田中 顕道 院長の独自取材記事
くらしケアクリニック城東
(江東区/亀戸駅)
最終更新日:2024/07/24

亀戸駅から徒歩3分。大通りに面して木々が植えられ、ホッとする雰囲気が漂う「くらしケアクリニック城東」は、風邪や生活習慣病などのさまざまな症状に対応する外来診療のほか、通院の難しい患者のための訪問診療も行うクリニックだ。院長の田中顕道(たなか・けんどう)先生は、穏やかな語り口で地域に住まう人たちと真摯に向き合う姿勢が、大きな木をイメージした院内の雰囲気によく似合うドクターだ。総合診療、家庭医療を担う医師として、なんでも相談できるクリニックづくりを進めている。実際、どんな相談で来る患者が多いのか、クリニックの特徴やコンセプトなど、同院についていろいろ話を聞いた。
(取材日2024年7月2日)
年齢や診療科の垣根なく、多様な相談に乗れる診療所に
こちらでは外来診療と訪問診療を行っていますが、クリニックの特徴を教えてください。

どんなことでも相談に乗るというのが当院の特徴です。病気はもちろんのこと、地域に暮らしていく上での困り事に幅広く対応する総合診療を行っています。「この治療が得意」というような特徴はないのですが、臓器別に専門を持つ医師とは異なり、年齢や診療科に制限なくすべての相談に乗れるのが総合診療を行う医師の特徴です。例えば、赤ちゃんが風邪をひいて受診されたお母さんの育児疲れの相談に乗ったり、育児をしながら介護の問題も抱えている場合は、体のことから心のこと、育児、介護、福祉的な制度のことまで包括的に相談に乗ったりすることができるんです。幅広い症状に対応できる総合診療を行う医師が、訪問診療まで行っていることも当院の特徴に挙げられます。
幅広い相談ができるのですね。
私たちの根底にあるのが家庭医療です。日本では聞きなじみがないかもしれませんが、海外ではメジャーな医療です。風邪や生活習慣病などの内科診療はもちろん、整形外科や皮膚科の症状にも対応しますし、地域に起こり得るすべてのことに対応します。幅広い事柄に対して解決に導くためのトレーニングも受けてきています。地域の状況を把握していることも特徴の一つです。この地域にどのような病院があって、どういった治療に対応しているのか、どんな公的な支援があるのかを把握していますので、責任を持って紹介することができます。また、当院には保健師やケアマネジャーの資格を持つ看護師も在籍していますし、介護に携わってきたスタッフもいます。医師だけではなくスタッフにも気軽にご相談ください。
患者さんはどのような方が多いですか?

外来の診療では、若い世代の風邪や健康診断に関わること、ワクチン接種などの予防医療でいらっしゃる方が多いです。糖尿病や高血圧症といった生活習慣病の方も多いですし、ご年配の方はいくつかの病院でもらっている薬を、当院でまとめて診てもらいたいといったご相談や、今は来ることができるが将来的に訪問診療を考えているという方もいます。当院は診られる年齢の区切りがありませんので、赤ちゃんから思春期の子まで小児も一貫して診ることができます。メンタル面の相談は他院では受診を断られるケースもあるようですが、当院ではもちろん対応します。思春期のメンタル面のご相談も多いです。
地域に暮らす患者の生活や人生まで考えて関わっていく
クリニックのコンセプトを教えてください。

“We care your life”というコンセプトを掲げています。“life”には3つの意味を込めていて、1つが医療機関ですので生命、病気を診るということ。2つ目は生活。患者さんの生活背景を大事に考え、訪問診療で実際にご自宅に伺うときには、ご家族の介護負担まで目を配っています。もう一つが人生。乳児期から高齢期まで、人生を歩んでいく中での伴走者になりたいと思っているんです。プライマリケアの原則である、なんでも診るという包括性と、ずっとそばに寄り添っていくという継続性を、“We care your life”というコンセプトに込めました。加えて、サブコンセプトに「あなたのくらしのかかりつけ診療所」とつけました。「かかりつけ診療所」というのは私の造語なのですが、医師だけではなく診療所全体で、患者さんのご家族も含めて、かかりつけになりたいと考えています。
院内も「かかりつけ診療所」らしい温かみのある内装ですね。
ありがとうございます。全体的に大きな木をイメージした内装で、温かみがあって落ち着く空間をめざしました。当院の法人のイメージカラーがグリーンなので、それを踏襲してソファーやアクセントクロスにグリーンを用いています。広さも十分に取り、車いすやベビーカーで診察室に入っていただけますし、トイレなどもスムーズに移動できるようなスペースがあります。フラットかつ広めの空間がこだわりです。
先生は総合診療、家庭医療に関してどのようにご経験を積まれましたか?

私は九州の熊本出身で、大学も熊本大学医学部を卒業し、家庭医療と総合診療を専門とする医師になるためのトレーニングも九州で行いました。家庭医療、総合診療には幅広いトレーニングが必要で、急性期の患者を受け入れる大規模病院の集中治療室や救急科外来での診療を経験しましたし、反対に小さな町のかかりつけ医のもとでも診療経験を積みました。なんでも相談してくださいというクリニックはあると思いますが、私たちは特定の臓器を専門とする医師とは違い、総合的な診療を目標にトレーニングをしてきています。江東区の病院で勤務する中で、診療所というフィールドで質の高い医療を提供でき、かつなんでも相談できる場所があったらという気持ちを持っていました。そういった時に、当法人から声がかかり、私の考えと一致したことから今に至ります。
常に地域のニーズに応える「かかりつけ診療所」
先生は診療の際、どのようなことを心がけていますか?

患者さんのニーズに合わせた対応を心がけています。外来診療では、薬をもらって早く帰りたいという方もいますし、今日は介護のことをじっくり相談したいという方もいますので、それぞれのニーズに合わせて診療の幅を調整しています。患者さんのニーズをくみ取りながら、かかりつけとしてプラスアルファのご提案もしたいと思っています。例えば、「健康診断はきちんと受けていますか?」とお聞きして、受けていなければご案内もしています。最近はとにかく忙しいクリニックが多いので、お話がしやすいような場所であることを心がけています。
訪問診療で特に気を配っていることはありますか?
総合診療、家庭医療を担う医師として患者さんのご家族の介護負担のことまで考えなければならないと思っています。例えば、40代、50代の男性が寝たきりになって、その介護を奥さんと高校生のお子さんが行っていたなら、お子さんは大学受験のときにも介護が近くにあることになります。そうしたとき、お子さんは自分の介護負担を正直に言えないケースも多いんです。その状況に気づき、受験時期にレスパイト入院の手配を地域と調整して行うこともあります。レスパイト入院とは介護をしている方の休息や患者さんご自身のメンテナンスのため、在宅療養中の患者さんに短い期間入院してもらうというものです。医師によっては守備範囲を超えていると判断される方もいるかもしれませんが、総合診療、家庭医療を専門とする私たちからすると必要な対応なのです。ご家族の人生のことまで考えた診療を行っています。
最後に今後の展望、地域の方々へのメッセージをお願いします。

法人としては、総合診療、家庭医療の育成プログラムを立ち上げ、若い医師のための教育実践の場をつくり、プライマリケアを担う医師の育成も考えています。当院としては、これからも地域と対話をしながら、地域のニーズに合わせた診療所の拡充を行っていきます。小児在宅などもご希望があれば、対応するために体制を整え、地域から求められるものに合わせて私たちの機能も変化させていきたいと考えています。「あなたのくらしのかかりつけ診療所」として、なんでも気軽にご相談ください。