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水藤 晶子 院長の独自取材記事

水藤乳腺甲状腺クリニック

(善通寺市/金蔵寺駅)

最終更新日:2023/05/30

水藤晶子院長 水藤乳腺甲状腺クリニック main

JR土讃線・金蔵寺駅から西方向へ。善通寺市弘田町の田園風景の中にたたずむ「水藤乳腺甲状腺クリニック」は、木目調の外観が周囲の景観に調和し、訪れる人を温かく出迎える。院内のインテリアにも随所に木材があしらわれ、大きなガラス窓からは五岳山を望む。同クリニックの開業は、2023年2月。多度津町で70年以上の歴史を持つ、多度津三宅病院の乳腺甲状腺外科部門が独立し、当地へ移転した。院長の水藤晶子(みずとう・あきこ)先生は、乳腺外科・甲状腺外科を専門として豊富な経験を積んできたベテラン医師。明るくエネルギッシュな人柄で、患者からの人望も厚い。「共に歩み、支える」を理念として、患者一人ひとりと向き合う水藤院長に診療への想いを聞いた。

(取材日2023年4月17日)

スタッフ全員がプロとして、質の高い医療を提供

先生のご経歴と、開業の経緯についてお聞かせください。

水藤晶子院長 水藤乳腺甲状腺クリニック1

2004年に川崎医科大学を卒業後、同大学の乳腺甲状腺外科で9年ほど臨床経験を積みました。その後は香川県の実家に戻って、祖父が開業し、現在は父が院長を務める「多度津三宅病院」で乳腺甲状腺を中心に診療を担当。多度津三宅病院にも9年ほど勤めていましたが、父も、後継者の弟も消化器外科が専門でしたので、「自分をはじめ、スタッフ全員がプロとして乳腺・甲状腺疾患の知識や技術を磨き、質の高い医療を提供したい」と考えて新規開業を決意しました。開業場所は、以前から交流のあった糖尿病内科の先生に「隣の土地が空いているからどうですか」と紹介していただいた場所です。その先生からは、甲状腺疾患の疑いがある患者さんを何度もご紹介いただいていました。「内科と外科が近くにあれば、地域の患者さんの利便性にも貢献できる」と思い、この場所に開業することを決めたんです。

そもそも、乳腺・甲状腺外科を専門にしようと思われた理由は?

子どもの頃から、体の悪いところを取り除いて治す外科医に憧れを抱いていました。自分で病気を治す手段を持てるところに、魅力を感じていたんですね。外科の中でも、まず関心を持ったのは乳腺外科です。自分で診断から手術、抗がん剤治療、その後の経過観察、再発後の治療、緩和ケア、看取りまで携われるところに、私は大きなやりがいを感じました。同じように、甲状腺疾患も一生付き合っていくことの多い病気です。最も多いのは橋本病やバセドウ病ですが、どちらも長期間にわたっての通院が必要です。それぞれの患者さんの人生に寄り添って、支えていくところに使命感を感じています。

クリニックの設計でこだわったところを伺いたいです。

水藤晶子院長 水藤乳腺甲状腺クリニック2

院内の設計において、まず工夫したのは広さです。救急搬送にも対応できるよう、入り口から待合室、廊下までストレッチャーが通れる幅を確保しました。優しい色合いの化学療法室と、面談室もこだわりのポイントです。乳がんの患者さんにとっては、抗がん剤治療をしている時期が一番つらいんですよね。精神的にも、体力的にもきつい。そんな時期をできるだけリラックスして過ごしてほしいと考えて、院内で一番眺めのいい場所に化学療法室を設けました。その向かい側には、患者さんとじっくりお話ができる面談室を用意しています。遺伝性のがんの話、再発の話、人生最期の過ごし方の話をすることもありますから、絶対にプライバシーを守る空間が必要だと考えたんです。涙をこぼしている患者さんは、落ち着くまで、看護師と一緒にこのお部屋で過ごしていただきます。放っておくことなんてできません。

悩みを抱えた患者一人ひとりと向き合う

患者さんは、どのような方が多いのでしょうか?

