糖尿病や肝硬変に発展する脂肪肝
放置せず肝臓専門の医師に相談を
御徒町おひさま内科
(台東区/新御徒町駅)
最終更新日:2024/10/03


- 保険診療
肝臓に関わる疾患として、「脂肪肝」「アルコール性肝障害」などはよく知られている。痩せていたり、多量のお酒を飲まなかったりする人は、「肝臓の疾患とは無縁」と思っているのではないだろうか。しかし、「肝臓の疾患は多くの種類があります。痩せている方や飲酒習慣がない方も、注意しなければなりません」と力を込めるのは、日本肝臓学会肝臓専門医の資格を持つ、「御徒町おひさま内科」の榎奥健一郎院長だ。肝臓の機能が悪化すると、糖尿病、肝硬変、心筋梗塞など、さまざまな疾患に連鎖する可能性がある。東京大学医学部附属病院で20年にわたり数多くの難症例を診てきたからこそ、早期発見・治療の重要性を実感している榎奥院長。肝臓を守ることの重要性や、疾患予防のために日常生活でできることなどについて、詳しい話を聞いた。
(取材日2024年9月9日)
目次
自覚症状がなく、健康診断で異常がわかる肝臓の状態。早期受診で生活習慣病や肝臓がん、心筋梗塞などを予防
- Q肝臓の検査数値で重視するのは、どのような項目ですか?
-
A
▲肝臓数値が異常値になる原因は飲酒だけじゃないという
「ALT」「AST」「γ-GTP」という、肝臓の状態を示す指標です。これらは肝臓の代表的な酵素で、血液検査で簡単に測定でき、基準値を超える場合は肝機能障害が疑われます。肝臓の検査数値が異常だった場合の主な原因は、脂肪肝、アルコールの長期摂取によるアルコール性肝障害、B型・C型のウイルスによる肝炎、生肉が原因とされるE型肝炎、薬の服用によって起こる薬物性肝障害、自己免疫の異常による自己免疫性肝障害などさまざまです。代表的なのは脂肪肝で、男性はメタボリックシンドロームになりやすい20代以降から増え始めます。逆に女性は閉経してから目立ち、女性ホルモンの分泌の減少が影響していると考えられます。
- Q脂肪肝とはどのような病気なのでしょうか。
-
A
▲資料を用いてわかりやすく説明してくれる
肝臓に、中性脂肪が蓄積されすぎている状態です。主な原因は、慢性的な飲酒、肥満、過剰なカロリー摂取などです。脂肪肝は自覚症状がなく、健康診断で指摘されることがほとんど。健康診断を受けた方のうち男性の40%、女性の20%が脂肪肝という報告もあると聞きます。少しの脂肪の蓄積で肝機能が悪くなる方もいれば、たくさん脂肪がついても大丈夫な方もいて、体質が大きく影響する病気です。とはいえ、脂肪肝を放置してはいけません。健康診断で「肝機能の数値が悪い」と指摘された方などは、年に1~2回は腹部超音波検査をお勧めします。併せて血液検査を行い、「ALT」「AST」が基準値を超えていれば脂肪肝を疑います。
- Q脂肪肝を放置した場合、どのようなリスクがありますか?
-
A
▲症状がある場合はすでに重症化してしまっていることも
脂肪肝は、糖尿病、脂質異常症、高血圧などにつながることが珍しくありません。メタボリックシンドロームの悪化にもつながるでしょう。また、自覚症状が現れた時にはすでに肝硬変となっていることがほとんどで、その症状は腹水、黄疸、倦怠感などさまざまです。肝硬変に至る前段階でも、肝臓がんが発生することがしばしばある上、血管壁にコレステロールがたまり、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こすリスクもあります。そのため、当院では血管や心臓の状態も慎重にチェックしています。太っている方のほうが重症のイメージが強い脂肪肝ですが、痩せていて肝臓の検査数値が悪い方のほうが糖尿病などになりやすい傾向があり、注意が必要です。
- Q検査で肝機能に異常が疑われた場合、どのように対応されますか?
-
A
▲超音波検査で重大な病気のリスクとなる因子を見つける
基本は生活習慣の改善指導を行い、運動や食事などで少しでも減量をめざします。手軽なのはウォーキングで、忙しいビジネスパーソンには、通勤途中で1駅手前で降りて歩く、エスカレーターを使わず階段を利用するといった工夫をご提案します。食事では、腹八分目に抑える、揚げ物や甘い物は控えるといったことも意識することが大切。必要なら、並行して肝臓の炎症を抑制するのに役立つ薬なども処方します。また、肥満の方は睡眠時無呼吸症候群で正常な睡眠が妨げられがちです。きちんと眠って体を十分に休めることも大切なので、当院ではその治療も行っています。検査は自宅で実施でき、診断がついたら専用の鼻マスクなどで対応します。
- Q予防のために、日常生活で気をつけるべきことはありますか?
-
A
▲定期的に健康診断を受けてほしいと話す榎奥院長
生活習慣を見直すことから始めましょう。3食をなるべく決まった時間にきちんと食べ、適度な運動を欠かさず、睡眠も大切にしてください。生活習慣を整えるのは、自分だけでは難しいかもしれません。できれば、ご家族が協力していただけると理想的です。特に運動は、義務になると続かないものです。家族で一緒に楽しみながら、運動するのはいかがでしょうか。例えば家族でおしゃべりしながら近所をウォーキングするだけでも、知らなかった地元の魅力や歴史を発見できるかもしれません。休日に山登りなどもいいですね。また、定期的に健康診断を受けるようにしてください。血液検査や超音波検査などで、すぐに肝臓の状態がわかります。