佐藤 直子 院長の独自取材記事
なみファミリークリニック
(品川区/旗の台駅)
最終更新日:2023/07/14
旗の台駅から徒歩1分という好アクセスの「なみファミリークリニック」。2023年4月に開業したばかりの同院の佐藤直子院長は、カルマン症候群・思春期遅発症や思春期早発症など遺伝子異常に関わる疾患の研究・臨床に20年以上携わっているエキスパートだ。「思春期遅発症などは、見逃されるとお子さんの学校生活、その後の社会活動などにも影を落としかねません。そういった治療の“最初の相談のきっかけ”であり、成長していくお子さんの相談の場所になれればと考えて開業しました。もちろんかかりつけ医として地域の皆さんの健康を守る役割も果たしていくつもりです」と話す。患者と不安や悩みを共有しながらともに歩んでいく、そんな深い愛情を言葉や表情からのぞかせる院長に成長・発達関連の疾患、治療で心がけていることなどを詳しく聞いた。
(取材日2023年5月9日)
低身長・思春期遅発症などの専門的な治療にも対応
小児科、内科のほか、低身長や思春期早発症・思春期遅発症などの専門的な治療にも対応されているとか。
私は約20年以上遺伝子異常による先天性疾患の研究と臨床に携わる経験をし、現在も研究を続けながら、一般診療も行う医師として診療もしています。かかりつけ医として地域の皆さんの日常的な体調不良を診ていくのと同時に、これまでの専門分野での経験を生かし、低身長・思春期遅発症・思春期早発症のご相談、もしくはそれらの疾患があるかもしれないと考えている方の最初の「相談のきっかけ」になれる場所として、当院を開業しました。開業してまだ間もないのですが、すでにいくつかのご相談もいただいています。またクリニック名を「ファミリークリニック」としたのは、地域の患者さんご家族一緒に対応していきたいという思い、そして、これまでに低身長や先天性疾患などで治療を受けて成長し、大人になった方も通える場所でありたい、という思いを込めています。
大人になっても通えるのですね。
先天性疾患の患者さんは、小児期には専門的な外来を設けている大学病院などに通院し、年齢が上がると年齢相応の治療を受けられるように、疾患によって女性であれば小児科から婦人科、男性であれば泌尿器科などにバトンタッチしていくのが今の医療体制です。ただそうすると先生が変わっていくので、「専門施設での矯正治療のための紹介状が欲しい」「体が小さいので学校でどうサポートしてもらえばいいか、力を貸してほしい」といった生活に密着したご相談、また進学・結婚・出産などのライフイベントに関わるプライベートなご相談が出てきた場合に、忙しい専門家の先生に気軽にお話しできないこともあるようです。そういった方が年齢を重ねても相談できる場所が必要なのでは、と考えました。
地域の皆さんの日常的なご相談、そして専門的な治療が必要な方、どちらにも門戸を開いているのですね。
日常的なご相談の中で時に疾患が見つかるケースをしばしば経験します。思春期の発達のペースは個人差があり、日常の中で気づかれにくく、風邪の診察時に偶発的に医師が気づく場合もあります。女児の思春期早発症では小学校低学年で胸のふくらみが見られたり、月経が来たりすることもあります。思春期遅発症はその逆で、男児では思春期になっても精巣が大きくならず、声変わりやひげが見られないなど、中性的な見た目であるといった症状が見られます。いずれも検査を受けた上で、その方の原因に応じた適切な治療が必要な疾患です。場合によっては疾患が学校生活に影を落とし、お子さんの心の傷ともなり得るため、親御さんと学校がしっかりとお子さんの成長に目を配ることが大切です。生活の中で「もしかしたら」と思うことがあれば、ぜひ相談に来て不安を打ち明けてほしいと思います。
対等な目線で接し、子どもの治療に対する自発性を促す
先生が普段の診察で心がけていることを教えてください。
どの診察にも共通していますが、まずは話しやすい雰囲気をつくることです。初めて来院される時はどの患者さんも緊張しておられますから、スタッフも私も、できるだけ話しやすい、やわらかい雰囲気になるよう心がけています。思春期遅発症などの専門的な治療の場合も通常の診療でも患者さんご本人、そしてご家族それぞれにしっかり説明したいと思っています。そのため、通常の診察中にご相談いただいた場合は要点を説明し、今までの成長の記録や検査記録などをあらかじめご用意いただき、「専門のお話をする時間」を改めて枠を設けるようにしています。思春期の女の子だと「男性の先生に相談しづらい」というケースもあるので、女性医師を探して当院へたどりつく方もおられますよ。
思春期遅発症などの専門的な治療で心がけていることはありますか?
