武田 賢一 先生の独自取材記事
たけだ医院
(松江市/松江駅)
最終更新日:2025/03/28

松江市の大庭ショッピングタウン内にある「たけだ医院」。院長の武田洋平先生が2024年4月に開業した同院に、翌年4月1日から兄である武田賢一先生が新たに診療に加わることになった。消化器専門の洋平院長と呼吸器専門の賢一先生による医師2人体制で、内科全般はもちろん、それぞれの専門領域の診療のほか、これからは訪問診療にも注力していくことで、地域の医療ニーズに応えていく方針だ。「地域のかかりつけ医として、私たちが生まれ育った故郷に恩返しがしたいです」と話す賢一先生に、これまでの経歴や、同院への入職を決めた理由と地域医療に対する想い、今後の展望など、たっぷり話を聞いた。「兄弟2人、そこの川でよく遊んだものですよ」とやわらかな笑みを見せる賢一先生からは、地元に対する優しい思いがひしひしと伝わってきた。
(取材日2025年2月28日)
患者の最期まで寄り添う「かかりつけ医」に
弟の洋平院長が開業された医院ですが、入職された理由をお聞かせください。

面と向かって言うのは恥ずかしいですが、洋平院長が背中を押してくれた部分が大きいですね。洋平院長とは子どもの頃から仲良しでした。2人とも鳥取大学医学部で学び、学生時代には「同居のほうが良い部屋が借りれるね~」なんて一緒に暮らしていた時期もありました(笑)。今でも2人で食事に行きますし、一般的な兄弟よりも仲良しなのではないでしょうか。そんな弟から「医院を一緒にやろう」と誘われた時は、やはりうれしかったですね。松江市大庭は生まれ育った場所でもありますし、地元に恩返しできると思ったのも大きかったです。これまで大学病院や地域の基幹病院などで20年以上キャリアを積んできましたが、今後は内科のかかりつけ医として、腰を据えて地域医療に関わってみたいと思っています。
賢一先生のご経歴を教えてください。
私の専門は呼吸器内科なので、喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)・肺がんをはじめとした呼吸器疾患はもちろん、感染症や、膠原病などの自己免疫疾患、アレルギー疾患など、幅広く診療してきました。また、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医として、全身のさまざまな腫瘍の診断や治療を行ってきた経験もあります。松江市立病院では腫瘍内科の立ち上げにも携わらせていただき、がんのゲノムプロファイリングなど先進的な医療の研究も行いました。医師として20年以上病院で勤務し、臨床研究の両軸で幅広い領域から研鑽を積んできたから自分だからこそ、地域のかかりつけ医としてもサポートできることがあるのではと考えています。例えば、腫瘍内科としての経験も、がんの兆候の見極めに生かしていきたいですね。また、地域の主要な病院に気心が知れた医師がたくさんいることも得難い財産になっていると感じます。病院との連携も密に取っていきたいです。
緩和ケアにも熱心に取り組んできたそうですね。

緩和ケアと聞くと、終末期医療をイメージしがちですが、がんをはじめとした大きな病気の診断時から、患者さんとご家族に向き合い、つらさを和らげてその方らしい人生が送っていただけるように一緒に伴走していくことが「緩和ケア」の使命です。ただ、病院の場合は、一人の患者さんに対して、入院期間中といった限られた期間しか診ることができないのに対して、クリニックでは長いスパンで関わることができます。患者さん一人ひとりによりきめ細かに対応できるのではと期待しています。超高齢社会を背景に、今までは病院で入院されていたような患者さんも、施設や自宅で診ていく部分が増えていくと想定されています。ですので、当院でも訪問診療にも力を入れていきたいと考えています。医師が2人いるからこそ、夜間や急な往診にも協力して対応できる体制を構築していきたいですね。地域の方々を最期まで責任を持って診るつもりで取り組んでいきたいです。
医師2人体制で専門性を発揮し、質の高い医療をめざす
賢一先生から見た「たけだ医院」の魅力は何でしょう?

