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田口 博基 院長の独自取材記事

たぐち脳神経クリニック

(横浜市港南区/港南台駅)

最終更新日:2021/10/12

田口博基院長 たぐち脳神経クリニック main

港南台駅から徒歩約15分、「たぐち脳神経クリニック」には、洋梨が2つ並んだロゴが掲げられている。「妻の名前にちなんで梨をモチーフにしました」と話すのは田口博基院長。金沢大学大学院を修了後、石川県内の総合病院、横浜栄共済病院などで研鑽を積み、脳神経外科の医師として脳外科、脊椎、血管内の各手術に従事してきた。現在はクリニックでの外来診療のほか、地域の脳卒中医療連携にも注力している。脳神経疾患の治療とリハビリを強化したいと話すその穏やかな語り口には、「地域住民の命を守りたい」という信念と熱い思いがあふれていた。

(取材日2014年11月20日・更新日2017年11月28日)

充実の設備で一次・二次救急にも対応

2014年に新規開院されたそうですね。

田口博基院長 たぐち脳神経クリニック1

2004年に港南台4丁目で「タグチクリニック」を開業して10年の節目に、港南台6丁目に移転しました。院名も改め、移転というより「バージョンアップ」ですね。以前は整形外科も掲げていましたが、今は脳神経外科とリハビリテーション科に絞って専門性を打ち出しています。2016年には予約制で、理学療法士による脳卒中後遺症へのリハビリを本格稼働しました。また検査機器には従来のMRIより磁場強度が高い1.5テスラ超電導MRI装置を導入し、より短時間で詳細な検査を実現しました。さらに新型CTを導入し、小児の頭部外傷にも対応しています。お子さんはどうしても動いてしまうので、撮影に10〜20分を要するMRI検査は難しいのですが、CTなら数秒、数分で撮影でき、迅速に頭蓋内出血の有無を確認、次の治療につなげられます。最近は頸動脈の超音波検査が増え、動脈硬化に関する有益な情報が多く得られていますね 。

小児の頭部外傷は、急性期病院で診る印象があります。

田口博基院長 たぐち脳神経クリニック2

横浜市南部にはいくつか急性期病院があり、多くの命を救われていますが、例えば、夕方5時以降は小児科医がいない、小児科医はいても脳神経外科の当直医がいないなど、人員にも限界があり、無理をすると地域医療の質の低下につながりかねません。そこで「軽いケガなら開業医へ」となるわけですが、頭部外傷を診られるクリニックはそう多くないんです。それにお子さんがケガをしたのに診てもらえず、必死の思いで電話をかけてくるお母さんに「うちでは診察できない」とお断りするのは、私たちにとっても大きなストレス。ならば当院でCTを設置して一次・二次救急に対応すれば、病院の助けにもなるし、何より地域のお子さんや高齢者を守ることができると考えました。おまけに私たちのストレスも軽減されて、患者・病院の専門医・かかりつけ医の3者にとって大きなメリットになると期待しています。

地域の「脳卒中ネットワーク」構築をめざして

脳神経外科の診療内容を教えてください。

田口博基院長 たぐち脳神経クリニック3

脳と脊髄までの神経に関することを守備範囲とします。具体的には脳卒中や脳腫瘍、けいれん発作のほか、認知症の早期診断、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった脊椎変性疾患など、幅広く診察しています。末梢神経も神経なので、手足のしびれに関連してパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経内科的患者さんもいらっしゃいます。また私は脳神経外科の専門家であり、頭痛の専門家でもあるので、難治性の片頭痛や、薬の飲み過ぎが原因の薬物乱用頭痛の患者さんも多いですね。お子さんの頭痛もありますし、片頭痛は若い女性にも多いので、幅広い年齢層の方が来院されています。

特に脳卒中の治療には力を入れているそうですね。

はい。脳卒中は脳の血管の病気で、血管が詰まる「脳梗塞」、血管が破れる「脳出血」「クモ膜下出血」など数種類あります。手足のしびれ、めまい、ろれつが回らないといった症状のほか、顔面や体の片側まひや、急に倒れて意識を失うこともあり、日本人の死因上位となっています。一命を取りとめても寝たきりや言語障害、運動障害など後遺症をもたらす可能性が高く、患者さんだけでなくご家族の運命も大きく変えてしまう疾患です。だから、私自身も後悔しないようベストな治療を提供し、次の処置ができる専門施設に責任を持ってつないでいけるよう努力しています。また普段の外来診療でも、脳卒中の前触れである「一過性脳虚血発作(TIA)」を見落とさないよう気をつけています。

TIAとはどんな病気ですか?