治療を受けるお子さんだけが生活で我慢することがないよう、ご家族も一緒に治療に向き合い、患者さんが自分の意思で治療に関わっていけるようにすることがとても大切です。当初から将来を見据えて服薬や注射の管理もお子さん自身がしていけるようにサポートしていくことを心がけています。例えば思春期遅発症の場合、性腺機能低下症という、不妊の病因となる疾患である可能性もあります。そのため、確定診断後に自分の将来のために治療が必要であることを自ら考え、理解し、治療に取り組めるようにお子さんに対しても診察内容や治療についてご家族と一緒にご説明しています。
お子さんとも対等な立場で対話をされるのですね。
親御さんが過度に心配して「心に傷を持たないように先天性の病気だと知らせないで済まないか」と言われた経験もあるのですが、ご両親と十分に話し合いをしてご承諾を得た上で、お子さん本人にきちんと疾患と治療について説明したところ、「自分も年相応に成長したいんだ」と強い意志を持って自ら治療を望むケースもありました。このように、ご本人に疾患を理解いただくことで、身体的にだけでなく、精神的にも大人になり、頼もしく成長した姿を目の当たりにするとたいへんうれしく思い、やりがいを感じました。
黎明期から関わってきた研究を日々の診療にも生かす
医学の道に進まれたきっかけは何だったのですか?
医学を学ぶ者が多い家系で、医学が生活の一部のような、医師は非常に身近な職業でした。とはいえほかの道も考えていました。高校時代の恩師が「ドクターの資格を持ちながら医学研究を行う」方で、研究の面白さや医師以外の道があることも知りました。その中でも医学部を選んだきっかけは家族が目の前で倒れたことです。自分以外の家族は医師で動けていたのに高校生だった私はなすすべもありませんでした。その経験から医学の道に進もうと改めて決意しました。小児科を選んだのは、外来をする母への憧れや小さい頃から子どものお世話をするのが好きだったこともありますが、大学1年生の実習でお世話になった小児科の教授が患者さんへ優しく穏やかに接し、臨床と研究を大切にしていらっしゃる姿勢に感銘を受けたことが大きなきっかけだったと感謝しています。
そして思春期遅発症などにつながる研究にも多く関わってこられたと。
大学卒業後に勤めた東京都立清瀬小児病院(現・東京都立小児総合医療センター)がとても風通しの良い環境で、小児科の先生たちも臨床・研究どちらも深く経験され、「研究をすることで臨床の見方が変わってくる」と夜遅くまでカンファレンスをする環境に身を置く経験をさせてもらいました。その後、国立小児医療センター研究所(現・国立成育医療研究センター)で遺伝子研究の立ち上げメンバーとして在籍させていただき、カルマン症候群(Kallmann症候群)という先天性疾患の、日本での研究の黎明期に関わることができました。その後米国のエモリー大学への留学・成育医療研究センターでの研究を経て、現在も臨床・研究を続け、その知識を生かしながら日々の外来診療にあたっています。
今度の展望や読者へのメッセージをお願いします。
小児科を中心としたご家族で一緒に受診できるファミリークリニックとして開業いたしました。一般的な疾患だけでなく、成長や思春期の発来についてのご相談も受けつけています。ご家族の「うちの子に成長や思春期の発来に異常があるのではないか?」と不安に思うことがありましたら、当院にお気軽にご相談ください。もちろん地域のかかりつけ小児科・スキンケアのご相談、内科の役目もしっかりと果たしていきたいと考えています。患者さんのニーズに耳を傾けながら、皆さんの不安や日々のお悩みに耳を傾け、ともにより良い道を探していければうれしいです。どうぞお気軽にご来院くださいね。