牧野 弘 院長の独自取材記事
ぎなんレディースクリニック
(羽島郡岐南町/岐南駅)
最終更新日:2023/02/09

2022年9月に開業した「ぎなんレディースクリニック」は、一般的な婦人科診療をはじめ、体外受精や顕微授精、胚移植といった生殖補助医療を含む不妊治療全般を受けられるクリニックだ。牧野弘院長は、婦人科疾患の外科手術、不妊治療などの研鑽を積んだ人物。そんな牧野院長が開業にあたってめざしたのが「気軽に通えるクリニック」。地域において専門的な不妊治療を受けられる婦人科クリニックが限られること、仕事と治療を両立するにあたって診療時間などがネックになる点を考慮し、アクセスが至便な立地で開業を決め、平日は夜20時まで診療を行う。「不妊治療も、婦人科トラブルも、早期アプローチが重要です。気軽に足を運んでもらうための工夫は欠かせません」と話す牧野院長に、クリニックづくりのこだわり、診療時の心がけなどを聞いた。
(取材日2023年1月19日)
女性の悩みに寄り添う「気軽さ」を追求したクリニック
どのような経緯から、岐南町での開業をお決めになったのですか?

患者さんにとって通いやすく、気軽に受診できるクリニックをつくりたいと思ったのがきっかけです。不妊治療は頻繁に通院する必要があるのですが、婦人科の中でも不妊治療が受けられるクリニックとなると、岐阜市内に集中しています。そこで、岐南町をはじめ各務原市などの岐阜の東側のエリア、あるいは飛騨地方、可児や関、郡上といった中濃など離れたエリアにお住まいで、不妊治療を受けたいという方に利便性の良いクリニックを立ち上げたいと考えました。当院は東海北陸自動車道のインター近くで、車で通院しやすい立地が特徴です。平日は夜20時まで診療しているので、お仕事帰りにも受診やすいかと思います。また、開業にあたり「ある程度の不妊治療は当院で対応できるようにしたい」と考え、院内に培養室を設け、看護師に加えて培養士や検査技師も採用しました。
院長は婦人科のさまざまな専門分野でスキルを磨いてこられたそうですね。
確かに、日本産科婦人科学会産婦人科専門医に加えて、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医と日本生殖医学会生殖医療専門医の両方の資格を有しているのは珍しいかもしれません。幅広く専門性を高めた背景にはいろいろな影響があって、例えば不妊治療に関しては、以前務めていた東海中央病院で若いころに経験を重ねることができました。勤務していた2000年代初頭、東海中央病院は不妊治療に力を入れていました数少ない総合病院でした。そんな環境で治療に携わることができたのは、とても良い経験だったと思っています。腫瘍の治療に関しては、もともと外科手術が好きだったからというのが大きいです。婦人科疾患は若い世代も多いですし、治療に際しては精度を高めるとともに子宮の温存など、検討すべきことも多いです。さまざまな経験を通して、診断・治療スキルはもちろん患者さんの悩みに寄り添う姿勢も身につけてこられたかなと感じています。
開業から数ヵ月ですが、患者さんはやはり不妊治療を希望する方が多いのでしょうか?

1日あたりだいたい数十人くらいが受診されていて、患者さんの相談としては不妊治療と一般婦人科で半々といったところですね。一般婦人科の患者さんの場合、患者さんの年齢層は10代からご高齢の方まで幅広く、生理不順やピルの処方に関する相談が多いです。不妊治療の場合、夜間などご主人と一緒に受診される患者さんも多く見られます。専門的な不妊治療とともに、婦人科診療も行っているのも当院の特徴の一つかと思います。不妊治療を受けたいと思う反面、専門のクリニックとなると受診のハードルが高いと感じてしまう患者さんもいるかと思います。少しでも気軽に一歩を踏み出してもらいたい、検診などを足がかりに婦人科や不妊の相談のきっかけを得てほしい、そんな思いから婦人科診療にも力を入れて取り組んでいます。
患者の心情にこまやかに配慮し、丁寧な診療を実践
クリニックをつくる上で、どんな点にこだわりましたか?

