田中 顕道 院長の独自取材記事
くらしケアクリニック城東
(江東区/亀戸駅)
最終更新日:2026/06/08
亀戸駅から徒歩3分。大通りに面して木々が植えられ、ほっとする雰囲気が漂う「くらしケアクリニック城東」。風邪や生活習慣病などの一般外来に加え、通院が難しい患者のための訪問診療にも対応するクリニックだ。院長の田中顕道(たなか・けんどう)先生は、総合診療・家庭医療を専門とし、年齢や診療科の垣根を越えて幅広い相談に応じている。地域に暮らす人々の生活や家族背景まで見据えた医療をめざす同院の取り組みについて話を聞いた。
(取材日2026年3月9日)
年齢や診療科の垣根なく、多様な相談に乗れる診療所に
クリニックの特徴を教えてください。

どんなことでも相談に乗るのが当院の特徴です。病気はもちろん、地域で暮らしていく中で生じる困り事にも幅広く対応するプライマリケアを行っています。プライマリケアというのは、年齢や診療科にとらわれず、まず身近なところで幅広い相談を受け止める医療のことです。臓器別に専門を持つ医師とは異なり、さまざまな悩みを受け止められるのが総合診療を担う医師の強みです。例えば、赤ちゃんが風邪で受診された際に保護者の育児疲れの相談を受けることもありますし、育児と介護を同時に抱える方であれば、体のことだけでなく心のこと、福祉制度も含めて一緒に考えることができます。外来だけでなく訪問診療にも対応し、地域の方が必要な時にまず相談できる場所でありたいと思っています。
コンセプトに込めた思いを聞かせてください。
「We care your life」というコンセプトを掲げています。「life」には3つの意味を込めていて、1つが医療機関ですので生命、病気を診ること。2つ目は生活。患者さんの生活背景を大事に考え、訪問診療で実際にご自宅に伺う時には、ご家族の介護負担まで目を配っています。もう一つが人生。乳児期から高齢期まで、人生を歩んでいく中での伴走者になりたいと思っているんです。プライマリケアの原則である、なんでも診るという包括性と、ずっとそばに寄り添っていくという継続性を、「We care your life」というコンセプトに込めました。加えて、サブコンセプトとして「あなたの暮らしのかかりつけ診療所」と掲げています。医師だけではなく診療所全体で、患者さんご本人はもちろん、ご家族も含めて支えていきたいという思いを込めています。
患者さんはどのような方が多いですか。

外来では、若い世代の風邪や健康診断、ワクチン接種などをきっかけに受診される方が多く、日常的な体調不良から予防医療まで幅広く対応しています。併せて、糖尿病や高血圧症といった生活習慣病のご相談も多く、ご高齢の方では、複数の医療機関で処方されている薬をまとめて見てほしいというケースもあります。また、今は通院できているものの、将来的には訪問診療を考えているというご相談もあります。当院では診られる年齢の区切りがありませんので、赤ちゃんから思春期のお子さんまで小児の診療にも対応しています。メンタル面の相談は他院では受診を断られることもあるようですが、当院ではもちろん対応し、思春期のメンタル面のご相談も少なくありません。
総合診療を軸に専門の外来と在宅医療で地域を支える
総合診療に加え、専門的な外来も充実されています。

