袋 秀平 院長の独自取材記事
ふくろ皮膚科クリニック
(横浜市港南区/港南台駅)
最終更新日:2025/05/23

近隣に皮膚科クリニックが少ないことから、住民のニーズに応える形で「ふくろ皮膚科クリニック」を開業した袋秀平院長。もともと外科、内科の両面からアプローチでき、病理学的な面もあるところに惹かれて、皮膚科に進んだという。常に研鑽を積み「専門の診療科だからこそ持つ新しい知識、豊かな診療経験から、納得いただける説明や治療ができると思います」と幅広い症状に対応する。穏やかな語り口の中に、皮膚科医としての確かな信念が感じられるドクターだ。院内での診療に加え、高齢者施設や患者宅への往診にも取り組み、在宅医療のネットワークの中でも重要な役割を担う。皮膚科医の立場から地域医療に貢献する袋院長に、診療の特徴や医師としての思いを聞いた。
(取材日2024年12月19日)
体の表面のすべての症状に対応する皮膚科
まず、こちらの成り立ちや診療内容について教えてください。

近隣に皮膚科クリニックが少なく、地域の方も困っておられると聞き、1999年に開業しました。港南台は、昔からの団地や住宅地に加え、新しいマンションも多いエリアで、小さいお子さんから、高齢の方まで幅広い年代の患者さんが来てくださいます。症状として多いのは、アトピー性皮膚炎ですね。最近、治療の選択肢も増えていることから、当院でも診療に力を入れています。多汗症の外用薬による治療の相談も増えています。帯状疱疹の患者さんも多いですし、夏にはトコジラミによる症状も目立ちました。また足のトラブルにも対応しており、フットケアに詳しいスタッフと連携して、たこやうおのめ、爪の処置を行っています。靴との相性が問題になりやすいので、立体的な計測を行いそれぞれの患者さんに合わせたインソールも作製しています。
幅広い症状やトラブルに対応しているのですね。
そうですね。湿疹やかぶれといった典型的な皮膚の症状だけでなく、髪の毛や爪、口の中も皮膚科の領域です。目に見える部位に違和感がある時は、まず皮膚科を受診していただきたいですね。お子さんがアトピー性皮膚炎になった時に小児科か皮膚科か迷うと聞きますが、私は年齢に関わりなく、皮膚科の受診をお勧めしています。というのも、最近、皮膚科では薬剤の進歩が著しいのです。アトピー性皮膚炎においても効果がかなり期待できる注射や、ステロイド剤だけでなく今までなかったような系列の外用薬が登場しています。ニキビや、高齢の方に多い足の爪の水虫、あるいは尋常性乾癬や掌蹠膿疱症、化膿性汗腺炎といった治りにくい病気にも効果が望める薬剤を使えるようになっています。薬剤をはじめ、専門の診療科だからこそ持つ新しい知識、豊富な診療経験をもとにした適切な治療を受けられるメリットは大きいと思います。
治療方針について聞かせてください。

患者さんの話をよく聞くことを大切にしています。特に初診の方には、どのような時に症状が起きるか、今までどのような時に症状が起きてきたか、今までどんな治療をしてきたか、といったこれまでの経緯を詳しくお聞きします。そして、私からも病気や治療について、できる限り詳しい情報をお伝えしています。専門的な診断に基づいて、どんな病気なのか、何が原因で起きたのか、どう治療していくかを理解していただけるように心がけています。もちろん症状の緩和も大切ですが、患者さんに納得してもらった上で、安心して治療に取り組んでいただくことも重要だと考えているのです。
在宅医療にも対応し、床ずれやフットケアの治療を行う
先生は在宅医療にも取り組んでいるとか。

