの通院に、心理的なハードルを感じる人もいらっしゃると思います。

人が豊かに生きる上で、一番大事にしたいことは何でしょうか。お金、知識、愛、健康など、人により思い浮かぶものはさまざまでしょうが、私は「心身がともに」健康であることも大事だと思っています。体の病気であれば、ちょっとした症状であっても、近くのクリニックで診察を受けることは当たり前になっていますよね。けれどもメンタルについては、「自分の心が弱いのがいけないのではないか」とご自身を責めてしまって、メンタルクリニックの受診を決めかねる人も多いでしょう。私はそのハードルを下げて、ヘルスケアの一つとして当たり前に受診できるようにしていきたいのです。その意味で、皆さんにとっての「心のかかりつけ医」をめざしたいと考えています。
もっと早く受診してもらえれば、と感じるケースもありましたか?
これまで勤務した病院では、患者さんが受診されるまでに時間がかかってしまい、かなり悪くなった状態から治療を始めなくていけないケースを多く診てきました。受診が遅くなると治療に要する時間も長くなる傾向にあり、治療の経過も大きく変わってきます。ですから、悪くなってから来院するのではなく、予防的な感覚で受診していただくのがいいと思います。診察してもらわなければ、と構えるのではなく、ちょっとつらいから相談しに来てみたとか、あるいは試しにクリニックを見に来たくらいの気持ちでも結構です。そうやって気軽に受診してみて、何も問題がなければ良かったと安心できます。悪いところを見つけるばかりではなく、今はそのままで大丈夫ですよと専門の医師に言ってもらうだけで、ご本人の活力につながることもあるでしょう。
どのようなときに受診すべきでしょうか?

一人ひとり個性が異なるように、症状もつらさの感覚もそれぞれ異なります。一般的には、うつ状態になる前の症状として、食欲がなくなる、眠れなくなるといった例が挙げられますが、人によってどのような不調が生じるのかは本当にまちまちで、特に精神科の場合、疾患の境界もとても曖昧です。ですから、列挙した症状に当てはまるかどうかより、ご本人の感覚として何かつらさを感じていたり、このままではまずいなと感じたりすることがあれば、一度受診してみてほしいんです。実際に、食欲がなくなったり眠れなくなったりしてからでは遅いかもしれませんし、その一歩手前の、なんとなくの感覚で構いません。当クリニックとしては、そのために門戸をしっかり広げておきます。また近年は「自分や家族のためにも相談しよう」と受診される方も増え、社会的にも早めにメンタルの相談に行く大切さが次第に浸透していると感じています。
各年代の発達の問題や適応障害などにも対応
現在はどのような患者さんが来られていますか。

近くの本牧地区から横須賀、鶴見、大和、海老名、鎌倉、藤沢などの遠方まで、さまざまなエリアから来院されています。私が児童精神科も専門にしていることから、お子さんから大人までの発達のご相談も多くなりました。親御さん同士のクチコミの他、地域の小児科や精神科の先生、学校のカウンセラーから、「発達のことなら」と当院をご紹介いただくこともあるようです。また仕事や人間関係をはじめとした日常生活のストレスが原因となって、気分の落ち込みや不安、頭痛、不眠など、多様な症状が起きる適応障害でお悩みの方も受診されています。仕事や勉強などに支障を来しやすく、学校や会社をしばらく休むことが必要なケースもあり、当院ではそうした休職からの復帰支援のお手伝いもしたいと考えています。
適応障害かもしれない方に注意してほしいことは何でしょうか。
まず「仕事を辞めるなどの重要な判断を急がないでください」とお伝えしたいです。仕事を続けるのが難しいと感じるなら、一時休職して様子を見ることもできますし、当院のようなメンタルクリニックにご相談いただければ、さまざまな対処が考えられます。例えば、お困りの症状や原因ときっかけとなった出来事を丁寧に伺って、薬物療法や認知行動療法などでご本人の気持ちの安定を図る他、必要ならお勤め先の担当者と連絡をとり、職場の環境調整ができないか確認することも考えられます。また復職をめざされる場合も、元の職場に戻るか新たな職場を探すかなどを一緒に検討し、復職支援のプログラムのご紹介も可能です。
診察にあたって、先生が大切にしていることを教えてください。

医師は患者さんとともに目標をめざして進む伴走者ですから、お一人お一人との関係性の形成が大切と考えています。メンタルクリニックは、患者さんの人生の一部を抱えるようなところがあり、ある程度の関係性が深まらないと、症状の原因や回復への道筋を一緒に見いだすことは難しいと思うからです。そのために患者さんが診療室に入られたときの表情や姿勢にも目を配り、こちらからの質問ばかりではなく、ご本人からの話を丁寧に伺うようにしています。診療室には椅子を2脚用意して、お子さんなら保護者、大人でも同伴者がいらっしゃる場合は、患者さんが嫌でなければなるべく同席をお願いして、それぞれの立場からの話を全員で共有して考えていくことも重視しています。また調子がいい時も含めて定期的に受診していただければ、悪くなった時との違いもわかり、より関係性が深まることが期待できると考えています。
不調が続くなら「自分ファースト」で早めに受診を
先生はどうして精神科の医師をめざされたのですか?

私は紆余曲折を経て、30歳で大学の医学部に入学しました。医学部を卒業後に専門分野を精神科に決めたのは、それまでの自分の社会経験が患者さんの役に立つのではと考えたことと、学問的にも興味があったためです。私が医師として未熟だった頃、患者さんと良好な関係を保てたことで、主治医になってほしいと言っていただき、今でもその言葉を大切にしながら精神科の診療にあたっています。精神科の医師は、患者さんが山登りするときの山岳ガイドのような役割だと思うんです。山頂までの登り方は患者さんの体力や歩き方などで変わりますし、ガイドによっても案内する道は違うことがよくあります。そうした多様な治療法がある中で、患者さんの満足度に結びつくのは、医師と患者さんとの関係性の深さではないかと考えています。
院内の雰囲気などはどう感じていらっしゃいますか。
なるべく受診していただきやすいように、院内がやわらかな雰囲気になるよう照明や配色を工夫しています。来院された患者さんには、最初にスタッフが温かく丁寧に接してくれるのでリラックスしていただけているようで、私の診療時に緊張している方はあまり見かけません。プライバシーに配慮して名前でなく受付番号でお呼びしますし、目の前の空間が広いと落ち着かない方などのことも考え、ソファー以外にも壁向きに1人掛けの椅子をいくつか用意しています。ただ、最近は予約をいただいても待合室でお待たせすることが多くなり、患者さんには大変申し訳なく感じています。最初にお待たせしたことをお詫びして診療を始めていますが、私1人で患者さんを診るため、今後も待ち時間は発生するかもしれません。その点は何とぞご了承ください。
今後の展望や患者さんへのメッセージをお願いします。

お子さんからご高齢の方までトータルで診ることができる、皆さんの「心のかかりつけ医」になれたらと思います。そして細く長く、地域医療に貢献することが目標です。以前に比べればメンタルクリニックを受診することへの心理的なハードルは下がってきたと思います。心身の不調が続くようなら、周囲のことより「自分ファースト」で早く受診していただければと思います。

