藤川 純子 院長の独自取材記事
志紀なかむらクリニック
(八尾市/志紀駅)
最終更新日:2023/10/13
JR大和路線の志紀駅から徒歩5分。舗道に面したビル2階にある「医療法人治心会 志紀なかむらクリニック」は、同じ八尾市内にあるクリニックの分院として2022年に開院。循環器内科と心臓リハビリテーションを軸に据え、一般内科や各種健診にも注力しながら地域の健康維持に取り組んでいる。院長を務めるのは、穏やかな語り口の中にも患者や医療への熱い思いが感じられる藤川純子先生。日本循環器学会認定循環器専門医として長く病院に勤めながら、地域にまだまだ不足している心臓リハビリの必要を感じて開業を決意。地域医療に身を投じての新たなステージをスタートさせた。そんな藤川院長に、クリニックの目標や現在の状況、健康寿命に対する考え方などをじっくり聞いてみた。
(取材日2023年10月2日)
第一の目標は地域の健康寿命を延ばすこと
先生がこちらの院長に就任した経緯を教えてください。
当院は同じ八尾市内にある「なかむらクリニック」の分院にあたり、そこの中村院長がJR沿線にも心臓リハビリのできるクリニックを出したいということで院長候補を公募しておられたんです。それまで私は出身である大阪大学医学部の付属病院や関連病院に25年ほど勤めていましたが、たまたまその募集を見つけて応募し、中村院長のもとで4ヵ月間働いた後に、新たに分院の院長としてここをスタートする運びとなりました。分院を出したいという法人のニーズと、そろそろ開業したいという私の思いがぴったりとマッチした形で、そこはやはり運命的な出合いを感じています。
どのようなクリニックをめざしましたか?
当院は一般内科・循環器内科・心臓リハビリテーション科という3つを中心に、地域の皆さんの健康寿命を延ばすことを第一の目標としています。私自身が循環器専門の医師として動脈硬化などに取り組んできたこともあり、すでにご病気があったり手術を受けられた方の日々の健康管理や心臓リハビリを提供していることが特徴です。もちろん、普通の内科診療や健康診断にも対応し、予防医療や生活習慣病の治療にも取り組んでいます。循環器内科や心臓リハビリと聞くと特別な人のためのクリニックと思われるかもしれませんが、どなたにも安心して健康な毎日を送っていただくための、地域医療の窓口とお考えいただければ幸いです。あと、急に健康診断が必要な場合の即日健診も受けつけていますので、お急ぎの方はぜひお問い合わせください。
開院から約1年。現在の状況を教えてください。
私自身が開業医の仕事に慣れてきたこともあり、おかげさまで、ようやく皆さんにご周知いただいてきたところですね。ここにはもともと20年続いた消化器内科のクリニックがあり、前の先生が辞められるタイミングで私たちが場所を継承することになりました。待合や診察室はそのまま引き継ぎ、点滴室だったという広い空間を心臓リハビリのスペースにあてています。当初は前のクリニックの延長で内科受診にお越しになる方が多かったのですが、心臓でお悩みの患者さんも少しずつ増えてきました。スタッフや看護師や理学療法士を含めて常勤が5人で、中には以前のクリニックから継続して働いている人もいます。そのおかげもあって、消化器内科から循環器内科に変わっても周囲の方から割と抵抗なく受け入れてもらったと感じています。
心臓リハビリで将来のリスクや不安を取り除きたい
心臓リハビリについて教えてください。
私は病院勤務時代からずっと循環器内科でさまざまな心臓疾患の患者さんを診てきましたが、一度退院しても状態の維持ができないというケースが少なくありません。その中で、心臓リハビリが再発予防にとても有用であると考えています。ところが入院中は病院の心臓リハビリを受けていても、退院後も通院して利用している人はとても少ないのが現状です。心臓リハビリの認知度が低いこともありますが、退院したからもう必要ないだろうという方が意外に多いんですね。地域にもっと対応する施設があれば、そうした意識も変わるかもしれない。そう考えたことが、私が開業を決めた動機でもありました。ちなみに心臓リハビリは、急性心筋梗塞や狭心症、慢性心不全、心臓手術後の方など、対象となる疾患が保険制度で定められています。
具体的にはどのような効果が望めますか?
例えば狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の場合、心臓リハビリを受けることで突然死や再入院、死亡リスクが減少することが期待できます。ほかにもQOL(生活の質)の改善が図れ、健康寿命につながるでしょう。再発などの不安から運動できずに体力が落ちている方はもちろん、今はお元気でも病気を抱えている限りは将来に備えて悪化を予防する必要があると思います。どこまで運動していいかは、当院に相談していただければお答えできますよ。また、当院の理学療法士は経験豊富で、私と一緒に考えながら適切なプランを提案するのでご安心ください。まだまだ元気に人生を楽しんでいただくためにも、心臓リハビリを取り入れながらご自分の体とうまく付き合ってほしいと思います。
診療や心臓リハビリの際に、どのようなことを心がけていますか?
高血圧や糖尿病といった生活習慣病は、ただ漠然と「頑張りましょう」では誰も頑張れないでしょう。なるべく具体的な数値などの目標を設定し、そこに向かって患者さんに寄り添うような姿勢が大切です。医師にお任せではなく、患者さんが自分事として自発的に取り組める工夫ですね。例えば運動療法にはエルゴメーターという自転車を用いますが、こいだペダル数を距離に換算して東海道五十三次を走破するというシミュレーションを取り入れると、みんな人に負けじと頑張れるんですよね。やはりちょっとしたモチベーションが意外な効果につながるんだと思います。
身近な存在として地域医療に貢献していきたい
先生が循環器内科の医師になったきっかけは?
まだ高校生くらいの頃、周囲の人が病気になって先生が説明するのを聞いても、何が起こっているのかさっぱり理解できなかったんですね。知的好奇心もあって、もっと病気のことを知りたいと思ったのが医師をめざしたそもそものきっかけでした。医学部に入って学んでいた時に、心筋梗塞の診療を見て感銘を受けたんです。循環器の仕事はかっこいいなと憧れを抱き、それ以来、ずっと循環器内科の道を歩んできたわけです。
病院勤務と開業医では診療にどのような違いを感じますか?
本当にすべてが違うと感じていて、病院では患者さんも私が心臓専門の医師と認識して接してくれましたが、ここでは腰が痛いとか足がかゆいとか、本当にいろんな相談が飛び出します。私もなるべくお答えするようにしていますが、場所が違うだけでこんなに違うんだというのが正直な感想です。でも患者さんとの距離が病院時代よりもずっと近いですし、診察頻度も高いので、普段の生活ぶりまで手に取るようにわかります。最初はお互いにちょっと緊張もありましたが、今はずいぶん慣れてきて、これからはさらに近距離で皆さんとお付き合いしていくことになるでしょう。地域医療というのは、そういう姿勢で臨むものだと思います。
最後に、地域の皆さんに向けたメッセージをお願いします。
八尾は私の地元でもありますし、少し庶民的なところも大好きです。そんな地域の皆さんに、やはり健康に過ごしていただきたいというのが私たちの願いです。心臓のご病気と診断された方はもちろんですが、歩いたら息切れがする、ふとした時に動悸がするなど、不安を感じている方にも適切なアドバイスができるに違いありません。また、かかりつけの先生がいるけれど心臓検査の設備がないといった場合、年に1回でも気軽に検診にお越しください。心臓リハビリのことをもっと皆さんに知ってもらって、健康維持につなげていただけるよう、私たちもさらに励んでいきたいと思います。ご近所の方がなんでも相談できる、そんなクリニックをめざしますのでご期待ください。