外来と変わらぬ医療を実現する
新たな訪問診療のモデルケースとは
あしやプラスクリニック
(芦屋市/芦屋駅)
最終更新日:2024/05/15
- 保険診療
外来通院ができない人に対し、自宅や入居施設まで医師が出向いて医療サービスを行う訪問診療。超高齢社会を迎えた現在、存在意義やニーズはますます高まりを見せている。その一方で、在宅では十分な医療が受けられないのではないか、費用が高額になるのではないかという不安から、タクシーを呼んだり家族に送迎してもらったりして無理な通院を続けている人も少なくないという。こうした訪問診療に新風を吹き込むべく、さまざまな診療科のスペシャリストや病院、関連施設と連携した手厚い医療サービスを展開しているのが「あしやプラスクリニック」の安積尚杜(あさか・なおと)院長。どのような方法で利用者のニーズに応えているのか、その実態に迫ってみた。
(取材日2024年4月25日)
目次
さまざまな診療科の診療を在宅で受けられる、新時代の訪問診療に注目を
- Q訪問診療では、どのような方が対象となるのでしょうか?
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A
訪問診療は、医療機関への外来通院が困難な方や退院後の在宅療養が必要な方を主な対象としています。ご家族の援助が満足に受けられないケースなど、ご自身で通院できない場合は全般的に対象になると思っていただいて構いません。いろいろと条件があるのではないかと気を揉んでいる人もおられますが、あまり難しく考えず、まずは気軽に相談するところから始めてみるといいでしょう。定期的な訪問診療を受けておられない場合でも、急な症状で体がつらく外来受診が困難な場合には「往診」という手段もあります。救急車を呼ぶほどではないけれど動けないという場合は、我慢せずに対応しているクリニックに相談するのも一つと覚えておいてください。
- Q外来通院との違いや、訪問診療ならではのメリットは何ですか?
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A
訪問診療では利用者のご自宅や入居施設まで医師や看護師が直接訪問し、診察や薬剤管理、療養指導などの医療サービスを提供します。現在では血液検査やエコー、心電図といったポータブルな検査機器が充実し、外来診療と何ら変わらぬ医療が提供できるようになりました。特に在宅の場合、慣れ親しんだ自宅で定期的なフォローが受けられるのは大きなメリットといえるでしょう。そうやって生活の質向上や入院回避をめざしていくことが訪問診療の大きな目的です。また、高齢の方や終末期の患者さんに対し、看取りまでしっかりと対応するクリニックが増えています。その意味では、本人やご家族の心の支えとしての役割を担っているとも考えられますね。
- Q実際の訪問診療の流れについて教えてください。
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A
依頼や相談に関しては、ご本人やご家族から直接電話で問い合わせていただくだけで結構です。ケアマネジャーや施設、病院関係者からの問い合わせでも構いませんが、誰かを通さなくてはいけないという決まりはありません。また、連絡をいただければ面談にはこちらから出向きますので、わざわざお越しいただく必要もありません。納得できれば訪問診療の契約を交わし、その後は月2回の定期訪問診療がスタートします。訪問回数は柔軟に対応できますので、ご希望があればお申し出ください。訪問診療は基本的に保険診療で受けられます。訪問に必要な交通費も医療者側で負担するので安心してください。
- Qこちらでは、さまざまな診療科の先生が訪問すると聞きました。
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A
当院では午後を訪問診療にあて、内科医師である院長の私が診療を担当。全身管理をしていく中で、時には内科以外の専門領域での診療が必要となるケースも生じます。こうした場合にわざわざクリニックに足を運んでいるようでは、何のために訪問診療を受けているのかわかりません。そこで当院が導入したのが、眼科や皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科など、当院に在籍するさまざまな診療科の医師が必要に応じて訪問するシステム。ちょっとした耳掃除から嚥下機能のチェックまで、専門家がご自宅まで訪れて担当。それぞれの医師の背後には当院とは別に勤務している病院もありますから、入院治療が必要な場合に慌てずに済むこともメリットといえるでしょう。
- Qほかにも貴院ならではの訪問診療の特徴があれば教えてください。
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A
まずは24時間・365日、何かあればいつでも対応できること。そして地域の病院や介護事業者と連携し、緊急時のバックアップ体制をしっかりと確保していることです。健康というのは体に限ったことではありません。例えばメンタルに問題を抱えた場合でも、精神科の専門施設である西宮市の有馬病院と連携するなど、通常のクリニックでは対応が難しい事態にも当院では対応が可能です。1人の患者さんをチーム全体で支える。それが当院のめざす、本当の意味での安心・安全かつ生活に則した訪問診療の姿です。訪問時は熟練した看護師が帯同しますので、医療以外でのことであっても遠慮なくご相談ください。きっと何らかのお力になれると思います。