武田 洋平 院長の独自取材記事
たけだ医院
(松江市/松江駅)
最終更新日:2024/08/30
「やっと故郷の松江で仕事ができます」。そう語るのは2024年4月1日に開業の「たけだ医院」で院長を務める武田洋平先生だ。武田先生は、鳥取大学医学部卒業後20年近くにわたり消化器内科の研鑽を積んだ医師。中でも内視鏡検査については、日本消化器病学会消化器病専門医と、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の資格を持ち、上部・下部内視鏡検査はもちろん、超音波検査、超音波内視鏡検査など幅広い経験を持っている。一方で、日本内科学会総合内科専門医として「気軽に何でも相談できる地域のかかりつけ医になりたいです」と語る武田先生に、医師としてのこれまでの歩みから、開業医という新たなステージへ進む上での今後の意気込み、地域医療にかける思いまで幅広く話を聞いた。
(取材日2024年3月26日)
消化器の専門家として臨床から教育まで尽力
医師を志したきっかけを教えてください。
医療関係者が多い家庭ではあったのですが、2つ違いの兄の影響が大きかったですね。医学部進学でその道に一足早く歩み出した兄の背中に憧れ、当時高校生だった私も医師を志すようになりました。消化器内科医をめざしたのは、大学卒業後に研鑽を積んだ鳥取赤十字病院での経験から。同病院は地域の中核病院ということもあり、内視鏡検査の件数も多く、若手もベテランも精力的に働いていて、私も自然と「この現場の一員としてバリバリと働きたい」と思ったのです。雑務にも積極的に手を上げていくうちに、少しずつ検査を任せてもらうように。この充実した時代があったからこそ、今があると思っています。その後、愛知県がんセンターへ赴任しました。もともとはがん治療について学ぶ目的だったのですが、加えて、当時日本に導入されて日の浅かった超音波内視鏡を学ぶ機会もいただきまして。胃カメラとはまた違う世界にさらにのめりこみましたね。
当時を振り返って、特に記憶に残っていることはありますか。
医師になったばかりの頃、当時の鳥取赤十字病院の外科部長に言われたことを今でも覚えています。配属されてすぐの私に外科部長は「まずはカメラを洗いなさい」と言ったのです。洗い場にいる看護師さんに「洗わせてください」とお願いし、そこから1ヵ月ほど、検査に使用された内視鏡を洗いました。そうすると自然と内視鏡が手になじむようになるのです。そのことに気づいた私を見たのか先輩医師から「私の指導のもとで1件検査をやってみよう」と言われました。やってみると意外とスムーズに検査ができる。そこからずっと内視鏡を中心に経験を積んできました。患者さんの苦痛と診断の精度を考えると1回の内視鏡検査にかけられる時間は長くて5分ほどです。短期集中が求められる点も性分に合っていたのかもしれません。だから長く続けられています。
先生は臨床だけでなく、研究や教育の現場でも幅広いご経験をされたと伺いました。
消化器内科の領域で怖い疾患は「がん」です。早く見つけて治療することが重要ですが、中には「発見が遅れて残念ながら手術できない」といったケースも。その際は全身管理をしながら、抗がん剤などの治療にあたらなければなりません。「患者さんの健康状態を、より長く良い状態で保つにはどうすればよいか」を考えて、専門領域のほか、内科から高齢者医療全般まで、多領域で研鑽を積みました。研究では、発症原因が未解明な膵臓がんをテーマに「生活習慣の関わりからアプローチできないか」など、早期発見に向けて取り組みました。教育の面では、検査精度の向上に努めてきました。例えば、胆のう・膵臓の領域では超音波内視鏡検査が必須なのですが、すべての総合病院で提供できる段階には至っていないという課題があります。また、同じ処置をしても精度や合併症の頻度など結果は異なります。少しでも一人前にできる検査者を増やすために尽力してきました。
消化器内科歴20年、ついに地元で仕事ができた
大学の現場に残らず、開業しようと決めた理由を教えてください。
実は医学部に入学した当時、兄と「将来2人で開業しよう」と、夢を語り合っていたのです。これまで兄は呼吸器、私は消化器を専門に、夢中になって医師としての道を歩んできましたが、そんな中で偶然、こちらの物件が見つかりました。地元の松江市大庭町にあり、開院後に兄が診療を始めることになっても十分なスペースがある。大学病院のほうでは後進も育ってきている。この機会を逃せば二度と開業できないのではないかと思い、開業に踏み切ったのです。私はこの大庭の辺りが地元で、すぐ近くにある小さな川に浸かってカメを捕まえたりして遊んだものです。かねがね、地元で働きたいとは思っていましたが、今回やっとその願いがかないました。
どのようなクリニックにしてきたいとお考えですか?
