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勢納 八郎 院長の独自取材記事

城西名原訪問クリニック

(名古屋市中村区/黄金駅)

最終更新日:2025/04/07

勢納八郎院長 城西名原訪問クリニック main

住宅街に溶け込むように立つ「城西名原訪問クリニック」は2024年4月開院。院長の勢納八郎先生は、透析治療を専門に経験を積み、城西病院など複数の病院で院長を勤めた。在宅医療の経験は20年以上。現在は、在宅訪問診療と緊急往診に対応している。時代とともに変化するニーズを捉え、現在は孤立状態の高齢者を中心に、幅広い症状の訪問診療を行っている。「患者さんが希望する人生の締めくくりをかなえるため、責任を持って診療したい」と穏やかな口調で話す勢納院長。訪問診療や地域への想い、日本における在宅医療の現状まで話を聞いた。

(取材日2025年2月17日)

地域とつながる「ご近所力」で孤立した高齢者を支える

まずは、ご経歴と開業された経緯を教えてください。

勢納八郎院長 城西名原訪問クリニック1

勤務医時代は透析治療を専門に診療し、複数の病院に勤務しました。訪問診療に携わるようになったのは、1997年頃からです。勤務先で訪問診療の部門が立ち上がった際、自宅で透析治療を受ける患者さんや、リウマチの合併症で頸椎が変形し、通院が困難な方の訪問診療を担当しました。当時の訪問診療は若年の末期がんの患者さんのニーズが高く、自宅での治療や緩和ケアから看取りまでを行うことを「在宅医療」と呼んでいました。現在はニーズが変わり、通院が困難になった高齢者の診療が中心になっています。「自宅で最期を迎えたい」という望みをかなえることも、訪問診療を行う医師の役割だと考えています。病院に勤務しながら訪問診療を続けることもできますが、大きな組織の中よりも個人で行動したほうが在宅医療のニーズに応えやすくなるだろうと思い、2024年4月に訪問診療を中心に行うクリニックを開業しました。

訪問診療ではどのような患者さんを診ているのでしょうか? 

基本的には、相談があれば症状を問わず対応しています。緊急時に駆けつける往診にも対応可能です。私が特に手を差し伸べたいのが、社会の中で孤立無援になっている人、いわゆる「引きこもり」の状態になっている人です。病気や加齢により外出や通院ができなくなった人、人と会う機会が減り地域や社会とのつながりが希薄になっている人が増えています。ソーシャルワーカーや介護福祉士などが生活に介入していれば、急変しても医療機関に搬送される可能性があります。しかし、孤立状態の人は、そのまま1人で最期を迎えることになりかねないのです。「介護認定が下りず、公的な介護サービスが受けられない」「生活が困窮しているが、金銭的なサポートを受けられない」など、医療や福祉、生活の支援が受けられない人々が多数います。そのような人々の主治医になり、希望に沿いながら診療するのが私の仕事だと考えています。

訪問診療をするにあたり、地域とのつながりも大切にしているそうですね。

勢納八郎院長 城西名原訪問クリニック2

はい。高齢者の生活や健康を守るため、地域包括ケアシステムを構築することが求められています。地域包括ケアシステムとは、医療や介護、福祉などの各分野が連携し、適切に高齢者をサポートする体制のことです。私はこれを「ご近所力」と呼んでいます。医師として町内会や民生委員の集会などに参加し、地域とのつながりを強めています。訪問診療をしている患者さんのことで民生委員に相談することもありますし、地域の情報を得ることで必要な医療のニーズを知ることもできます。お節介だと思われているかもしれませんが(笑)。病院やクリニックは、病気の予防と治療だけを担うわけではありません。「このクリニックがあって良かった」「安心して暮らせる」と思っていただくことが、地域貢献につながると感じています。

訪問診療で患者が望む「人生の締めくくり」をかなえる

患者さんとコミュニケーションを取る上で、大切にしていることを教えてください。

勢納八郎院長 城西名原訪問クリニック3

コーチングを活用し、患者さんの本音を引き出すこと、自主性を引き出すことを重視しています。コーチングでは、「聞く」「質問する」「伝える」スキルが必要です。例えば、「そう思わないですか?」などの否定型の質問は、とがめているような印象を与えます。私は「そのためには何が必要だと思いますか?」「それについて気になることはありますか?」と質問します。患者さんは私との会話を通じて、これまで気づいていなかった本当の気持ちに気づけることもあるのです。例えば最初は「自宅で最期を迎えたい」と訴えていた患者さんが、治療や会話を繰り返す中で、「やっぱり入院したい」と考えが変わることもあるでしょう。要望の変化にも対応し、患者さんが望む人生の締めくくりをかなえたい……。それが私の願いです。

コミュニケーションが困難な患者さんに対しては、どのようにアプローチしていますか? 