当院では総合診療を軸にしながら、それぞれの専門性を持つ医師による外来も少しずつ充実させています。近年はリウマチ科の外来を新たに設け、もともと行っていた緩和ケアについても、外来で対応できる枠を広げてきました。ただ、専門の外来を増やすといっても、診療を細かく分けていきたいわけではありません。私たちとしては、総合診療としての幅を保ちながら、地域の中でより多くの困り事に応えられるようにしたいという考えなんです。実際、リウマチなどの専門的な視点が必要な場面でも、院内で相談しながら診療できるようになったことは大きいと感じています。診療所でありながら、総合診療を担う医師と専門性を持つ医師が同じ場で意見を交わせることで、患者さんにとっても安心感につながるのではないでしょうか。これまで大切にしてきた「まず相談を受け止める」という姿勢はそのままに、対応できる幅を少しずつ広げているところです。
訪問診療について教えてください。
当院では外来診療と訪問診療の両方に対応し、通院が難しくなった場合でも、それまで外来で診てきた患者さんをそのまま在宅で支えることを大切にしています。病気の経過だけでなく、ご本人やご家族の生活背景まで理解した上で関わり続けることには大きな意味があると思っています。訪問診療では、がんの患者さんや神経難病、慢性的な疾患を抱える方など、より医療的な配慮が必要なケースにも日常的に関わっていて、以前から緩和ケアにも継続して取り組んできました。外来と訪問の両方で切れ目なく関われることも当院の特徴です。最近は、より重症な患者さんを地域で支えていくため、必要に応じて在宅での輸血にも対応しています。医療面だけでなく、ご家族の負担や暮らしの状況にも丁寧に目を向けながら、地域での生活の場そのものを支えることが、私たちの訪問診療だと考えています。
医療と福祉の連携や、地域での取り組みについて教えてください。

地域の医療や介護の関係者と連携しながら患者さんを支えることは、当院の診療の中でも大切にしている部分です。医療だけでなく生活面の支援も必要になるため、当院ではソーシャルワーカーを複数人配置し、地域からの相談や医療機関からの紹介にも迅速に対応できる体制を整えています。外来から訪問診療へ移る際の手続きや、生活面、介護面の相談にも伴走するように関わり、患者さんやご家族が安心して在宅療養を続けられるよう支えています。また、地域の方々との関わりも大切にしています。行政と連携した子育て相談会や健康講話などを行うほか、クリニックのスペースを地域の方に開放することもあります。病気になった時だけ訪れる場所ではなく、地域の方が気軽に立ち寄れる場でありたいと思っています。人とのつながりが心身の健康に影響することもありますので、そうした交流の場づくりにも取り組んでいます。
常に地域のニーズに応える「かかりつけ診療所」
先生は診療の際、どのようなことを心がけていますか?

患者さんのニーズに合わせた対応です。外来診療では、薬をもらって早く帰りたいという方もいますし、今日は介護のことをじっくり相談したいという方もいますので、それぞれのニーズに合わせて診療の幅を調整しています。患者さんのニーズをくみ取りながら、かかりつけとしてプラスアルファのご提案もしたいと思っています。例えば、「健康診断はきちんと受けていますか?」とお聞きして、受けていなければご案内もしています。体のことだけでなく生活のことも含めて、何かあったらまず相談してみようと思ってもらえるような場所でありたいですね。最近はとにかく忙しいクリニックが多いので、お話がしやすいような場所であることを心がけています。
先生は総合診療、家庭医療に関してどのようにご経験を積まれましたか?
私は熊本大学医学部を卒業後、九州で家庭医療と総合診療の研鑽を積みました。集中治療室や救急科外来など急性期医療の現場で経験を重ねる一方、小さな町のかかりつけ医のもとでも診療に携わり、幅広い症状や生活背景に向き合う力を養ってきました。なんでも相談できる診療所は少なくありませんが、私たちは特定の臓器だけでなく、患者さんを総合的に診るためのトレーニングを受けてきた点に特徴があります。江東区の病院で勤務する中で、診療所という場で質の高い医療を提供しながら、地域の方が気軽に相談できる場所をつくりたいと考えるようになりました。そうした時に法人から声がかかり、自分の思いと重なったことから今に至っています。
地域の方々へのメッセージをお願いします。

私が理想とするプライマリケアは、年齢や病気の種類に関わらず、地域で暮らす方の困り事をまず受け止め、必要に応じて医療や支援につなげていく医療です。病気だけでなく、その方の生活やご家族の状況まで含めて関わり続けることが大事だと思っています。当院でも、総合診療を軸に、リウマチ科、緩和ケアなどの専門性を持つ外来を充実させ、外来から訪問診療へ切れ目なくつなぐ体制を整えてきました。ソーシャルワーカーを含め、診療所全体で患者さんやご家族を支えながら、「あなたのくらしのかかりつけ診療所」として、地域に必要とされる機能を少しずつ広げていきたいと思っています。

