松尾 俊宏 院長の独自取材記事
芦屋まつおクリニック
(芦屋市/芦屋川駅)
最終更新日:2024/04/11
芦屋川駅から北へ徒歩1分、医療ビルの2階に位置する「芦屋まつおクリニック」は2024年2月に開業した。院内は白を基調とした清潔感あふれる雰囲気に、青色がアクセントとなっている。院長の松尾俊宏先生は柔和で優しい表情が印象的だ。糖尿病内科を専門に、患者や家族、生活環境などを包括的に考慮し「患者全体を診る診療」をモットーとしている。糖尿病では治療期間が長期化し、患者が高齢になっていくケースも多い。専門性を発揮しながらさまざまな悩みに耳を傾け一人ひとりに寄り添うために、松尾院長は自身の専門に限らず幅広い分野で研鑽を積んできた。そのような真摯に治療に向き合う松尾院長に、注力する治療や今後の展望を語ってもらった。
(取材日2024年3月15日)
クリニックで糖尿病と肥満症の専門的な治療を提供
ご開業おめでとうございます。こちらのクリニックの特徴を教えてください。
ありがとうございます。内科全般の幅広い診療を行うと同時に、私の専門である糖尿病や肥満症については高度な治療をめざしています。何か困ったときに気軽に相談できるクリニックが理想ですね。市立芦屋病院で研修医をしていたので、今後も芦屋市の患者さんを長く診ていきたいと思い開業しました。糖尿病や肥満症は長期的に付き合っていく病気です。病院で勤務していた時は限られた時間しか患者さんを診られないもどかしさがありました。開業して間もないですが、以前より患者さんの小さな変化にも早く気づけるようになり、手応えを感じています。芦屋市は高齢化が進んでいて患者さんも皆さん何かしら問題を抱えています。年を重ねるごとに体力や認知機能も落ちてきますし、合併症のリスクも上がります。そのような中で当クリニックでは、病気だけではなく患者さん一人ひとりの問題に向き合う方針で診療しています。
糖尿病や肥満症では専門的な治療も可能だそうですね。
糖尿病のうちほとんどの方が2型糖尿病ですが、1型糖尿病や妊娠糖尿病、他の病気から膵性糖尿病になってしまう難しい症例にも対応しています。また、フットケアができることも当クリニックの強みです。糖尿病合併症には末梢神経障害があり足から異常が出てきます。進行すると感覚、痛みにも鈍くなります。そうなるとけがをしても気づきづらく、最初はちょっとしたけがでもそのままにしていたことで重症化するケースがあるほか、場合によっては命に関わるケースもあります。ですから、フットケアでそうしたケースを予防することが大切です。スタッフに恵まれてフットケアができるので、私は非常に幸運ですね。また、肥満症専門の外来を設けて肥満症の治療にも力を入れています。肥満が原因で、糖尿病や高血圧症、脂質異常症になってしまうケースが多いです。それに対して当クリニックでは、保険診療での薬物治療、食事指導、運動指導などを実施しています。
スタッフ体制や病診連携についてはいかがでしょうか。
糖尿病病棟で長く働いていた看護師や、管理栄養士が在籍しています。血糖管理、栄養指導ができるのはスタッフのおかげですね。糖尿病の合併症のチェックもできて糖尿病の診療がしやすい状況がつくれました。肥満症外科手術のチームに所属していた大学病院時代のつながりで、今は、病院と連携して手術前後の患者さんのフォローも対応可能です。市立芦屋病院を中心に、笹生病院や兵庫県立西宮病院などと疾患に応じて連携を取ります。専門の機関に患者さんをつなぐのも、クリニックの役割だと思います。丁寧に診察や検査をして、できる限り早く病気を見つけていきたいです。
病気だけでなく患者全体を診たい
診療のコンセプトを教えてください。
病気だけでなく、ご家族や生活背景も含めた「患者さん全体を診る」がコンセプトです。患者さんと一生にわたってお付き合いし、患者さんの中にある病気も診ていくという考え方です。糖尿病も肥満症も年齢とともに合併症などの問題が出てきます。「患者さんのQOL(生活の質)を改善したい」という気持ちで、できるだけ合併症のリスクを減らせるような治療を心がけています。何もしないと10年後には透析が必要になるケースで、初めから腎臓のケアができたら、その患者さんの人生は大きく変わるでしょう。クリニック名に「糖尿病」を入れなかったのは、糖尿病に限らず診れるものは全部診るという気持ちの表れです。長期的に患者さん全体を診るためには、日頃から困ったことがあったら相談できるような信頼関係が不可欠だと考えています。
