高田 徹 院長の独自取材記事
たかだクリニック 整形外科・脊椎外科・リハビリテーション科
(神戸市須磨区/須磨駅)
最終更新日:2024/08/26
神戸市バスの高倉台南口停留所を降りてすぐの場所に、2022年10月から診療を行っている「たかだクリニック 整形外科・脊椎外科・リハビリテーション科」。開業して1年と少しだが、遠方から家族ぐるみで訪れる患者もおり、早くも多くの人たちのかかりつけクリニックとなっているようだ。多忙な病院の整形外科、脊椎外科を支える役割も担いたいとの思いから、日曜日も診療しており、冷静でスピーディーな判断が求められる救急対応についても「大好きですね」と爽やかに笑う院長の高田徹先生。先進機器の導入と新しい治療への取り組みも熱心。いつも院内を走り回って精力的に診療を行い、スタッフと一丸になって注力する高田先生に、診療スタンスから患者への思い、今後の夢についてまでじっくりと聞いた。
(取材日2023年12月28日)
脊椎外科患者を支える、地域に不可欠な医院をめざす
開業して1年がたちましたが、この間、来院される患者さんに変化はありましたか?
地元の須磨にお住まいの方が中心であることは変わりませんが、明石や三宮のほうからも来院する患者さんが増えました。当院は高速道路の出入り口に近く、交通の便も良いことと、土曜、日曜も診療している関係もあり、週末は大阪、京都などの遠方から来られる方や、家族ぐるみでいらっしゃる方も多いです。私は、病院の外来診察のない日曜にも受診できる、脊椎・整形外科のクリニックがあればいいのになあ、と以前から思っていました。また私自身、救急対応がとても好きだということもあり、緊急の場面で立ち上がれるクリニックをつくりたかったので、その夢がかなった気持ちです。今も手術はしていますし、緊急を要する患者さんかどうかを鑑別して、大学病院や三次救急対応の病院へ紹介することにも積極的に取り組んでいます。その点ではこの地域において、脊椎・整形外科の重要な役割を担わせていただいていると感じています。
診療スタンスについて教えてください。
この地域は高齢化率が高く、80代、90代で独居の方も多いため、住み慣れた土地で元気に生活が送れるよう、サポートに注力しています。土曜、日曜には高齢の親御さんを連れて来院される方も多いのですが、お子さんたちからすると「自分の親が何で困っているかわからない」という声も多いので、まずは病名をきちんとお伝えして、こういう治療があり、私ができることはこうです、と丁寧に説明しています。大半は加齢による体の変化に伴って起きる病気ですので、治癒をめざすことは難しいのですが、主な症状を手術でなく注射で食い止めることをめざす方法などもありますから、それらの方法をきちんと説明して、ご理解いただいてから実施しています。治療を施した後「あまり変化が見られない」などのフィードバックがあれば、それを受けてまた次の手を繰り出す、というように患者さんがご納得されるまで、寄り添った治療をしていくことを信条にしています。
治療を行う際、大事にしていることはありますか?
安心、安全で人に優しい、最適な医療を行うことです。まず、患者さん、ご家族からよく話をお聞きすることは診察の基本。体の状態を診察し、病名と治療方法、治療の選択肢と目標をできるだけ明確にします。私は説明に重きを置いており、説明書でなるべくわかりやすく説明するように心がけています。当院でのすべての加療を患者さん、ご家族が理解し、納得していただけるように、無理にならないように十分に配慮しながら治療にあたります。スタッフとは治療手順と安全対応を事前に十分に検討しています。これらは医療機関としては当たり前のことですが、限られた時間の中で実践するとなると意外に難しいものです。どのような症状の方であっても、必ずその方にとって最も適した医療の選択肢が存在しますので、そのお手伝いをスタッフと一丸になって行います。より相談しやすい、話しやすい、地域に密着したクリニックになれるようにスタッフと頑張っています。
先進設備を導入し、精密な検査も院内で行う
特に注力されている分野は何ですか?