通院が難しい高齢の方を中心にご自宅や施設に往診しています。在宅医療を手がける皮膚科の医師はまだ少ないので、依頼が集中しているところはありますね。私の場合、もともと妻が看護師で、介護保険が始まる前から訪問看護に取り組んでいたので、開業したら在宅医療にも対応するのが当然という認識でした。また開業時がちょうど介護保険制度がスタートした頃で、訪問看護も盛んになり、ニーズも高まってきたのですね。訪問診療では、どういった病気で在宅医療を受けられているのか、皮膚科では何を診るのかなど、主治医やケアマネジャー、看護師の皆さんに詳しくヒアリングして患者さん一人ひとりにきめ細かい対応を心がけています。
どのような症状の患者さんが多いのですか?
褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれが多いですね。寝たきりの方は、少しケアを怠ると床ずれになりやすいのです。原因となる圧力の除去、血行を良くして栄養状態を整えること、適切なスキンケアなどを行えば改善は見込めます。しかし、ご家族だけで判断して実行するのは難しいので、皮膚科医が在宅医療に参加して治療や指導を行い、ケアマネジャーとも相談して介護保険制度のサービスを利用することも必要です。床ずれのつらさが減ることでご本人の生活の質が向上し、周囲の方の負担も減ることが期待できます。床ずれについて介護に関わる専門職の認識は高まってきたと思いますが、さらに医師や一般の方への啓発が必要だと感じています。
他にはどのような症状があるのでしょうか。

高齢の方や持病のある方のフットケアも大きな課題です。例えば糖尿病をお持ちで、足先の感覚がなくなっているような場合、ご本人も足の痛みや、血流障害などはわからないのです。そこで、ご家族に「毎日足を見て触って、確認してください」とお願いしています。足の爪を切る場合も、ご本人は感覚がないので傷つけてもわからないのです。傷は感染症のもとにもなるので注意が必要です。また、巻き爪などで、爪が厚くなり介護者がうまく爪切りができないというケースも目立ちます。いずれも、医師会や専門職との連携を深めて取り組んでいきたいと思っています。
新しい治療や、在宅医療の啓発にも積極的に取り組む
先生のプライベートな面も少し聞かせてください。

医師を志したのは、母の実家や親類に医師が多く、自分も「人を助けられる仕事に就きたい」と思ったことから。皮膚科は外科、内科の両面からアプローチでき、顕微鏡で組織を見る病理学的な面も持ち合わせている点が興味深くて選びました。当初は開業を意識していなかったのですが、勤務医時代、キャリアを積むほど仕事が忙しくなり、自分が考えていた「患者さんとじっくりお付き合いして、納得していただく医療」の実現が難しくなってきたので開業に至りました。趣味は音楽で、大学時代のコーラス部の定期演奏会やOB会への参加、神奈川県皮膚科医会の40周年記念イベントではバンド演奏もしました。一方で、在宅医療を手がける皮膚科医が少ないので、医師会などでの役割が増え、講演や会議、執筆の依頼も多く、結果的に仕事が趣味になっています。働き方改革の時代に良くないなとは思っているのですが(笑)。
今後の展望について聞かせてください。
床ずれや足の問題をはじめ、在宅医療での皮膚科疾患に対する啓発活動に力を入れたいですね。新型コロナウイルス感染症の流行により中断していた、施設の職員や訪問看護師を対象とした床ずれやフットケアに関する勉強会や研修会も少しずつ再開しているところです。一般の診療では、ダニによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や、薬剤耐性を持つと考えられる頭ジラミ、海外から持ち込まれるトコジラミなどに注目しています。新たに効果が期待できる薬剤ができる一方で、こうした新しい問題も次々と起こってくるので、病気や治療に関する新しい情報や知識を積極的に得て、適切な治療を提供していきたいですね。また、脱毛についても、医療脱毛を安全に受けたいという方が多く、皮膚のトラブルを予防するための脱毛や介護に備えた脱毛などのニーズも高まっているので、新しいレーザー機器も導入しました。皮膚科の専門性を生かして対応したいと思っています。
読者へのメッセージをお願いします。

皮膚の症状は、内臓の病気や薬と関係していることもあり、さまざまな病気の診断の入り口となる可能性があります。最近は、ネットで皮膚の症状や治療法についてもいろいろな情報がありますが、中には信用できないような情報もありますし、自己判断で市販薬を使うとかえって悪くなることも少なくありません。やはり、体の表面のことに関しては、まず皮膚科を受診していただきたいです。また、当院では、寝たきりの方の床ずれなどの症状にも対応していますし、フットケアにも力を入れています。糖尿病患者さんの足潰瘍、壊疽など足病変の治療も行います。介護の中で足のケアまでは行き届かないことも多いので、ご家族の方にもフットケアの重要性を知っていただきたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは医療脱毛/両脇8800円~