松原 理英 院長の独自取材記事
養西診療所
(養老郡養老町/養老駅)
最終更新日:2025/04/01

養老の山並みを望むのどかな地域に「養西診療所」は立つ。瓦屋根の建物が特徴で、院内は広く優しい色合いで統一され、ほっとくつろげる雰囲気が漂う。松原理英院長は、長く三次救急病院の内科・消化器内科に勤務した経験を持ち、病状が悪化してしまう前に患者の身近でできることをしたいとの思いで開業。生活習慣病の患者や急性期治療を終えたがん患者の診療、さらに予防のための生活指導にも注力する。患者負担が少なく精密な検査ができるように生化学検査装置や先進の超音波検査機器など設備の充実にも努めた。アットホームな空間で、「どなたでも気軽に来ていただければ」と控えめにほほ笑む松原院長。わかりやすい言葉を選び丁寧に話す姿勢から、人に対する優しさや真面目さが伝わってきた。
(取材日2025年3月5日)
誰もが来やすい「診療所」になることをめざす
先生のご経歴や開業の経緯について教えてください。

私は鹿児島の種子島という医師不足の地域に生まれ、親の仕事の都合で千葉で育ち、滋賀医科大学を卒業後、大学病院や複数の三次救急病院に勤務しました。消化器系のがんや胃潰瘍、結石、誤嚥性肺炎、膀胱炎などさまざまな症例に対応し、常にオンコール状態で多忙でしたね。病気が悪化した患者さんを多く診て、もっと早い段階で何かできないだろうかと、開業を考えるようになった次第です。開業するなら医師数に恵まれた都心部よりもそこから離れた地域のほうがより患者さんとじっくり向き合えるかなと考え、養老町に開業しました。「クリニック」というより「診療所」のほうが気軽に来ていただきやすいかなと思い「養西診療所」という名前にしました。
先生は消化器内科の中でも肝臓がご専門と伺いました。
大学院では肝臓の遺伝子研究をしていました。その後、肝臓の治療で知られる東京の病院に国内留学し、研鑽を積みました。肝臓の検査は血液検査と超音波検査、尿検査を行います。超音波検査では肝臓の形や硬さ、脂肪の状態がわかります。病気が見つかったときには画像で保存し、評価や経過観察に役立てています。生活習慣病の一つである糖尿病については、悪化すると腎臓が悪くなり透析になるというイメージがありますが、実は糖尿病の患者さんは肝硬変や肝臓がんになって亡くなるケースが少なくないといわれています。糖尿病と肝臓病の合同の研究会があるのですが、糖尿病と肝臓病は切り離せないといわれており、日々の診療でも注意しています。
そもそも消化器内科を専門にされたのはなぜですか?

私自身が、小さい頃よく病院に通っていて消化器内科の先生のお世話になりました。小学生の時の文集には「お医者さんになりたい」と書いたことを、私は忘れましたが親が覚えています(笑)。研修医のローテーションでいろいろな科を回りましたが、私の中ではやっぱり「お医者さん=消化器内科」でしたね。消化器内科は、おなかの中の複数の臓器が対象です。例えば女性の場合、「おなかが痛い」と言って来られても、卵巣や子宮などの病気が隠れていることも考えられるんです。そういうケースも考慮しておなか全体を診るようにしています。女性医師として女性の患者さんにも安心して受診していただけるような診療を心がけています。
患者の話を受け止めその人に合わせて治療を進める
患者さんと接する際に、心がけておられることを教えてください。

