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井上 稔也 院長の独自取材記事

いのうえ在宅診療所

(堺市西区/上野芝駅)

最終更新日:2024/12/04

井上稔也院長 いのうえ在宅診療所 main

2022年10月、大阪府堺市に開院した「いのうえ在宅診療所」。院長の井上稔也先生は「在宅医療を通して、患者さんがより良い人生を送るための力になりたい」と意気込む。井上院長は救急科の医師として10年以上、ハードな現場に立ち会ってきた。救急搬送されてくる患者に対応する中で「自分が患者さんのもとに向かうことで、できることがあるのでは」との思いが募り、在宅診療所の開院に踏み切った。同院では、定期の訪問診療に加え、患者や家族の要請を受けて24時間365日体制で、緊急時にも対応している。「救急の現場で培った経験が、現在の診療に生きています」と穏やかに語る井上院長に、これまでのキャリアや今後の抱負について話を聞いた。

(取材日2023年3月2日)

求められる医療を、困っているその時に届けたい

どのような在宅医療をめざしていますか?

井上稔也院長 いのうえ在宅診療所1

救急科の医師として10年以上、救命救急の現場にいました。救急車で運ばれて来た時には、本人は話もできない、家族にも連絡がつかない、という状況で、私たちは命を救うために最善を尽くします。一方で、患者さんが家で困っているその瞬間、119番を呼ぶ前に、自分がその場に行ければなんとかなったのでは、と思うようなことや、私たちが取った救急措置が本人や家族が望んだものではなかった、という場面に立ち会うこともありました。そのような経験が積み重なり「自分が患者さんのもとに向かうことで、患者さんやご家族の幸せのために、できることがあるのでは」と思うようになりました。困ったその時に、迅速に駆けつけられる医師でありたい。これを実現するために、在宅診療所を開院しました。

診療の様子を教えてください。

診療所を拠点に、患者さんの自宅に定期的に訪問しています。院長である私ともう1人の医師、看護師、医療事務のスタッフで運営しています。在宅医療は通院できない方が対象になります。当院の患者さんの割合としては、がんの終末期の患者さんが比較的多いでしょうか。近隣の病院から紹介をいただくことが多いですね。地域の基幹病院である大学病院や市民病院に入院もしくは通院していたけれど、抗がん剤治療をする体力がなくなった、本人が病院よりも自宅で過ごしたいと希望した、といった理由で在宅医療に切り替える方がいます。ほかには、高血圧症や糖尿病などの病気に対して治療が必要であるにもかかわらず、通院が困難な方に対しても、訪問診療を行っています。

訪問診療ならではのやりがいや、難しさがあればお聞かせください。

井上稔也院長 いのうえ在宅診療所2

医療というのはすべて、目の前の患者さん一人ひとりと向き合うところから始まりますが、病院勤務の時に比べて、患者さんの生活により深く関わる訪問診療を行うようになってからは、患者さんに対する理解度が変わってきましたね。家庭環境やご家族との関係など、実際に生活している場に訪ねて話を聞くことで、わかることがたくさんあります。それまで行っていた医療との違いという意味でも、今は私にとって毎日が発見、挑戦の日々です。そして、治療にはある程度の答えがありますが、幸せには答えがありません。一人ひとり生活が違うので、一人ひとり答えも違います。何が最善なのか、患者さん、家族と一緒になって悩みます。試行錯誤をしながらではありますが、やりたかった医療が提供できているという、充実感があります。

大切な「今」に寄り添う

医師を志すきっかけがあったのでしょうか。

井上稔也院長 いのうえ在宅診療所3

高校生の頃、ある医師の「人を救う」姿に影響を受けたのがきっかけです。その先生はバチスタ手術で知られ、卓越した技術を持ち、なおかつ患者さんに丁寧に接しているのを見て、医師という職業に憧れを抱きました。医学部に進学し、心臓の診察や治療に携わる科に進みたいと思っていましたが、学びを深めるうちに、心臓だけでなく、いろんな病気で困っている人がいるということを知ったんです。私が影響を受けた先生は、何よりも命を救うことに特化していたので、幅広い領域をカバーして人を助ける救急の医師になりたいと考え、大学卒業後は、救急医療の道に進むことを決めました。

救急医療、そして外科の医師としても研鑽を積んでいらっしゃいます。

医学部卒業後、沖縄の病院の救急部門に勤務し、救急医療について学んだ後、次は手術ができるようになりたいと思い、堺市立総合医療センターで外科の医師として勤務。その後、堺市や大阪の病院の救急科に勤務しました。在宅医療を学ぶため救急医療から離れる時は後ろ髪を引かれる思いもありましたが、皆さん快く送り出してくれました。堺市で在宅医療を提供している病院にて、およそ1年半、在宅医療を専門とする先生と一緒に働かせてもらい、勉強しました。

救急科での経験は、今の診療にどのように役立っていますか?

井上稔也院長 いのうえ在宅診療所4

外科内科問わず、さまざまな科の患者を診る、という点で救急科と在宅医療は同じように感じています。救急ではさまざまな病気を持つ方が一番困った状態で運ばれてきます。そんな緊迫した状況で、いろんな診療科の患者さんを診た経験が在宅診療をする上で役に立っています。患者さんやご家族には「夜中でも休みの日でも、困ったらいつでもお知らせください」と伝えています。24時間365日体制ですから、救急の現場での感覚と変わりはありません。救急科の医師だった頃は毎日がとてもハードでしたが、経験しておいて良かったと感じます。

医師が自宅に来る、家族で看るという選択

在宅医療を検討している人たちに伝えたいことは?

井上稔也院長 いのうえ在宅診療所5

まずは気軽に相談していただけたらうれしいです。地域のケアマネジャーさんが架け橋になってくださることが多いですが、私たちも治療はもちろん、自宅での生活全般をサポートいたします。以前、不安を抱えながらも、在宅医療を選んだ患者さんやご家族が「やっぱり家がいいね、良かったね」とお話しされているのを見たことがありました。病院では医師、看護師が中心となりターミナルケアを行いますが、在宅医療ではそこに家族の存在があります。大切なのは、家族で看る、というイメージを持ってもらうこと。当院でも私たちがしっかりサポートしますから、ご家族にとって特別な時間を過ごしてほしいと思います。

お忙しい毎日かと思いますが、どのようにリフレッシュしていますか?

意外に思われることもあるのですが、ボクシングが好きなんです。かじる程度ではありますが自分でもやっていて、近くのボクシングジムに暇を見つけては通っています。ぼこぼこに殴られても、心身ともにリフレッシュできます(笑)。あと、開院してからはなかなか時間が取れていませんが、家族でキャンプに行ったり、息子と釣りをしたりすることも好きで、良い気分転換になります。

今後の抱負を聞かせてください。

井上稔也院長 いのうえ在宅診療所6

今、目の前にいる患者さんに、いかに貢献できるか。これを突き詰めて考えていきたいですね。救急科にいた時の経験を忘れず、出会った患者さんには少しでも楽に、穏やかに、できるだけ長く、自宅で過ごせる時間を提供したいです。将来的には、さまざまな病気の終末期に対応できる緩和ケア、居場所づくりを構想しています。開院以来、多くの患者さんを紹介していただき充実した日々ですが、一緒に働くスタッフが気持ちにゆとりを持って、やりがいを感じながら在宅医療を提供できるよう、環境を整えていくことも目標です。堺市とは、外科の勤務医だった頃に越してきて以来の縁です。住みやすい街で、ここで私の子どもも大きくなりました。この地に根を張り、地域医療に貢献できるよう頑張っていきたいと思います。

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