早期発見が視野欠損防止の鍵
誰もがなる可能性のある緑内障を知る
いしだ眼科クリニック
(神戸市東灘区/御影駅)
最終更新日:2025/01/16


- 保険診療
日本における中途失明原因の第1位で、40歳以上の20人に1人、60歳以上は10人に1人が罹患しているといわれる緑内障。加齢が主な原因であり、誰もがかかる可能性があることは知られ始めているが、自覚症状がほとんどない病気のため、その必要性は理解していても、ついつい日々の忙しさにかまけて、定期検査の受診を後回しにしがちだ。しかし緑内障が進行して視野が欠けてしまえば、たとえ手術を施しても元の視野に戻ることは望めない。だからこそ、いかに早期に発見し、進行抑制を目的とした治療を始められるかがキーとなるという。「いしだ眼科クリニック」の石田和寛院長に、緑内障とはどのような病気か、なりやすい人の特徴や定期検査の重要性、同院でできる治療について聞いた。
(取材日2024年1月24日)
目次
欠けてしまった視野はいかなる治療でも戻せない。緑内障の早期発見・治療の重要性を知ろう
- Q緑内障とはどのような病気なのでしょうか。
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A
▲自覚症状がないまま進行し失明の危険性もある緑内障
緑内障とは、目が受け取った情報を集めて脳に送る視神経がさまざまな原因によって傷んでしまう病気で、進行すると見える範囲(視野)が欠けていったりします。特に重大な原因とされるのが眼圧の高さ。目の中では房水と呼ばれる栄養を含んだ液体が循環しているのですが、この房水が目の中に入る量と出ていく量のバランスによって、目の硬さである眼圧が決定します。この房水の排出口である隅角(ぐうかく)が狭いことなどで房水が流出しにくくなると眼圧が高くなり、その人にとって許容範囲以上の圧になると緑内障になってしまうのです。急性緑内障発作など一部を除き、一般的に緑内障は長い年月をかけて少しずつ進行していきます。
- Q緑内障になりやすい人の特徴はありますか?
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A
▲早期発見で緑内障の治療をすることが視力・視野障害を防ぐ
緑内障は日本の成人の中途失明原因第1位の病気で、40歳以上でおよそ5%、60歳以上で10%超が罹患していることが、大規模な緑内障疫学調査でも明らかとなっています。家族が緑内障であったなどの遺伝や、糖尿病など全身の病気、強度近視なども緑内障発症の危険因子になることはありますが、主な原因は加齢によるもので、いつ誰がなってもおかしくない病気です。急性緑内障発作の原因となる閉塞隅角は眼球の構造によるものですが、これは遠くまでよく見える遠視の方、小柄な女性にみられがちです。手術で改善を図る白内障と異なり、緑内障による視力・視野障害が出てしまうと、たとえ手術をしても元には戻らないため注意が必要です。
- Q緑内障は自覚症状に乏しいと聞いたことがあります。
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A
▲緑内障には痛みなどの自覚症状が乏しいため気づきにくい
一般的な緑内障は、痛みや目の違和感がないまま、10年、20年とかけて徐々に悪化していきます。その際、視野の欠けは周辺部から起こることが多く、中心の視力は保たれます。緑内障は進行しているのに、発症する前と見え方に差がないため、自覚できないままさらに悪くなってしまうのです。例えば網膜剥離のように、視界の一部が暗くなるなど明らかな視野欠損がある病気と異なるため、年1回の会社の健康診断で指摘を受けた、結膜炎など別の目のトラブルで受診したなどのきっかけがなければ、自分で緑内障に気がつくのは困難でしょう。現時点で違和感がなくても、40歳を過ぎたら眼科を受診してください。
- Q定期的な検査が必要ということですね。
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A
▲緑内障の発見には定期的な検診をすることが大切
周辺の視野が徐々に欠け、視野の真ん中まで見えなくなって受診される方もおられますが、緑内障で失われた視機能はどのような治療をしても戻ることはありせん。そのため、視野の欠けがない早期のうちに見つけ、進行を抑制するための治療を行うことが大切です。また会社の健康診断などで眼圧が正常であっても安心はできません。実はアジア人では眼圧が高くない緑内障が多いため、まずは40歳を過ぎたら一度は眼科へ。眼圧・眼底検査や必要に応じて視野検査を受け、年1回など医師の指示する頻度で定期的に検査を受けてください。近年は検査後の行動が制限される散瞳検査を行うケースは少ないため、お仕事の合間でも気軽に受診いただけます。
- Qこちらのクリニックではどのような治療が受けられますか?
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A
▲副作用を考慮して、患者と相談しながら点眼薬治療を行う
基本は点眼治療からスタートします。点眼薬の種類は非常に多いのですが、第一選択となるのが、手間が少ない1日1回タイプ。まつげが伸びやすくなる、目の周りが黒ずむ、白目が充血するなどの副作用も考慮しつつ、服薬中のお薬との相性も見ながら、患者さんと相談して使用する点眼薬を決めていきます。1日に1回必ず使用してもらうため、夕食の直前や、目からこぼれた薬剤を洗い流せる入浴前など、点眼を忘れないタイミングをアドバイスします。この他当院では、房水を排出する出口に対するレーザー治療にも対応しています。外科手術が必要なケースに関しては、神戸市立神戸アイセンター病院などをご紹介させていただきます。