患者さんへの接遇で意識していることはありますか。
お話をしっかり聞くようにしています。「このようなことに困っている」「このようなことをやってしまった」など、どのような内容でもまずは共感することが大切です。いきなり治療内容やゴールの話をしても治療は成功しませんから。治療を続けられる仕組みとしては、小さな目標設定や指導方法の工夫などを意識しています。治療は続けることが大変ですが、こちらも工夫して本当に困っている人の力になれたらいいですね。また、たわいもない会話から疾患につながる情報が得られることもあります。患者さんとの信頼関係をつくりながら、小さな変化にも気づけるように注意を払っています。
幅広い悩みに応えるために専門外でも研鑽されています。
専門外でも勉強を続けるのは、クリニックを頼って来てくださる患者さんへの責任だと思います。糖尿病には合併症があるケースがほとんど。専門外でも対応できるように心臓や呼吸器、耳鼻咽喉科の勉強をして自分のレベルを引き上げてきました。新しいことを学ぶことで、糖尿病を診療しているだけでは得られない知見があったり、「こういう概念があるのだ」と新しい発見がたくさんあって新鮮ですよ。糖尿病などの慢性疾患の患者さんには定期検査を実施し、専門外でも早めの診断につながればいいなと思います。これからも幅広く勉強を続け、患者さんに適切なアドバイスができる体制をめざします。
病気について家族と話し合う機会をつくることが大切
糖尿病内科を専門にした理由やこれまでのご経歴をお伺いします。
研修医時代に熱心に教えてくださった先生の専門が糖尿病でした。糖尿病内科は患者さんを幅広く診ることができるので、今となっては良かったなと思います。研修医時代にはたくさん失敗もし、医師の世界の厳しさを痛感しました。それでもここまでやってこられたのは「どのような仕事も苦しいもの」という覚悟があったから。医師というのは人の一生に関わる大切な職業です。最近になってやっと自信もつき、やりがいを感じるようになりましたね。経験を積む中で「患者さんを良くしたい」という気持ちが強くなり、自分の医療レベルも上がったことで開業を決意しました。
糖尿病の患者さんへのアドバイスはありますか。
どの年齢でも、ご家族と病気やこれからのことを話す「人生会議」の機会を設けてほしいと思います。「病気のことで家族に迷惑をかけたくない」という方が多いですが、10年、20年後のことを考えて、早めにご家族の協力を得るのがいいでしょう。認知機能が低下して薬を変えても管理ができないなら、3回に1回はご家族と一緒に受診してほしいです。食事が自分で作れないならご家族のサポートが必要です。今どのくらい体力があるのか、どこで寿命を迎えたいのか、残りの人生をどう生きたいのか。「死」に向き合うのは怖いことですが、いつかは話し合わないといけない時が来ます。いざという時に動揺したり悔いを残したりしないために、早めに準備しましょう。私たちがご家族との絆をつないで、患者さんがサポートを得られるようにお手伝いしたいと思います。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
今後も、患者さん全体を診ることをモットーに地域の皆さんに寄り添っていきたいと思います。内科疾患から糖尿病や肥満症、日常の困ったことまで気軽に相談できるクリニックをめざしています。「なんとなく調子が悪い」と思って受診したら、病気が隠れていたというケースも少なくありません。当クリニックでは検査体制を整えることで、重篤な病気を見逃さないように努めています。「どの科にかかれば良いかわからない」という場合でも、まずは気軽に受診してみてください。地域医療の窓口として頼りにしてもらえたらうれしいです。