音楽でのアプローチを取り入れています。城西病院に勤務していた頃から音楽による癒やしを実践し、手応えを感じていました。患者さんと一緒に歌ったり、寝たきりの患者さんの耳元で私が歌を歌ったりします。音楽のジャンルはさまざま。童謡の時もあれば、患者さんのリクエストで讃美歌を歌うこともあります。音楽の原点は祈りです。医療の原点も、救いを求めた祈りや願いだと思います。医療技術は目まぐるしく進歩していますが、原点に立ち返り、患者さんの願いに着目してさまざまなアプローチで診療することも大切です。音楽のほかに、患者さんが笑顔になるような話題やなぞなぞを出すこともあります。ネタ帳に書き留めて、患者さんに披露するんですよ。

ドクターカーも備えているそうですね。

勢納八郎院長 城西名原訪問クリニック4

はい。救急車を呼ぶほどではない時や、医師の付き添いのもとで受診が必要な時、入院する時の移動などに使用します。車いすに座った状態で後部座席に乗車することが可能です。通院や入院が必要になった際、介護タクシーを呼んで移動することもできますが、今すぐにでも受診したい場合、ドクターカーを使用すればスムーズに移動することができます。診察中に私が介護タクシーを予約し、帰りはタクシーで帰っていただくようにしています。ドクターカーを運転するのは、もちろん私です。「なぜそこまでするのか」と聞かれますが、もしも友人や家族が同じような状況になったら、車を運転してあげますよね。それと同じことを患者さんにしている感覚です。

クリニックを「おかえり」と出迎える地域の居場所に

訪問診療に力を注ぐ原動力は何でしょうか? 

勢納八郎院長 城西名原訪問クリニック5

「生まれてきて本当に良かった」と思いながら人生を締めくくってもらうために、診療しています。もともとは政治家や弁護士、哲学者、教師に興味があり、文科系の大学に進もうと考えていました。ですが、高校1年生の時に周囲から医師になることを勧められ、疑問に思いながらも医師の道に進むことにしたのです。実際に学ぶ中で、私がもともとめざしていた世界と通じるものがあるように感じました。見て学ぶこともあれば、実践して学ぶこともある。机上での学びが多い文科系の大学では体験できない、実践を通じた学びに面白さも感じましたし、「これが本来やりたかったことだな」と思うことも多々ありました。何よりも、技術だけではなく人との関わりが大切である点も、自分にはぴったり合う要素だと思います。

外来診療にも対応されていますね。

診療日の午前中に外来診療、午後に訪問診療を行っています。「訪問クリニック」と名づけたとおり、訪問診療を中心に行っていますが、お困りのことがあれば気軽に相談していただけるよう、外来診療の時間も設けています。診察や治療に関係なく、遊びに来てほしいですね。喫茶店よりも雑誌がそろっていますし、待合室では自宅のリビングのような長テーブルを囲んで、リラックスして過ごせると思います。ぜひ長居してください。地域の憩いの場として活用してほしいです。

地域に寄り添う思いが伝わってきました。今後の展望をお聞かせください。

勢納八郎院長 城西名原訪問クリニック6

訪問診療と外来診療で、患者さんの要望、地域のニーズに応えていきたいですね。私の信仰する宗教では、「ようこそおかえり」という言葉が交わされます。訪れた人に対して「いらっしゃい」ではなく、誰に対しても「おかえり」と声をかけるのです。最初のうちは抵抗を感じていたのですが、この言葉には「どうぞゆっくりしていってね」という意味があるのではないかと気づきました。訪れた人をお客さまとして扱ったり、おもてなしをしたりするわけではなく、何となく居心地が良くて長居できる場所をつくり、「おかえり」と出迎える。当院もそんな場所になれば良いなと考えています。

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