内科で大切なのは「総合的な対応力」と「診断力」だと思っています。当院には、消化器と呼吸器を専門とする医師がいるので、内科全般はもちろん、それぞれの専門性を発揮して診療にあたることができます。また、2人体制だからこそ、「痛みや苦しさで待ち時間に耐えられない」といった急患の方にも、臨機応変に対応していけるのではと考えています。また、洋平院長は内視鏡検査も得意としていて、上部・下部内視鏡検査はもちろん、超音波検査、超音波内視鏡検査など幅広い経験があります。実際に内視鏡検査を目的に来院される患者さんも少なくありません。身内のこういう話をするのは気恥ずかしいですが、洋平院長は腕も良く、優しくて熱心な医師です。一緒に働く上で心強い存在ですね。
院内の設備も充実しているとお聞きしました。
内視鏡の検査機器をはじめ、大腸内視鏡検査用の専用個室、検査時の苦痛を軽減するための二酸化炭素ガスの送気システムを導入しています。新たに呼吸器内科を開設するにあたって、呼吸機能検査やPCR検査の機器も導入する予定です。PCR検査の機器を使用すると、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、マイコプラズマ感染症、百日咳、ヒトメタニューモウイルスなどの感染症は、検査後15~20分程度で診断できるようになります。検査を院内で完結できれば、結果が出たらすぐに治療を開始できるので、度々来院する必要がなくなるなど、患者さんのメリットは大きいですね。なお、発熱患者とは空間や動線を分けるなど、感染症対策も強化していきます。生活習慣病をはじめ、定期的な通院が必要な患者さんにも安心してお越しいただければと思っています。
診療で心がけていることなどはありますか?

来院された患者さんを全力で診るだけでなく、丁寧でわかりやすい説明も大切にしています。たとえ診療時に医師から病気や治療について説明されたとしても、帰宅後には「どんな説明をされたか」などの内容を忘れてしまうことって珍しくないですよね。専門的な話なので仕方のないことだと思うのです。ですので、患者さんに理解してもらえるような説明を意識して、同じ質問をされたとしても繰り返しお答えしていきたいなと思います。病気や治療に対する理解度は、その後の治療の予後にも大きく影響すると思っています。「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うようなことでも、気軽に聞いていただけたらうれしいです。
地域に必要とされる医院をめざして
賢一先生が医師を志したきっかけは?

祖父が獣医師で、両親が薬剤師と、医療関係者が多い家庭でした。もともと学生時代から理系科目が得意だったので、漠然と「医学へ進む道もあるな」とは思っていましたが、医師の仕事に明確な興味を持ったのは、友人がきっかけでした。友人のお父さんが内科の医師をしていて、友人の家に遊びに行く度にいろんな話を聞かせてもらいました。特に印象に残っているのは「内科の医師は病気を診断した後、外科の医師が手術を行うけど、再び最期まで診るのは内科の医師だ」という話。患者さん一人に対して関わる領域が広く、そこに魅力を感じましたね。
読者の方に知ってほしい健康や医療の情報はありますか。
腫瘍内科で診療していた経験から、皆さんに「必ずしも『痩せる』のが良いことではない」ということをお伝えたい。特別にダイエットなどをしていなくても、半年で5%の体重減少がある方は、内分泌代謝の異常や消化機能の低下など、何らかの疾患が潜んでいる可能性があります。日々の小さな不安や悩みの背景に、大きな病気が隠れているケースもあるので、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。例えば、呼吸器疾患の相談で受診された患者さんが、一緒に霜焼けの相談をしてくださってもいいんです。一方で、正確な原因の特定には、医師側には幅広い知見が求められます。当院の場合、医師が2人在籍している分、診る視点が増える点も強みといえますね。医療設備も整っているので、気になる兆候があった際にはその場で検査を行うことも可能です。患者さんに誠心誠意に向き合いながら、原因を見極めて治るための手助けをしていけたらと思います。
賢一先生の今後のご展望をお聞かせください。

洋平院長と協力し合い、地元の方々に必要とされる医院をめざしていきたいです。本当に困っている患者さんの支えになれるように、まずは訪問診療に注力していきたいと考えています。依頼があれば、施設や患者さん宅に訪問し、切れ目のない医療を提供していきたいです。地域のかかりつけ医として、患者さんの一生に寄り添っていきたいですね。