水藤晶子院長 水藤乳腺甲状腺クリニック3

多度津三宅病院時代の患者さんに加えて、善通寺市や丸亀市、観音寺市などにお住まいの新しく来られる患者さんも多いですね。年齢層は非常に幅広く、下は20代から、上は90代の方まで。9割以上が女性で、胸に痛みやしこりを感じて来られる方が中心となります。それから、これは開業して実感したことですが、首にしこりがあるなど、甲状腺のお悩みを抱える方がとても多い。甲状腺疾患はもともと有病率が高い病気ですが、今まで内科に通われていた方が、近くに専門のクリニックができたことで受診してくださっているようです。また数は限られますが、男性の患者さんも、甲状腺や胸の違和感などで相談に来られています。

乳がん検診に力を入れているとお聞きしました。

乳がんは早期に発見できれば完治が見込める疾患ですから、治る段階の人を一人でも多く見つけていくためには、定期的な検診の啓発が重要だと考えています。主な検査方法は、マンモグラフィ検査(乳房エックス線検査)と超音波検査です。マンモグラフィは乳腺の石灰化を見つけることが得意ですが、小さなしこりを見つけることは難しく、逆に超音波は小さなしこりを見つけることは得意ですが、石灰化を見つけることが難しい。それぞれに得意・不得意があるんですね。市町村の検診では、40歳以上の女性を対象にマンモグラフィ検査を推奨しています。しかし当院では年齢に関わらず、マンモグラフィ検査と超音波検査を適切に組み合わせることで、乳がんの早期発見・早期治療をめざしています。

診療をする上で、心がけていることは何でしょう?

水藤晶子院長 水藤乳腺甲状腺クリニック4

一番大切にしているのは、患者さんのお話をちゃんと聞くことです。できるだけ患者さんの声をお聞きして、患者さんが納得するまでお話しするよう心がけています。そうでなければ、「なぜ病院に通う必要があるんだろう」と疑問が湧いて、患者さんご本人が「治療をしなければいけない」と意識することができません。医師と患者さんがお互いに病気と向き合っていくためにも、現在の状態から今後の経過、治療の内容まで丁寧にご説明するとともに、これからどんな治療法を選ぶのか、どうやって病気と付き合っていくのかを一緒に話し合うようにしています。特に甲状腺疾患の患者さんの場合は、症状の緩和によって治療をやめてしまうケースが多い。でも、そうならないように、最初に「一生病気と付き合っていく必要がある」と理解してもらうことを重視しています。

ともに悩み、泣き、笑い、人生を支える

休日はどんなふうに過ごされていますか?

水藤晶子院長 水藤乳腺甲状腺クリニック5

登山をしています。時間があれば、北アルプスまで車を走らせるくらい(笑)。登山を好きになったきっかけは、日本最後の秘境といわれる、北アルプスの雲ノ平をたまたまテレビで見たことですね。その景色の美しさに感動して、いきなり2泊3日で北アルプスに登ってしまいました。それからはもう、すっかり登山にはまっています。仕事のことか、山のことしか考えていないかもしれません。この仕事をしていれば、つらいことはたくさんあります。でも山に登っている間だけは、それを忘れられるんです。だから私は山に登ることで、明日へ進むエネルギーをもらっています。

忘れられない患者さんも、いらっしゃるのですか。

医師になったばかりの頃、最初に看取った乳がん患者さんのことは、忘れることができません。その方はまだ若い方でしたが、診断時にすでにほかの臓器への転移があり、1年もしないうちに亡くなられたんです。入院中、私がその方のためにできることは「話を聞くことしかない」と思い、時間があれば病室を訪ねて話をするようにしていました。彼女はその時間をとても喜んで、まだ経験も少ない私に、「先生がいてくれて良かった」といつも言ってくれました。思い返せば、その患者さんに出会ったから、乳腺外科に進みたいと思ったのかもしれません。再発した乳がんは完治を望むことができませんが、最期までその方らしく生きていけるよう、できる限り力になりたいと、私はいつも考えています。

その時の想いが、診療理念につながっていると。

水藤晶子院長 水藤乳腺甲状腺クリニック6

そうですね。乳がんの方と一緒に悩み、泣き、笑い、ともに歩んでいきたい。複雑な甲状腺の病気を抱える方に寄り添い、支えていきたい。そんな想いを込めて、当院の診療理念を「共に歩み、支える」と定めました。一度乳がんになられた方は、「がん患者」として生きていく時間がとても長いんです。手術や抗がん剤治療が一通り終わった後も、ずっと病院に通って経過を見ていく必要があります。その間、患者さんは再発の不安におびえたり、薬の副作用に悩んだりしながら暮らしていくわけです。だからこそ、当院は親しみやすくアットホームな雰囲気で患者さんを迎えたい。これからもスタッフ一丸となって、患者さんお一人お一人と、そのすべての人生と向き合っていくことを心に誓っています。

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