北口 博士 院長の独自取材記事
きたぐち胃腸肛門クリニック
(八尾市/服部川駅)
最終更新日:2024/07/05

近鉄信貴線・服部川駅から徒歩13分、車でのアクセスも便利な「きたぐち胃腸肛門クリニック」。長年外科の医師として多くの手術をこなしてきた北口博士(ひろし)院長が去年開業した、内科、消化器内科、肛門外科のクリニックだ。天井が高く広々とした待合室は、白とブラウンを基調としたぬくもりを感じる空間。受付を中心に処置室やリカバリー室、トイレが左右対称に2つずつ配置されているのは、胃・大腸内視鏡検査の際、男女で動線が分かれるようにとの配慮だという。胃がんや大腸がんの手術に携わることが多かった経験から定期検診による早期発見の大切さを痛感し、敬遠されがちな内視鏡検査を少しでも受けやすくするために心を砕いている北口院長。内視鏡検査の現状や、外科出身だからこその強みなどを聞いた。
(取材日2024年6月3日)
外科での経験を生かし、幅広い症状に対応
具体的でわかりやすいクリニック名ですが、どういう思いでつけたのですか?

何をしているのかわからないのが一番入りづらいですし、前を通る人が何科のクリニックなのか看板に近づいて確認しないとわからないようではとっつきにくいと思ったので、「胃腸と肛門を診ていますよ」と、やっていることをクリニック名に入れたかったのです。「消化器」も少しわかりにくいですよね。例えば消化器内科は肝臓も扱いますが、「消化器内科」という看板では患者さんが来てくれなかったりします。それならば「胃腸」と書いたほうがわかりやすいかな、ということですね。
もともとは消化器外科がご専門ということですが、専門を決めた経緯を教えてください。
消化器に限らず外科が良いと思っていました。実際は違うのですが、当時、内科には「薬での治療がメインかな」というイメージがあったのと、外科は薬や手術など選択肢が多く、全身を診られるようになりたいということで一般外科に入りました。実際は内科に頼ることも多く、外科が万能ではないとわかりましたけどね。その後、いろいろな外科を見た上で消化器外科に決めたのですが、やはりがんには大腸がん、胃がんが多く、消化器の手術に携わることが多かったというのが一番の理由です。
長年外科の医師として勤めてきた中で、開業を決めたのはなぜですか?

外科で手術をし続けるという選択肢もあるのでしょうが、周りの医師が、ある程度の年齢になるとどうしても目の衰えや手の衰えを感じるようになるのを見ていて、最後まで手術ができるのは一部の医師だけなのだと思っていました。自分が衰えを感じるようになっても手術を続けることができるか、と考えた時、開業という選択肢が出てきたのです。実際に開業してからは、手術こそ行いませんが、外科医の時の経験が役立っていると感じます。鼠径ヘルニアなど消化器内科では扱わないような疾患の診療や、虫垂炎で手術が必要かの判断、手術後に傷が膿んだり、腸閉塞になったりといった合併症など、クリニックとしては幅広い症状に対応できているので、そういうところは強みかな、と思っています。
がん早期発見のため少しでも受けやすい内視鏡検査を
内視鏡検査に力を入れているそうですね。

胃カメラは鼻用と口用のものを導入しています。「おえっ」となる嘔吐反射が出やすい人でも、眠ったような状態で検査を行えるように鎮静剤を使いますから、検査が嫌になるということはほとんどないと思います。口から入れるカメラはもともと画像が鮮明でしたが、光の当て方やコンピューターの画像処理技術で早期の病変を見つけやすくなっていると思います。鼻用のカメラも、今は口用と変わらないくらい画質が良くなっていますね。大腸カメラについては、検査技術の進歩で、以前と比べると楽にできるようになったとは思いますが、下剤を飲むことに変わりありませんし、下剤の量が減っても水分を取ってもらうことになるので、そこは大変かもしれません。早くきれいになればその時点で終わって検査に入りますし、カメラを入れる時は鎮静剤を使用して苦痛の少ない検査を心がけています。
受付を中心にして、左右対称に処置室やリカバリー室が2ヵ所ずつあるのが印象的ですね。
大腸の内視鏡検査の際は下剤を飲んでもらいますので、トイレに行く時など、男女一緒だと気にされる方もいると思うんです。また、以前は検査を行う際に腸内に空気を送り込んでいましたが、今は二酸化炭素を使うのでおなかが張っておならが出るということは少なくなりましたが、それでもそばに異性がいると気になりますよね。なので、処置室もトイレもリカバリー室も、男性と女性で使い分けできる造りにしました。これまで皆さんが「嫌だな」と感じてきたことを少しでも解消できればと思っています。まずは検査を受けてもらわないと、がんの早期発見、治療にはつながりませんからね。胃の内視鏡検査はだいぶ一般的になってきましたが、大腸内視鏡検査にはどうしても抵抗を感じる方が多いと思いますので、少しでも受けやすい環境にできればと思っています。
大腸内視鏡検査で病変を見つけた場合はそのまま切除することもあるのですか?

