大角 篤司 院長の独自取材記事
おおすみ医院
(横浜市港北区/新羽駅)
最終更新日:2021/10/12

横浜市営地下鉄ブルーラインの新羽駅から徒歩5分。駅から少し離れるとまだ緑が多いこの街に、「おおすみ医院」はある。新羽町のバス停留所が目の前にあり、バスを利用するにも便利だ。院内は明るく、とても清潔で、診察室への案内システムや電話での予約システムも近代的だ。一方で、院長の大角篤司先生がイメージするのは、昔ながらのいわゆる「町医者」。具合が悪いときにはいつでも駆け込むことができ、大角先生自らが往診もしてくれる。原点は医師として地域に根差した父の姿。自分も地元の人々のために尽くしたいと熱心に治療を行う。専門は脳神経外科だが、10年以上前から続けている訪問診療の経験をもとに今日も新羽の町を駆け回っている。そんな大角先生の思いを大いに語ってもらった。
(取材日2011年6月14日)
いざという時患者さんを助けられる開業医をめざし開業
こちらに開業されたきっかけは?

もともとは父親がやっていた医院なんです。40年近く開業していたんですが、私が医学部を卒業して、ようやくこれから医者になれるんだな、なんて話をしていたそのわずか4日後に、突然、交通事故で亡くなってしまいました。まさかそんなことになるとは思っていなかったので、学生時代は開業については考えず、脳外科に進みたいと思っていました。実際、昨年まで大学病院で脳外科専門の医師として勤務していて、その間、ここは閉めていました。ですがその間、今度は母親が倒れたことで、往診などもできる地域医療に目を向けるようになったんです。防衛医科大学校では脳外科救急などの診療を行いながら、頭部外傷の研究や、研修医や大学院生の指導にあたっていたんですが、その時の研究や仕事がひと区切りついたタイミングでした。これからは、外来だけではなく、患者さんに呼ばれたらいつでも往診に出かける、そういうスタンスをめざしています。
現在、往診はどのあたりを範囲とされているのですか?
週に1度、当院が休診となる水曜日に、八王子の在宅支援診療所という訪問診療専門のクリニックを拠点としています。10年ぐらい前から始めました。そこは、結構重症な患者さんも多いし、看護師さんも少ないので、ほとんど自分でやるという点で、いい経験になっています。あいにく当院のあるこの地域ではまだ始められていないんですが、今後は近隣のケアステーションなどと協力し合い、地域の特色を勉強しながら徐々に進められたらと考えています。日々の診療のほうは、現在は1日に40~50人ほど診ています。開院当時と比べると、待ち時間が長くなってしまうこともありますが、ウェブ予約も承っておりますので、ぜひご確認くださいね。
先生の専門は脳神経外科ですが、その他の科も受診できるのですか?

一般内科も診ていますよ。本来は脳外科の手術などが専門なんですが、そもそも脳の疾患というのは内科に基づいたものが多いんですね。高血圧症がそうですし、高脂血症や高血糖症などいわゆるメタボリック症候群の症状はあてはまりますね。あとは、喘息なども診ています。私自身が喘息持ちだったので、ちょっとした時に大学病院や高度な医療センターに行かないと処置できないというのでは困ると思いまして、町医者のレベルとしてはそこそこの緊急対応ができるようにしています。
父親の背中を見て学んだ訪問診療もできる医師に
往診をするようになったのはお父さまの影響が大きいのでしょうか?

訪問診療を始めた直接の理由は、大学の先輩からちょっと手伝ってくれないかと声をかけられたことです。ただ、抵抗がなかったのは、父親がなぜか幼い私を連れて往診に行くことが多かったからでしょう。往診が苦手という先生もいますが、私にとっては、そういう医療のあり方というのが体に染み込んでいたんですね。他人の家に平気でお邪魔できるというのは性格もあるかもしれませんが(笑)。患者さんの日常に入っていってコミュニケーションをとるというのはまったく苦ではありませんでした。
先生が患者さんに対して大切にしていることは何ですか?
目線を一緒にするということですね。子どもでもお年寄りでも同じです。例えば、患者さんの訴えに対して、こちらは専門的な知識があるので、どの程度の症状なのかわかったとしても、簡単に「大丈夫ですよ」と言ったりはしません。最後まで話を聞いて、その上で、私の医師としての考えを話すようにしています。診療後も、小さいお子さんやご高齢の方に対しては、時々電話をしたりもしています。外来だけで終わりにするのではなく、フォローアップというか、経過を含めて診ていきたいんです。不安はなるべく取り除いて差し上げたいですからね。
先生は最初からそういった考え方だったのですか?