「崖っぷち脳梗塞」といわれ、脳への血流が一時的に悪化し手足のまひやしびれ、言語障害などの症状が生じますが、24時間、多くは数分以内に症状が消えるのが特徴です。TIAを放置した場合脳卒中を発症する割合が高いことから、この段階で発見して対処することが重要とされます。しかし軽い手のしびれがあるからといって、全員が大きな病院に行っていたら病院はパンクするでしょう。そこで、まずは当院のようにMRIやCTを保有するクリニックで検査を行い、より詳しい検査や治療が必要と判断された方を地域基幹病院や大学病院などの専門施設に紹介する、TIAのトリアージ・システムの構築をめざしています。私が所属する神奈川脳神経科医会が日本脳卒中協会神奈川県支部と協力して取り組んでいますが、臨床研究によってこのシステムの有用性が証明されています。

院外でも精力的に活動されているのですね。

田口博基院長 たぐち脳神経クリニック4

「横浜南部脳卒中ネットワーク」や「ストップ! NO卒中プロジェクト」といった団体にも参加し、脳卒中の医療連携を推進しています。また介護・リハビリスタッフ向けの勉強会や市民公開講座を開催するなど、脳卒中の知識を広める活動も行っています。開業医だからと診察室で座って治療するだけでなく、自分から積極的に動いて、地域医療に貢献していきたいと思っています。

周囲の人々の思いを糧に、地域の医療連携を推進

梨をモチーフにしたロゴが印象的ですね。

田口博基院長 たぐち脳神経クリニック5

朝8時半から19時頃まで、ほとんど診察室から出られません。私に代わってクリニック全体を仕切っているのが、看護師である妻です。だから妻の名前がここにあってもいいよねと、妻の名前にちなんで梨をモチーフにしました。医師が患者さんと向き合える時間は1人5〜10分が精一杯で、できることは限られています。院内の雰囲気づくりや、待ち時間が長くなった際の患者さんへの声掛け、患者さんへのフォローアップなどすべてスタッフが対応しています。例えば「動脈瘤があります。破裂すると危ないから手術しましょう」と突然言われると、患者さんやご家族はパニックになっています。そのときに皆さんが安心して次のステップへ進めるように、心のケアをする人が絶対に必要なのです。大切な役割を担ってくれている妻やスタッフには本当に感謝しています。

お忙しい中、リフレッシュ法はありますか?

寝る前などの空いた時間に好きな本を読むことです。特に歴史・時代小説が好きですね。学生時代に読んだ作品を再読することもありますね。それとクラシックギターが好きなんですよ。学生時代はよく弾きましたが、今は職業柄、爪が伸ばせないので聴くのが専門です。

今後の展望をお聞かせください。

田口博基院長 たぐち脳神経クリニック6

人員を増やして治療とリハビリを強化したい考えです。特にリハビリに関しては、当院の建設中から「リハビリを受けられる場所がなくて困っている」という近隣の方の声を聞いていました。現在の医療制度では、病院でのリハビリには脳卒中発症後最大180日までという制限があり、180日を超えるとハビリは打ち切られ、介護保険を使って訪問・通所リハビリなどを利用することになります。しかし介護保険のリハビリでは対応しきれず、「リハビリ難民」を生み出す要因とされています。入院中のリハビリで回復した運動機能も、退院後にリハビリを継続しなければ関節が固まり、手足が動かなくなりせっかく得た生活能力の低下につながります。当院のスペースでできることは限られますが、患者さんの運動機能維持を支援できればと思います。また、急性期・回復期・維持期と脳卒中のリハビリをスムーズにつないでいくために、今後も地域連携に注力していきたいですね。

先生の原動力はどこにあるのですか?

横浜市南部地域では「脳卒中ネットワーク」を構築しようと、医師や介護職など大勢のスタッフが働いています。それに全国に目を向けると、さらにたくさんいらっしゃるんです、止まると死ぬのではと思うくらい走り続けている、マグロのような先生方が(笑)。自分だけ現状に満足しているわけにはいきません。リハビリの場を求める患者さんやご家族、そして地域医療のために働くスタッフなど、大勢の人々の思いが私のエネルギー源なのです。

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