高井 孝典 院長の独自取材記事
浦舟金沢内科クリニック
(横浜市南区/阪東橋駅)
最終更新日:2024/09/05

ブルーライン・阪東橋駅近くにある「浦舟金沢内科クリニック」。高井孝典院長は糖尿病診療の専門家だ。大学病院などで糖尿病の合併症が進行し、失明や人工透析、足の壊疽など重篤な状況になる症例を多く経験し、もっと早い段階で適切な治療を提供したいと考え、より身近なクリニックでの診療に転じたという。現在は、患者の状況や背景までを考えて全人的に診ることをモットーに、糖尿病を中心とした生活習慣病や睡眠時無呼吸症候群、甲状腺疾患の診療に携わっている。下町の風情が残る阪東橋や横浜橋エリアの気さくな雰囲気が好きだという高井院長に、クリニックの診療の特徴や、糖尿病診療への思いを聞いた。
(取材日2024年8月15日)
糖尿病や睡眠時無呼吸症候群、甲状腺疾患を専門に診療
まず、こちらのクリニックの特徴を教えてください。

当院は、糖尿病を中心とする生活習慣病と、それに関連が深い睡眠時無呼吸症候群、女性に多い甲状腺疾患を専門に診療する医療グループのクリニックです。これらの疾患は、働き盛り世代、子育て世代にも多いため、忙しい世代が適切な医療を受けられる環境が必要です。そこで、当グループは、利便性の高い立地で身近に専門的な医療を提供するクリニックを開設しています。当院は、グループとして4番目に設立されたクリニックで、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群、そしてバセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患を中心に多くの患者さんに来院していただいています。糖尿病療養に詳しい看護師や管理栄養士、臨床検査技師など専門性の高いスタッフが在籍していること、横浜市立大学附属市民総合医療センターにとても近いため、関係が深いのも特徴だと思います。
横浜市立大学附属市民総合医療センターとは、どのような連携をされているのですか?
入院治療などが必要になった当院の患者さんを紹介するのはもちろん、横浜市立大学附属市民総合医療センターでの治療が落ち着いた患者さんを逆紹介されることも少なくありません。同医療センターは患者さんが多く、待ち時間が長いですからね。その点、当院は予約制ですから、多忙な方にも通院していただきやすいと思います。また、同医療センターの甲状腺疾患を専門とする先生と連携して診療を行っています。そのため、甲状腺疾患の患者さんも多く来られ、甲状腺超音波検査に長じた検査技師も在籍しています。
では、院長就任までの経緯を教えてください。

医師になったのは、自分自身、中学生の時に少し大きな病気を経験して、病気や治療に興味を持ったことからですかね。東北大学医学部卒業後は、東京女子医科大学病院と大学関連病院の糖尿病・代謝内科で診療に携わってきました。大学病院などでは、長期間にわたる糖尿病の影響で、腎不全を起こし人工透析が必要となった方や、糖尿病性網膜症による失明、足の壊疽・切断など糖尿病合併症に苦しむ方をたくさん診ていたことから、できることなら重症化する前のもっと早い段階で適切な治療を始め、健康的な生活を送っていただきたいと思うようになりました。そのためには、より身近なクリニックで専門的な診療を行うべきだと考え、こちらの院長に就任しました。
生活習慣病にもつながる睡眠時無呼吸症候群
この地域や患者さんの印象について聞かせてください。