がんの場合はきちんと見極めないと、中途半端に取ってもいけませんので、がんの疑いがあって、少しでも進行の可能性がある時は大きい病院を紹介するなどしています。ポリープの場合は検査の際にしっかり取るようにしていますね。
肛門外科で扱う疾患の種類、治療法について教えてください。
痔の人が多いですね。「痔=イボ痔」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、裂肛(切れ痔)や痔ろうなどいろいろな種類があります。また、出産後に痔になって、「産婦人科で薬は出してもらったけど、一度専門の先生にきちんと診てもらいたくて」という方も来られます。治療法は、薬、注射、手術があり、痔の種類や症状によって適した方法を選択します。また、肛門外科では痔以外の症状も診ています。例えば、便秘に関しては腸だけではなく肛門の問題の場合もあるので、患者さんのお話を聞いて、治療が必要か判断しています。他にも何かの菌に感染したり、お尻に膿がたまったり、肛門回りの皮膚がトラブルを起こしたり、肛門外科と一口に言っても患者さんの症状はさまざまです。身近な町のクリニックとして、そうしたさまざまな症状に対応していきたいと思います。
少し困った時に行ける「取りあえずの相談窓口」に
どのような患者さんが多いですか? また、今後この地域でどのような医療を展開していきたいですか?

患者さんの年齢層は幅広いですね。20代、30代の方もいますし、高齢の方にも来ていただいています。割と女性の方もお尻の悩みなどで来院されていて、男女比は半々です。この辺りにはあまり大規模な病院や大学病院がありませんので、そこへ行くための入り口として利用してもらえるクリニックになれればと思っています。大きな病院に行くにしても紹介状が必要だったりしますし、病院に行くべきか、何科に行けばいいかなど、一般の方にはわからないこともあると思いますので、そういう場面でお手伝いができればいいですね。「取りあえずの相談窓口」という感じで来ていただければと思います。
患者さんと接する上で大切にしていることを教えてください。
どうしても話しにくいことはあるでしょうし、初対面でなんでも話せるわけではないと思うので、短い時間でもしっかり話を聞こうと思っています。また、正しいやり方かどうかはわかりませんが、最初に少し患者さんと話をした感じで、「この人だったらもう少しフランクに接してもいいかな」とか「少し毅然と、医師然とした雰囲気で接したほうがいいかな」という距離の詰め方は、患者さんごとに少し変えるようにしています。「きちんとした先生」に診てもらいたい人もいれば、「話しやすい先生」のほうが安心する患者さんもいますので、そういうところは気を使っていますね。
今後力を入れていきたいことと、読者へのメッセージをお願いします。

もともとがんの手術をすることが多かったので、早期発見という意味では胃・大腸内視鏡検査には力を入れていきたいですね。特に30代から50代はどうしてもがんが発生しやすい時期なので、早期に見つけるためには症状が出てからではなく、定期検診という形で検査を受けてもらうのが一番良いと思います。年に1度は必ず受けてほしいです。あとは、「こんなことでクリニックに行っていいのか」などと考えず、ちょっとしたことでも悩みや不安があれば来院してもらいたいと思います。話をしに来るだけでもまったく問題ありませんので、気軽に足を運んでほしいですね。