受診される患者さんの背景、心情はさまざまなので、お一人お一人に寄り添えるような工夫を心がけました。例えば空間づくりでいうと、お子さん連れで受診される方を想定して、キッズルームは待合室と離れた場所に設置しました。不妊治療中の方にとって、お子さんの声や姿を目にすることを心理的に負担に感じる方もおみえになりますから。キッズルームは扉つきで、親子でお過ごしいただけます。親御さんが診察を受ける際、お子さんはキッズルームに残りたいということであればスタッフが見守るようにしています。また、当院では妊婦健診を行っておりません。これも、不妊治療を受ける患者さんへの配慮の一つです。やはり妊婦さんが近くにいることも、不妊治療中の方にとって心理的に負担に感じる方もおみえになると考えられますから、妊婦健診は対応する医療機関をご紹介しています。
患者さんと接する上で心がけていることを教えてください。
しっかり話を聞いて、丁寧に説明することを第一にしています。不妊でご相談にみえる患者さんの場合、しっかり状況をお話ししてくださる方が多いですね。ご自身でいろいろと調べている方も見られますね。とはいえ、当院の患者さんの多くは初めて不妊治療について相談するといった方が多いので、ものすごく詳しいといったわけではありません。だからこそ、ある程度の基礎知識がある方に対して、専門家の立場から具体的にどういった方法があって、どういった流れで進んでいくのかを丁寧に説明することがとても重要だと感じています。
スタッフの皆さんのサポートも、より良い診療につなげる上で欠かせないものかと思います。

もちろんです。看護師などの各種スタッフは、皆さん能力はもちろん、それ以外に人柄を特に重視して採用しています。何かしらの悩みを抱えて受診される患者さんが多いので、目の前の人の心に寄り添う姿勢で応対できるかどうかなど、言葉遣いや気遣いのできる人に診療をサポートしてもらっています。
患者のニーズを真摯に受け止め、診療の充実につなげる
実際に開業して実感したこと、気づいたことなどありますか?

患者さんにどんなきっかけで当院を知ったかを聞くと、「近くにできたから」「近隣の医療機関で紹介してもらったから」といった声を耳にします。当初描いていたクリニック像に近づいているのでは、と思えて率直にうれしいですね。一方で、子宮がん検診にも対応しており、早期発見を担う地域のクリニックの役割の大きさを感じています。あと、実際に診療をスタートして、予想以上に低用量ピルのニーズが高いことに驚きました。10代の方が周りの友人からのクチコミで興味を持って相談に来ることも多いんですよ。生理トラブルは学業にも影響されますからね。生理痛などの改善にも役立つものですから、前向きにご検討いただきたいです。
婦人科を受診したほうが良い目安などありますでしょうか?
何かしらの症状がある場合はためらわず相談しましょう。特に注意したいのが不正出血です。明らかな鮮血は当然ですが、おりものが茶色っぽくなっている程度でも、不正出血があると考えて問題ありません。生理以外の出血の多くは排卵出血など、異常なものではないケースがほとんどなのですが、中にはがんが潜んでいることもあるので、不正出血が見られたら早めに相談を。また、とくに自覚症状がない人も、定期的に子宮がん検診を受けましょう。子宮頸がんは20代や30代の発症も珍しくありません。年に1回検診を受けるのが理想ですが、自治体でも2年ごとに検診補助を実施しているケースが多いですから、ぜひ活用してみましょう。当院でも各種検診に対応していますので、これをきっかけに婦人科を利用いただければと思います。
今後の目標をお聞かせください。

私自身ももっと勉強して診療の質を高めていきたいですね。例えばニーズが高いとわかった低用量ピルも、種類がいくつかあって、合う・合わないが人それぞれなので、その方に合った処方につなげられるよう努めていきたいです。あと、最近は妊娠前の健康管理を意味する「プレコンセプション」という言葉も登場していますから、当院でも妊活前の医療の充実を図っていきたいとも考えています。ほかにも、性感染症のリスクや、重い生理痛の背景に子宮筋腫や子宮内膜症などが潜んでいることがあるということを啓発するのも、婦人科クリニックの大事な役割と感じています。生理痛は我慢していても治るわけではないので、適切なアプローチによって改善し、生活の質の向上につなげていけたらと思います。検診などをきっかけに、気軽にご利用ください。