自分自身を知る「取扱説明書」で
発達障害を正しく理解する
一之江ふじたメンタルクリニック
(江戸川区/一之江駅)
最終更新日:2024/05/14


- 保険診療
学校になじめない、仕事がうまくいかない。何か社会にうまくなじめない。子どもの特性のイメージが強い発達障害だが、大人であっても悩んでいる人は少なくないのだという。コミュニケーションが苦手、忘れ物が多い、執着や依存が強いなどその特性は多岐にわたるため、医療従事者の介入が不可欠だ。そこで「一之江ふじたメンタルクリニック」では、“生きやすさ”のための処方箋として一人ひとりの特徴に応じた「取扱説明書」を作成し、診療に生かしていきたいと考えている。「私たちを含めて自分自身のことはわからないもの。自分の得手不得手を知り、発達障害を正しく理解することで生きづらさの軽減につながる」と患者の背中を押す藤田雅也理事長に、発達障害の種類やその特性などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2024年3月25日)
目次
自分自身を知り、自分自身を伝えるための「取扱説明書」。発達障害の正しい理解が生きやすさにつながる
- Q発達障害の受診タイミングを教えてください。
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A
▲発達障害を正しく理解することが大切だと話す藤田理事長
現在は発達障害という言葉が一般的になり、さまざまなウェブツールなどがあるので、「自分は発達障害かもしれない」と不安を感じて医療機関を受診するケースが増えています。学生だとスクールカウンセラーからの指導をきっかけに受診したり、社会人では上司に伴われて来院されたりする場合があります。また発達障害の二次障害として、うつ病やパニック障害から見つかることも。発達障害の方は依存傾向にあるため、アルコール依存などと関連している事例もあります。ただし実際には社会生活上困っていないとクリニックの受診に結びつかないため、自分が発達障害だと気づけていない、あるいは治療ができていないという人が少なくありません。
- Q社会生活の中では、どのような困難を感じるのでしょうか?
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A
▲一人ひとりの特徴に応じた「取扱説明書」を作成する
学生の間は友達ができない、空気が読めない、忘れ物が多い、片づけができない、コミュニケーションが苦手といった特徴があります。また、就職活動で筆記試験は受かるけれど、面接がうまくいかないということもありますね。社会人になるとまた別の困難が生じます。耳からの情報は理解できないので電話応対ができなかったり、優先順位を決められないために段取りが悪かったり、チームでの仕事がうまくできないなどが挙げられます。あとは会社にうまく適応できず、転職を繰り返すというのも特徴の一つ。これは学生も社会人も共通するところですが、注意力が散漫になってしまい、ケガや事故が多いという面もあります。
- Q診察方法について詳しく教えてください。
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A
▲心理検査などを行い、診断に役立てる
私たち医師が発達障害だと思ったとしても、安易に診断をつけることはありません。まずはしっかりとお話を伺い、保護者といらっしゃっているのであれば、ケガが多くなかったか、落ち着きはあったかなど、幼少期の頃にさかのぼって様子を伺います。その上で今どのようなことで困っているのかを詳しく問診していきます。診断は心理検査などによって行いますが、あくまで自分の苦手なこと、得意なことを知るためのツールであると説明します。発達障害の種類によっては薬を処方することがあるものの、基本的には患者さんが社会にアジャストしていく方法、生きづらさを軽減するための方法を一緒に考えていく、寄り添っていくという治療になります。
- Q発達障害にはどのような種類があるのでしょうか?
-
A
▲生きづらさを感じたら、気軽に相談してほしいという
大きく3つの種類に分けられます。1つは注意欠陥・多動性障害(ADHD)です。大人の場合、多動衝動は見られませんが、浪費をしたり、ギャンブル依存であったり、衝動性を抑えられないといった特性があります。2つ目が自閉症やアスペルガー症候群の自閉症スペクトラム障害(ASD)です。コミュニケーションが苦手で閉じこもりがち、こだわりが強い、飛び抜けてIQが高いというタイプもこのカテゴリーに属します。そして3つ目の学習障害には、読む、書く、計算に加え、運動が苦手というタイプもあります。
- Qクリニックではどのような治療を提供していこうとお考えですか?
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A
▲患者一人ひとりに合った適切な方法を考え、サポートを行う
当院では発達障害の方にご自身の「取扱説明書」を作成し、治療に役立てたいと考えています。自分の特性や得手不得手を知ることが、生きやすくなる第一歩ですから、自分自身を理解するための情報を集約し、どういうふうに生活を送れば良いのかを具体的に示した、いわば生きやすさのための処方箋ですね。仕事や学校の環境になじめるように物事の考え方の変化を促す他、衝動性を落ち着かせるのが難しければお薬も使います。発達障害の場合は自己評価が低い方が多いので、自信を回復させていくことも必要です。さまざまなツールや方法論を交え、それぞれが社会に適応していくための方法を考え支えていくのが私たちの役割だと考えています。