訴えを否定せず、受け止めるように心がけています。「お酒がやめられない」とおっしゃるなら、「駄目ですよ」とは言わず、例えば「ビール3本のうち1本はノンアルコールにしましょう」などできる範囲のことをアドバイスするようにしています。内科の病気は長期にわたって通っていただくことも多いため、その方に合わせた治療を続けることが大事です。こちらが最初からあれこれ言うと患者さんは話しづらいし来づらくなってしまいますよね。お話を受け止めて、患者さんから自然に普段の食事や生活、お仕事のことなどいろいろ話していただければ、それが治療や生活指導のヒントになります。私は医師なので説明はしっかりしますが、根は人見知りな部分もあるため(笑)、患者さんやそのご家族からたくさんお話を伺い、治療を考え進めていくスタイルを大切にしています。
生活習慣病の生活指導にも注力されているそうですね。
最初は薬に抵抗がある方は、生活改善から始めるのも選択肢です。基本的に、患者さんが想像しやすいような提案をするようにしています。「適度に運動してください」ではなく、「会社ではエレベーターではなく階段を使いましょう」「降りる1駅前から歩きましょう」というように具体的に。「それなら実際にできそうだ」と思っていただければうれしいですね。食事については管理栄養士が来てくれる日があります。生活改善は生活習慣病治療の基本ですのでぜひ習慣づけていただきたいですし、持病による薬の服用がある方には薬の量を減らせるといった改善にもつながると思っています。
耳鼻咽喉科も標榜されていますね。

養老町を含む岐阜県西濃南部エリアで耳鼻咽喉科を標榜する開業医さんは少ないので便利だと思っていただけているのではないでしょうか。岐阜大学の先生方に来ていただき、耳鼻咽喉科については休診日の水曜を除く平日に加えて土曜にも診療を行います。補聴器の専門の先生や、めまいと嚥下を同時に診られる先生、また頭頸部の腫瘍について詳しい先生などが来てくださるので、地域にあって質の高い診療を追求できることが強みです。耳鼻咽喉科を受診された患者さんが、皮膚や咳のことで内科を受診することもできますし、もちろんその逆も可能です。2科をワンストップで受診できるのは当院の大きな特徴だと思います。
設備にもこだわり。幅広く集まったスタッフも強み
検査装置など設備の充実にもこだわられたと伺いました。

生活習慣病の方や、急性期治療を終えたがん患者さんが多く受診されますので、当院では生化学検査装置を備え、例えば血液検査は当日20分程度で結果が出ます。また、超音波検査機器(エコー)は先進のものを導入しました。画質の高さを重視して機器の選定を行ったため、質の高い検査や診断を提供できると思います。ちなみにこのエコーは甲状腺から乳腺、腹部、前立腺、筋肉まで観察できます。午前と夕方の診察の間、13時半から15時までを超音波検査の外来としており、集中的に検査しています。予約制で診察室も個室のようになりますので安心して受けていただけると思います。また、内科では珍しく、消炎リハビリテーションを希望されるご高齢の方のためにリハビリ機器を備えています。さまざまな立場の患者さんが、安心して通える設備を整えてたいと考え、設備の充実には力を入れました。
スタッフの方々についても教えてください。
ありがたいことにスタッフには恵まれたと本当に感謝しています。看護師長は岐阜県西濃エリアの三次救急を担う大垣市民病院に長く勤務した人で幅広くサポートしてもらっています。耳鼻咽喉科のサポートは大学病院の耳鼻咽喉科に長年勤務した人にお願いしています。複数のクリニック勤務経験がある人もいて、この地域の医療体制について教えてもらうこともあります。診療放射線技師も医療事務も、それぞれ長年の経験がある人が来てくれました。そこに若手のスタッフが加わり、チームワーク良く仕事をしてくれています。経験豊富な保育士も勤務しており、お子さんのいる患者さんにも安心して受診いただける体制を整えています。ちなみに自慢のキッズスペースはその保育士が飾りつけをして、誰もが笑顔になれるような空間にしてくれました。
開業されて1年半、今後の展望をお聞かせください。

どなたでも気軽に、どんな小さなことでも肩肘張らずご相談に来ていただければうれしいです。当院は予約制も採用していますが、急に体調が悪くなった方や予約が苦手な方にも対応できるよう余裕を持たせた時間枠にしています。どうしても待ち時間が生じてしまう場合もあるかもしれませんが、できるだけスムーズに受診いただけるよう心がけています。最初にお話ししたとおり、病院勤務で病気が悪化した患者さんを多く診てきただけに、この地域の患者さんにはそうなる前にできることをしたいと考えています。ですから今後も、病気や重症化の予防、そのための運動や食事など生活指導にも力を入れていきたいですね。地域の病院や介護施設とも連携を密にし、健康イベントへの参加や講演会の開催なども積極的に行っていくことで地域に貢献していきたいと思います。まずは気軽に受診相談してください。