阪東橋、横浜橋というのは、横浜の中でも少し下町のような雰囲気で、ざっくばらんな方が多い印象があります。素直というか、言いたいことを正直に言ってくださる方が多いので、私は診療しやすいですね。患者さんは近隣の方が多いですが、横浜市立大学附属市民総合医療センターから逆紹介された方は、少し遠方からも来られることがあります。全体的に高齢化は進んでいます。高齢になられると、生活習慣を変えていくのは無理な場合が多いので、ご家族とも相談しながら、少しずつできるところからという感じですね。最近は独居の高齢の方も増え、対応が難しいなと感じているところです。
糖尿病など生活習慣病の診療にはどのような特徴がありますか?
糖尿病は、飲み薬による治療だけでは改善が難しい場合が多く、食事の管理や運動が重要になります。患者さんの状態によってはインスリン製剤やGLP-1製剤などの注射薬の使用が望ましい場合があります。自己注射に不安を感じる方も少なくないと思いますが、当院では、スタッフが注射の打ち方や日々の管理方法などわかりやすく説明していますので、安心して診療を受けていただきたいと思います。1型糖尿病の治療も行っており、血糖値と連動する間質液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度を測定・記録・保存する持続血糖測定器を導入しています。また、脂質異常症に対しては、食事の管理や運動、薬物療法を行っています。LDLコレステロールを下げる作用が強いことが見込まれるものや、小腸でのコレステロールの吸収の阻害を図るものなどさまざまな薬剤から、作用・副作用を考慮して選択していきます。
睡眠時無呼吸症候群の診療についても教えてください。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に強烈ないびきと一時的な呼吸停止を繰り返す病気で、最近の知見では不整脈を誘発したり、糖尿病など生活習慣病の重症化につながったりすることが明らかになっています。当院では、さまざまな生活習慣病の背景に睡眠時無呼吸症候群が関係するため、糖尿病や高血圧症の治療の一つの切り口として睡眠時無呼吸症候群の診断を重要視しているのが特徴です。当院では、自宅でできる簡易検査に加え、グループ内の専門検査室のあるクリニックと連携して精密検査にも対応しています。そして、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)を中心とした治療を行っています。
個々の患者の背景や環境にも配慮した診療を心がける
診療方針や、患者さんを診る上で大切にしていることは何ですか?

診療方針といえるかどうかはわかりませんが、今までの恩師や先輩の先生方から学んだこと、自分が経験してきたことが、診療の基礎にはなっていると思います。気をつけているのは、病気だけでなく、患者さん自身を全人的に診ること。患者さんが何を考えられているかを想像しながら診療することを心がけています。また、糖尿病など生活習慣病も、睡眠時無呼吸症候群も、薬ですぐに治るというものではないので、患者さんの生活背景などを考えながら、じっくりお付き合いするようにしています。スタッフはみんなしっかりしているので安心して任せていますね。患者さんへの生活指導など、スタッフがそれぞれの専門性を生かして対応するので、私が口を出さないほうがいいかなと思って、あまり介入しないようにしています。
専門的な立場から思うところを聞かせてください。
糖尿病に関しては、患者さんの高齢化が進んでいますね。最近は新しい糖尿病の治療法が広まっていますが、私はその前から治療を手がけてきましたので、新しい治療やスタンダードな治療を取り混ぜて、個々の患者さんに合った、より良いものを選ぶようにしています。新しい治療法は費用もかかるものが多く、無理なく治療を続けていただくことも大切ですから、患者さんの負担も考えながら治療を提案しています。また2型の糖尿病も体質的なものが影響するので、糖尿病の家族歴がある方は気をつけていただきたいですね。とにかく、おなかに脂肪をつけない、運動をする、炭水化物を食べすぎない、筋肉をつける、これらのことを心がけましょう。とはいえ、生活習慣を変えていくのは難しいです。私自身も病院勤務時代よりは体重が増えてしまったので、患者さんの気持ちも理解しつつ、良い方向へ進めていきたいと思っています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

当院は、糖尿病を中心とした生活習慣病と睡眠時無呼吸症候群、甲状腺・内分泌疾患を3本柱として、予約制で専門診療を行うクリニックです。一番の良さは、専門的な診療を身近に、そして親身に提供できることです。生活習慣病を治療せずに放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞につながることもあります。健康診断や人間ドックなどの結果で気になる点がありましたら、気軽にご相談ください。また、睡眠時無呼吸症候群の診療にも力を入れています。睡眠時のいびきを家族から指摘された方や、日中の眠気など気になる症状がある方は、ぜひ受診をお勧めします。甲状腺疾患についても、甲状腺超音波検査など専門的な診療が受けられるクリニックは少ないと思いますので、ご相談いただければと思います。