子どもだけの病気ではない
大人でも発症する食物アレルギー
中村橋いとう内科クリニック
(練馬区/中村橋駅)
最終更新日:2023/10/05
- 保険診療
特定の食物を食べた後に、じんましんや目の充血、かゆみ、下痢や嘔吐などのアレルギー症状が現れる、食物アレルギー。子どもの病気というイメージが強いが、実は大人になってから発症する人も少なくないという。しかし、小児の場合は小児科の医師が診療することが多いのに対して、大人の食物アレルギーは診療に慣れている医師が少ないのが現状だ。「中村橋いとう内科クリニック」の伊藤潤院長は、日本アレルギー学会アレルギー専門医であり、大人の食物アレルギーの診療経験が豊富なドクター。専門家の診断を求めて遠方から来院する患者もいるという。そんな伊藤先生に、大人の食物アレルギーの特徴や検査方法について、詳しく教えてもらった。
(取材日2023年9月15日)
目次
詳細な問診と検査でアレルギーの原因食物を見極め、適切に回避する方法を指導
- Q食物アレルギーにはどのような症状がありますか。
-
A
食物アレルギーは、特定の食物を食べた後にアレルギー症状が現れる疾患です。最も多い症状はじんましんや発赤、かゆみなどの皮膚症状で、そのほか目・鼻・口の粘膜症状、呼吸器症状、消化器症状、循環器症状、神経症状など多岐にわたります。また、アレルギー症状が複数の臓器に出現した状態をアナフィラキシーといい、中でも血圧低下や意識障害を来すような場合をアナフィラキシーショックと呼びます。最初は軽い症状であっても回数を繰り返すうちにひどくなっていくこともあります。たびたび症状が出現している場合や1度でも強い症状が出た場合は医療機関を受診して、アレルギー症状の原因(アレルゲン)を明らかにすることをお勧めします。
- Q大人になって発症する可能性もあるのですか。
-
A
はい。遺伝的に発症しやすい素因がある方は生後すぐに発症することもありますし、遺伝的に発症しやすい素因がなくてもアレルゲンに曝露され続けることで大人になってから発症することもあります。また、子どもの場合、食べた物がそのままアレルゲンとなっていることが多いのですが、大人の場合はもう少し複雑です。例えばもともと花粉症の方が、花粉とよく似た成分を含む野菜や果物を食べてアレルギー症状が起こるなど、食べた物とアレルゲンが一致しないこともよくあります。ですから、問診では食事の内容だけでなく職業などの生活背景までお聞きして、アレルゲンを推察していきます。
- Qどのような検査が行われますか?
-
A
検査には血液検査とプリックテストの主に2つがあります。血液検査はアレルギー反応を引き起こすIgE抗体の量を測定します。一度の採血で複数のアレルゲンを調べられるキットもありますが、検査項目が限られているため、結果が陰性でもアレルギーがないとは言い切れません。一方、プリックテストは専用の針で皮膚に小さな傷をつけ、原因が疑われる食物のアレルゲンエキスを染み込ませる方法で、15分後に腫れが出れば陽性と判定されます。しかし、中には食物を食べただけでは症状は出ず、食後に運動したり、解熱鎮痛剤を服用したりすると症状が起こるということもあり、検査結果だけでなく問診の内容も踏まえ総合的に判断する必要があります。
- Q大人の食物アレルギーを診てくれるドクターは少ない印象です。
-
A
子どもの場合は小児科の医師が診療することが多いのですが、大人の場合は内科のほか、症状が出た部位に応じて眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科で診療されます。それぞれの診療科の医師が日本アレルギー学会アレルギー専門医の資格を取得できますが、専門医の資格を持っていても大人の食物アレルギー診療を行っている医師は少ないのが実情です。その理由としては、症状が多岐にわたるため、全身をしっかり診ることのできる知識や経験を持つ医師が限られていることや、アレルゲンを特定するための問診に時間がかかる、薬の処方よりも食事指導やアレルゲンの回避指導が中心など、診療の採算性が低いことなどが挙げられると思います。
- Q治療内容や受診時の注意点を教えてください。
-
A
食物アレルギーの診療で最も大切なのは問診です。先ほどもお話ししたとおり、大人の食物アレルギーの場合は食べた物と原因が直結しないことが多く、いつ何を食べて、その後どのぐらいしてから、どんな症状が出たのかを詳細に確認していく必要があります。患者さんの記憶が曖昧だとアレルゲンにたどり着くまでに時間がかかるため、事前に食べた物をメモしておくと良いでしょう。治療としては、アレルゲンとなる食物を避けることが基本的な対策となります。ただし、過剰に避ける必要はありません。「この量までなら大丈夫」など必要最低限の回避方法や、誤食により症状が出てしまったときの対処法を指導します。