段階的に変わってきたと思います。脳外科に進んだばかりの頃は、とにかく手術のスキルを身につけることに必死でした。脳外科の手術では、一歩間違えると命までは落とさなくとも確実に後遺症を残してしまいますので、自分の腕に自信がないと手術はできないのです。また、脳の症状は、手術によって急激に改善するんです。成果が目に見えて現れる、そこにモチベーションを感じていました。ただ、在宅診療をやり始めると、また別の医療もあるということに気づいたんです。脳外科の疾患は、症状が出たらすぐに治療をしなければ、命に関わることもあります。ですが、たとえ治療できたとしても、いろいろな後遺症と向き合わなくてはいけないんです。今、在宅で診療をするようになって、これまでは聞けなかったような、患者さんの悩みや不安をよく耳にします。そういった悩みを少しでも取り除けるような医療もとても大事なんだと実感するようになりましたね。
困った時はいつでも駆け込める医院に
町のお医者さまとしては、どんなことを心がけていますか?

いわゆる一次予防というものですね。私の場合は脳外科をやっていますので、脳梗塞や脳出血を起こした患者さんの二次予防、つまり再発予防も大事になってくるんですが、こうした小さなクリニックとしては、まず第一に基礎疾患がある方へのアドバイスを重視しています。高血圧症や糖尿病の傾向のある人への予防、それでも発症してしまった人に対しては、その先を見据えた病気との付き合い方を一緒に考えています。
そういった病気にならないためにはどうすればいいのでしょうか?
皆さんが理想と考えているような生活ですね。早寝早起きで、ストレスもなく、できるだけのんびりとした暮らし。でも、現実はそうもいきません。その中でもまずは、ストレスとの付き合い方が重要ですね。人間は、まったくストレスがないというのは無理だと思うので、ためたストレスの解消法を見つけることです。なるべく笑顔になれることがいい。例えばテレビを観るのでもいいし、孫の顔を見るというのでもいいし、スポーツでもいい。人それぞれで構いません。スポーツもあまり本気になるとストレスがたまって本末転倒になるので、うまい加減でやっていただくのが肝要ですね。
先生がご自身の健康のためにしていることはありますか?
なるべく歩く機会を増やすことと、お酒を週3日のビール程度にすること。それから2人の娘と体を使った遊びをすることですかね。毎年家庭菜園で野菜を育てているので、野菜の面倒見ながら土をいじったりするのもストレス発散になります。最近はなかなかできないんですが、自転車で出かけたりするのも楽しいですね。学生時代にアイスホッケーをやっていて、たまにOBとして試合に出てほしいと言われたりもしますが、そんなことをしたら1週間くらい診療を休むことになると思うのでやめています(笑)。あとは、食べ物は妻が考えてくれているので、野菜を多く取るように心がけているくらいですね。あまり普段の生活から、あれをしなければ、これをしなければと気を張るようなことはしていません。
今後の展望をお聞かせください。

時間外も含めて、どんな時でも、とりあえずあそこに行けば診てもらえると、地域の人に頼ってもらえるような医院をめざしたいですね。まずは、患者さんのいい話し相手になれれば。もともと外科系ですので、ちょっとしたケガでもすぐに対応できますし、あとは、周りの介護ステーションなどとも連携して、少しずつ在宅での診療も増やしていければと思っています。CTなどの機械も完備していますので、脳神経疾患に関してはより専門的な医療を、受診しやすいように提供できればと。イメージとしては、昭和の時代にあったような身近な町医者というスタンスで地域医療を続けていければと考えています。