小林 起秋 理事長の独自取材記事
たてあきクリニック
(太宰府市/都府楼南駅)
最終更新日:2025/04/10

「医療を通して人の役に立つ」という祖父や父の教えを胸に、地域のかかりつけ医として今求められていることを模索し、新たな取り組みにも精力的に挑んでいる「たてあきクリニック」の小林起秋(こばやし・たてあき)理事長。熊本大学病院や聖マリア病院などの基幹病院での勤務経験から得た「患者さんが苦しんでいる病態に、効率良く、極力短時間でアプローチする」という信念のもと、それに役立つ設備や検査を積極的に導入している。逆に、患者のメリットにならないと思うことは徹底的に排除し、首尾一貫して患者のために働く医師をめざす。「生活習慣病でお悩みの方や、胃・大腸・肺の検査を検討している方など、どんな立場の患者さんも気軽に通えるよろず屋のようなクリニックでありたい」と、語る小林理事長に、診療にかける想いを聞いた。
(取材日2023年2月8日/再取材日2025年1月29日)
医療を通じ、自分らしい生き方をサポート
医師をめざしたきっかけと、開院までのご経歴を教えてください。

うちは祖父が一般内科、父が放射線科と医師の家系なんです。幼い頃から、医療が身近にありました。それに加え、祖父も父も漫画に出てくるような強い信念を持った医師で、医療を通して誰かの役に立つことを教訓として家族に言い聞かせていました。そんな祖父と父の姿を見て、自分も医師をめざすことが自然な道のりと思うようになっていましたね。宮崎医科大学卒業後は、熊本や佐賀、久留米と九州の病院を中心に、救急医療や消化器内科、総合内科の分野で経験を積み、2022年に地元である太宰府に、開院しました。
おじいさまやお父さまも信念を持った医師だったのですね。
祖父の言葉で父から伝え聞いたものがあって、それは「医療は生命のレジスタンス」です。こう言うと少し難しく聞こえるかもしれませんね(笑)。つまり、人間は他の動物と違ってもともとの寿命にあらがう術を持っているという意味です。どんな人も自分自身の将来や未来を考えて行動し、一人ひとりの行動が社会や世界をつくっているんです。そう考えると、やはり医療は必要不可欠だと感じます。だから私は、老若男女誰であっても、健康を維持することは機会均等であってほしいという想いがあります。働き盛りなのに病状が悪化して仕事ができなくなったり、チャンスを諦めたりした人も見てきました。患者さんの体への負担が少なく、効率良く症状の改善が図れれば、趣味や仕事など、その人らしく生きられる時間が増えるのではないかなと。この想いが原動力ですね。
消化器内科を長くご経験されていますね。

将来どの道に進むのか迷いましたが、小腸・大腸・肝臓・胆嚢・膵臓など全体を診ることができるので、熊本大学病院の消化器内科に進みました。そこでは救急医療もやっていて、過酷な面もありましたが、「自身で判断し、1秒でも早く治療にあたる」というところが自分の性分に合っていたと思います。そんな日々でさまざまな症例を診ていく中、ある時、潰瘍性大腸炎やクローン病を専門とする医師が少ないことに気づきました。当時は治療が今ほど確立されておらず、期待できる薬もあまりなかったので、熊本から治療のために福岡に通っている方もいました。需要と供給が噛み合わず、患者さんが困っている事態を見て、だったら自分がやろうとそちらの道へ進むことにしたんです。その際の目標が、「熊本の炎症性腸疾患の治療レベルを、世界レベルに引き上げたい」でした。少しはその一助となれたかと自負しています。
不調を感じたとき、ふと頭に浮かぶ存在でありたい
クリニックのコンセプトをお聞かせください。

