糖尿病は何科を受診?
狭心症などを防ぐためにも循環器の専門家へ
田中内科ハートフルクリニック
(西宮市/西宮駅)
最終更新日:2025/07/07


- 保険診療
狭心症や心筋梗塞などの心疾患の原因としてよく知られているのが、高血圧症や脂質異常症だ。ただ、「実は糖尿病のほうがはるかに心疾患のリスクが高い上、狭心症や心筋梗塞の治療をしても糖尿病患者さんのほうが再発しやすいことはあまり知られていません」と話すのは、「田中内科ハートフルクリニック」の院長で、日本循環器学会循環器専門医の田中伸明先生だ。心疾患になる糖尿病患者を減らしたいとの思いで、ごく初期の患者にも周知し治療のハードルを下げるよう努めている。糖尿病は何科を受診すべきか迷う人に「ぜひ循環器専門医を頼ってほしい」と語る田中院長に、糖尿病と心疾患の関連性や同院の治療方針などについて解説してもらった。
(取材日2024年5月29日/情報更新日2025年6月13日)
目次
心疾患の大きな原因とされる糖尿病。循環器内科であれば、狭心症や心筋梗塞の予防を見据えた治療が可能に
- Q生活習慣病の中でも糖尿病治療に注力されているそうですね。
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A
▲心疾患の予備軍患者を減らすためにも、糖尿病治療にも注力
生活習慣病は狭心症や心筋梗塞の原因になります。特に糖尿病は、高血圧症や高脂血症と比べて心疾患の罹患率が高い傾向です。勤務医時代にカテーテル治療に携わっていたのですが、糖尿病の血糖コントロールが悪い方ほど心疾患の再発率も高い傾向でした。これは、糖尿病で血管が弱くなると、狭心症や心筋梗塞を繰り返しやすくなるからなんです。このことは多くのエビデンス(根拠)があり、血管を守るために糖尿病患者さんのLDLコレステロールの目標値も厳しく設定されているのが現状です。一方で血糖コントロールができれば、血管に与える影響が弱まり再発率の低減も期待できます。つまり心疾患と糖尿病はセットで診ることが大切です。
- Qこちらで行っている糖尿病治療の特徴を教えてください。
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A
▲血圧や血糖値の計測を行い、運動や生活習慣を見直すことが大切
狭心症や心筋梗塞をはじめ、さまざまな合併症を起こさないよう臓器を守ることが糖尿病治療の目的です。だからこそ当院では薬を選ぶ際に、血糖コントロールに加えて、血管や腎臓などの臓器の保護まで視野に入れて考えます。加えて、糖尿病治療で大切なことは「継続」です。そこで、ご自宅での血糖値の計測方法や運動療法も、日常生活の中で続けていけるよう説明を工夫しています。例えば、「運動しましょう」と言われた場合、「どんな運動がいいのか」「良くなっていくのか」と悩む方もいます。当院では数値を確認しながら具体的な運動の仕方をご提案し、定期的に数値の変化をお伝えすることで前向きに取り組んでいただけるよう努めています。
- Q糖尿病と関連の深い睡眠時無呼吸症候群の治療も行っていますね。
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A
▲生活習慣病の40歳以上の男性には睡眠中の無呼吸検査を勧める
はい。睡眠時無呼吸症候群の背景にあるのが、糖尿病や高血圧症、メタボリックシンドロームなどです。これらの病気は心疾患のリスクも高いため、特に男性は40歳を過ぎたら一度検査を受けると安心でしょう。高血圧症で血圧コントロールがうまくいかない方も、就寝中の無呼吸が関連しているかもしれません。当院では睡眠時無呼吸症候群の治療として、就寝中の気道を広げるCPAP療法を行っています。長く続く治療ではありますが、まずは治療を受けること自体が前進ですし、たとえ途中でやめてもその経験は次につながります。困難な道ではありますが、治療の卒業をめざして全力でサポートしますので、ぜひ一緒に踏み出していただきたいですね。
- Qなぜ糖尿病を含む生活習慣病の治療に注力されているのですか?
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A
▲気になる生活習慣病の相談も気軽に行える
先ほどふれたように、これまでカテーテル治療を専門にしていたため、患者さんが生活習慣病を治療しているかどうかが、狭心症や心筋梗塞の発症に大きく影響することを実感してきました。私が開業した理由も、心疾患の原因となる根本部分から患者さんとしっかり向き合って予防につなげたいという思いが大きいです。糖尿病や高血圧症、脂質異常症に加え、痛風、メタボリックシンドロームなども心疾患を引き起こす原因となります。これらの病気の方は心疾患の予備軍ともいえるため、まずは健康診断を受けて、循環器の医師とともにご自身の健康を継続的に考えていただきたいですね。健康診断は当院でも受けられるのでお気軽にご相談ください。
- Q生活習慣病の治療を行う際に心がけていることは何でしょうか?
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A
▲患者一人ひとりに合った治療を選択することが大事だと語る院長
患者さんの意思を尊重しながら、医師として医学的に正しい情報を提供し、その方に合った適切な治療を提案することです。患者さんが合わないと思われるような治療法を無理にお勧めするようなことはありません。それでも心疾患や生活習慣病の治療に長く携わってきて感じるのが、どうしても患者さんは治療に及び腰になりやすいということです。ただ、そのお気持ちは十分わかります。私自身、服薬は苦手なほうですからね。一方でエビデンスのある治療を受けないのはまるで食わず嫌いのようで、循環器専門医としては非常にもったいないと思うのです。だからこそ、患者さんが治療にチャレンジするお気持ちにしっかり寄り添うことを大事にしています。