2回目検査で陰性でも油断禁物
便潜血陽性は大腸がんの可能性も
石川消化器内科・内視鏡クリニック
(大阪市城東区/蒲生四丁目駅)
最終更新日:2025/01/16


- 保険診療
健康診断で発覚した便潜血陽性。「2回目の検査は陰性だったから大丈夫」「痔が原因だろう」と自己判断し、精密検査である大腸内視鏡検査を避ける人も少なくないという。しかし実際には、便潜血陽性の約半数にがん化する可能性のある大腸ポリープが、全体の3~5%程度の人に大腸がんが見つかると言われており、放置していては命に関わる事態に発展する可能性も。「1回でも便潜血検査で引っかかった場合は大腸内視鏡検査により大腸がんであることを否定しておくことが重要」と語る「石川消化器内科・内視鏡クリニック」の石川嶺院長に、便潜血陽性で考えられる病気や便潜血検査の仕組み、大腸カメラの重要性、同院で行っている大腸内視鏡検査などについて詳しく聞いた。
(取材日2022年12月24日)
目次
2回目検査が陰性でも安心できない「便潜血陽性」。大腸がんやその原因となる大腸ポリープがある可能性も
- Q便潜血が陽性でした。どんな病気が考えられますか。
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A
▲病気の発見だけでなく、予防のためにも検査を受けてほしいという
便潜血が陽性となった場合に疑われる病気は、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、大腸憩室炎などさまざまです。実際に検査をしてみると「痔」であることがほとんどなのですが、検査したおよそ半数の方に大腸ポリープが見つかり、全体の3~5%程度の割合で大腸がんが発見されると言われています。大腸ポリープは10年など長い時間をかけて“がん化”し、進行大腸がんへと進んでいきます。精密検査となる大腸内視鏡検査は腸管の観察はもちろん、ポリープが見つかれば検査中に1分程度と短時間で切除できます。便潜血が陽性だった場合は、病気の発見だけでなく大腸がん予防にもつながり得る大腸内視鏡検査を受けていただきたいですね。
- Q検査1回目は陽性でしたが、2回目は陰性なので安心しています。
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A
▲早期発見・早期治療を大切にしている同院
便潜血検査では1回目が陽性、2回目が陰性あるいはその逆の結果が出ることもよくありますが「1回は陰性だったから安心」というものではありません。この検査は便の中に血液が含まれているかどうかを調べ、多くの人の中から大腸がんの可能性が高い人を振るいにかけて見つけ出すスクリーニング検査であり、その中に3~5%程度の大腸がん、半数に大腸ポリープが隠れています。どちらか1回でそのふるいから漏れたとしても、病気の可能性を除外するものではありません。そのため2回の検査のうち1回を再検査と捉えるのではなく、1回でも便潜血検査で引っかかった場合は大腸内視鏡検査により大腸がんであることを否定しておくことが重要です。
- Q具体的にどんな精密検査があるのですか。
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A
▲内視鏡の苦痛を少しでも軽減し、負担を減らす検査に努める
大腸内視鏡のほか、大腸CTや大腸カプセル内視鏡があります。大腸の3D画像を撮影して診断する大腸CT、お薬のカプセルの形をした内視鏡を飲み込み腸管を撮影する大腸カプセル内視鏡は、いずれも内視鏡挿入の必要はありませんが、事前準備として下剤を飲む、大腸CTでは炭酸ガスで大腸を膨らませるなど一定の肉体的負担があるにもかかわらず、大腸ポリープが見つかっても切除ができません。ポリープ切除のためには改めて大腸内視鏡を挿入しなければならないため、肉体面では2回分、費用面ではそれ以上の負担がかかってしまうんです。このような理由から、観察からポリープ切除まで1回で完結する大腸内視鏡検査を私はお勧めしています。
- Q大腸カメラ検査は苦しそうな印象があり、受けるのが不安です。
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A
▲リラックスできるよう、院内づくりにもこだわる
当院では鎮静剤を用いた大腸内視鏡検査を行っており、ほとんど眠った状態で受けられるのが特徴です。大腸カメラがS字型に曲がったS状結腸を通過する際に、腸管を伸ばしたりたわませたりすることが痛みにつながる原因の一つ。鎮静剤により「目覚めたら終わっていた」という状態に加えて、なるべく大腸内に空気を送らず曲がりくねった内部に直線的にカメラを入れる無送気軸保持短縮法、下剤を含む腸液などの水を利用してうまくカメラをすべらせて挿入する水浸法などの技術も駆使した検査で、患者さんの苦痛や不安に徹底的に配慮しています。過去、大腸内視鏡検査を経験して「つらかった」という患者さんにも楽に受けていただけると考えています。
- Q内視鏡検査の大切さ、検診の大切さを教えてください。
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A
▲CT機器を使用し、より安心して検査に取り組める環境を提供
大腸ポリープは長い時間をかけて進行大腸がんにつながっていき、進行してしまえば大腸の半分を切除したり、がんのある場所によっては人工肛門になってしまったりという可能性も。一方でがん化までのスパンは長いため、早期の大腸内視鏡検査でがんになる前、ポリープのうちに切除しておけば、大腸がんになる人をゼロに近づけることができると考えています。鎮静剤と熟練の技術で苦痛の少ない大腸内視鏡検査を提供する当院では、CTも導入しより安全に内視鏡検査が行える環境を整えるほか、病理医による所見が書かれた病理診断書の採用、万が一大きな病気が見つかった際にはご希望の病院を紹介するなど「患者さんファースト」で取り組んでいます。