不調を感じたとき、ふと頭に浮かぶ存在でありたいと考えています。これは医師としてのコミュニケーションの面に関しても、クリニックの設備面に関してもですね。医師はどうしても説明が専門的になってしまうことや、堅苦しい雰囲気が患者さんに質問しにくいと感じさせてしまうことがあると思います。なので、患者さんの小さな疑問や不安にお答えし、密なコミュニケーションで症状に対する理解を深めていただくことを大切にしています。医療体制や設備に関してもスムーズな治療のため、さまざまな検査機器をそろえました。何かあったときには大規模病院にすぐに紹介できるように連携もしています。また、不安なときに一番に相談できる地域のかかりつけ医として、患者さんと一緒に治療を頑張っていけるような医師でありたいですね。ちなみに、当院の発熱者専用の外来は予約制ではありません。診療時間内に来ていただければ必ず診察しますので、ご安心ください。
クリニックの強みは何ですか?
クリニックですので、大規模病院と比べるとできないこともありますが、エコー検査や内視鏡検査、CTなどの設備を整えていることです。イメージでいうと、大規模病院と診療所の中間のような立ち位置をめざしています。これは救急医療を担当していた時に、大規模病院にかかる前に、かかりつけのクリニックで、ある程度専門性の高い検査や処置ができているほうが、その後の治療が非常にスムーズに進むことを実感したからです。また、設備や環境が整っていると、病院での治療を終えて戻って来た患者さんがいた場合でも、適切なフォローもできると思っています。
力を入れている治療を教えてください。

高血圧や糖尿病など患者さんの生活に密接した慢性疾患の治療です。例えば、血圧が高いと脳や心臓など他の部分にも負担がかかってきます。不調が他の場所にも広がらないように、予防医学の観点から患者さんに合った薬を考え、重篤な状態にならないように調節を手助けします。もう一つは、潰瘍性大腸炎の治療です。これまでも治療に取り組んできた疾患でもありますし、今若い世代に増えつつあるという点もあります。街のクリニックでは対応できる施設がまだ珍しく、難しい治療でもあるので、私のこれまでの経験を生かして、患者さんの暮らしを守っていけたらと思っています。また、私の父が放射線科の医師として当院で診療にあたっていますので、肺がんや肺炎などの画像診断にも力を入れています。
時代の変化に柔軟に対応できるクリニックをめざして
院内設備や検査についてのこだわりを教えてください。

効率良く、極力短時間で病態にアプローチするのが私の信条です。患者さんの苦しい時間を少しでも短くすることに役立つ設備投資は積極的に行っています。例えば、最近導入した血液中の物質を分析する生化学検査装置もその一つです。通常であれば検査結果は後日聞きに来ていただいていますが、そのまま緊急搬送して高次医療機関にスムーズにつなげたい場合や、生活習慣病の状態が安定していて長期処方を行っている患者さんの場合などは、約20分で院内で結果を出すことが可能です。腎機能検査を導入したのも、緊急搬送先で造影剤を使ったCT検査を行うことが考えられるときに、患者さんが搬送先で無駄に待つことなく1秒でも早く診断がついて楽になるようにと願ってのことです。私も救急医療の現場に長くいて、患者さんを受け入れる側の気持ちもわかりますから。
今後どのようなクリニックにしていきたいですか?
患者さんの想いにしっかり耳を傾ける、よろず屋のようなクリニックでありたいです。人間誰しも病気になるものですが、病気をどう受け止め、どんな人生を選ぶのかは、患者さん自身のポリシーに基づく選択が尊重されるべきでしょう。私は求められてもいない医学を押しつけるようなことはしたくありません。医師として情報提供や助言は確実に行いつつ、それと患者さんの想いとの妥協点を探り、一人ひとりに合わせて寛容に対処していくよう心がけています。状況に合わせて、その時々でフラットに二人三脚で考えていく。それこそが患者さんに寄り添うということであり、われわれ町医者の役割だと思います。どんな立場の患者さんにも気軽に通っていただけるよう、時代に柔軟に対応することで困っている方を少なくしていきたいですね。
読者へメッセージをお願いします。

気になることや不安なことがありましたら、お気軽にお立ち寄りください。インターネットで検索して不確実な情報に振り回されるのではなく、もっと気軽に、コンビニエンスストアを利用するくらいの感覚で来院し、相談していただけるとうれしいです。現在は月1回、循環器内科のベテランの医師に診療に加わっていただいていますが、今後、また別のベテラン医師による高血圧の外来や女性医師による大腸内視鏡検査の日などを設けていく予定です。地域のため、患者さんのために、当院は何ができるかを一心に考え、これからも全力で取り組んでまいります。