猫背や首下がり、ストレートネックなどの背骨の変形と骨粗しょう症の診療と治療です。背骨の変形は近年注目されている「ロコモティブシンドローム」の一部で、背骨が徐々に前に倒れ後弯していくのを加齢のせいとそのままにしてしまうと、やがて歩行が困難になりかねません。また、最近多いストレートネックは、頭痛や肩凝りを引き起こすだけでなく、自律神経に直結しているため、悪化するとうつ状態になる人も。当院では全脊椎レントゲン写真、骨密度測定などを使って変形の原因を特定し、病気を理解していただき、リハビリで背筋強化運動を行い、背骨の変形の予防に注力しています。女性に多い骨粗しょう症では、当院の看護師が時間をかけて丁寧な説明を行った上で、PTH製剤による注射治療などを行っています。
院内設備も充実していますね。
性能にこだわったエックス線透視台を導入しています。1台で3役こなせるもので、第1に鮮明かつ長いエックス線写真を撮影できます。整形外科では背骨の曲がり具合など全体を見る場面が多いため、こうした機能が搭載されているものを選択しました。第2に骨密度測定が可能で、従来の手首ではなく近年の推奨部位である腰椎と大腿骨を測ることにより、より精密な検査を行えます。そして第3にCTのような断層画像を撮れます。さらに被ばく量は一般的なCTの約10分の1以下で、患者さんのメリットは大きいと思います。
クリニックの特徴や強みについても伺います。
当院は整形外科だけでなく脊椎に関する疾患にも対応しており、手術から変性疾患、外傷まで幅広いケースに対応できる点です。特に多いのは骨粗しょう症が原因の椎体骨折で、私は勤務医時代、小さな傷口からカテーテルを挿入して行う手術や顕微鏡を使う手術を数多く手がけてきました。また、大学院ではヘルニアについて研究していたため、ヘルニアを縮小させるための薬を使った手術不要の治療もご提案できます。手術が必要な場合は、私が順心神戸病院に出向いて執刀し、合併症を含めた術後の管理まで行います。
困難な時も、逃げることなく患者に向き合う
先生はなぜ整形外科医になられたのですか?
同じく整形外科の医師であり、開業医だった父の影響が大きいですね。残念ながら早くに亡くなってしまったため、父の医院を継ぐことはできませんでした。時は流れ、縁があって私は地元の福岡から神戸へ移住。それでも「父と同じ名前のクリニックを持ちたい」という気持ちがあり、開業に踏みきりました。ちなみに整形外科の中で脊椎を専門に学んだのは、師匠をはじめ熱心な先生方から直接指導していただいた経験がきっかけです。昔は小さかった脊椎に関する外科のグループを師匠たちが大きくする過程を間近で見ながら、いろいろな勉強をさせてもらった恩がありますので、師匠たちには今でも頭が上がりません。
脊椎外科を専門にされたきっかけは?
あくまで過去の話ですが、脊椎疾患は治りにくい、手術をしたらもう打つ手がないといわれた苦しい時代がありました。若手医師だった当時の私も「何とかならないものか」という思いを常に抱えながら診療していました。そんな中、首に腫瘍ができ苦しみながら最期を迎えたがん患者さんを担当し、あらためて自身の無力さを痛感しました。そしてもう一度ゼロからやり直そうと、大学院へ入学しようとした時に出会ったのが今お話しした師匠です。そこから本格的に脊椎の世界へ飛び込んだのですが、思えば父の専門も脊椎でしたね。脊椎に関する外科は診断や治療こそ難易度が高いものの、適切な医療を提供できれば患者さんを幸せにできると思っています。治療の過程で困難があっても、根気強く治療を続けていればきっと良い道が開ける。そんなドラマがある診療科です。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
開業前に抱いていた「最適な医療を提供したい」という理念に向かって日々精進し、前進して行くことができる現状をとてもうれしく思っています。患者さんと診察室でお話しできることは限られていますので、近くの施設を借りて講演会も始めました。すでに3回、テーマを変えて開催しています。私は常に院内を忙しく走り回りながら診療するスタイルなので、初めて見たスタッフには驚かれることも多いです(笑)。そんな私のスタイルを理解し、助けてくれる仲間を、これからもっと増やしていくことが目標です。大変なことも多いでしょうが、すべてにおいて逃げることなく、患者さんへ真摯に向き合って診療していきたいと思っています。