内科のかかりつけ医をめざしています。やはり病院にかかるのは嫌なものですよね。リラックスして通院でき、日常生活を健やかに過ごすためのお手伝いができる場所にできたらと思っています。もちろん、専門である消化器の領域にも力を入れていきたいです。特に胃カメラや大腸内視鏡は苦痛を伴う検査・処置です。私自身、医師になってすぐ自分でも胃カメラを受けたのですが、つらかったという記憶があります。長年の経験を生かし、極力苦痛に配慮した検査を提供して一人でも多くの患者さんに満足して帰ってもらいたいと思っています。
設備面でこだわっていることはありますか?
特に検査には力を入れています。大腸内視鏡の前処置室は個室で2部屋用意、検査機器も先進のものを導入しています。細かな点では、大腸内視鏡ではCO2送気を導入しました。大腸内視鏡では、空気を入れ内部を検査しますが、その結果おなかが張り、膨満感や痛みにつながります。CO2は、吸収効率が良いので苦痛を和らげることが見込めるのです。また、内視鏡室の照明にもこだわり、ブルーライトを使用しています。青色の光の下だと内視鏡の画面が視認しやすくなり、異変を見落としづらくなるからです。さらに、当院では超音波内視鏡にも力を入れていきます。深部まで観察ができることから、大学病院でも利用されている機器を導入し、食道・胃・十二指腸から肝臓・胆のう・膵臓、脾臓、小腸の一部、大腸、肛門まで幅広く対応できる体制を整えています。
自覚症状がある前に検査に来てほしい
検査の際に、心がけていることはありますか?
胃カメラでは患者さんが挿入時から吐き気を催すような思いで寝ておられることになります。少しでも無駄な時間をかけないよう、集中して検査に臨もうと考えています。苦痛を減らすために、経鼻と経口内視鏡をその場で切り替えられるようハード面も整えています。大腸内視鏡に関しては胃カメラのように「おえっ」となることはありませんが、おなかが張ったりしますから、なるベくゆっくり、優しく検査できるように努めます。それ以外にも患者さんにリラックスしてもらえるように心がけながら検査できるといいのですが、検査に集中していると、なかなかお声がけができないことも。当院ではスタッフと連携しながら、患者さんの不安を取り除く取り組みにも力を入れていきたいですね。
消化器疾患は早期発見、早期治療が重要といわれます。来院を検討したほうが良い症状などはありますか?
がんに限らず、家族歴がある方は定期的な検査が肝要です。また、膵臓がんに関しては、かなり早期に見つけなければ外科的な治療が困難な場合があります。少しの異変、例えば、膵嚢胞や膵管拡張などがあると指摘されたら、すぐに専門的な検査を受けたほうが良いです。また、膵臓がんに関しては、胃がんでいうヘリコバクター・ピロリ菌などのように、家族性であること以外のリスクファクターはいまだに詳しくわかっていません。ゆえに、超音波検査など専門的な検査ができる体制を整えているクリニックにかかることも重要です。
読者へのメッセージをお願いします。
消化器のがんは自覚症状がある頃には「手遅れ」と言っても過言ではないほど、進行してしまっているケースが少なくありません。一方で、早期に治療ができれば寛解が期待できるものになってきています。ゆえに、定期的に検査を行い、早期発見につなげることが重要です。検査にはハードルを感じてしまいがちですが、一時の怖さで受診控えをしてしまうと、そのことが命に関わってしまうかもしれません。当院では検査の苦痛を和らげるため設備面にも工夫しているほか、スタッフ一同通いやすい雰囲気を心がけていますので、何かお悩みのことがありましたら、気軽に足を運んでみてほしいです。