松本 学 院長の独自取材記事
きだ呼吸器・リハビリクリニック
(大阪市生野区/桃谷駅)
最終更新日:2023/05/29
大阪環状線の桃谷駅から東へ徒歩10分の住宅地。2022年7月に開院した「きだ呼吸器・リハビリクリニック」は、呼吸器疾患の診療やリハビリを専門としながらも、一般内科から訪問診療まで、幅広い役割を担う地域かかりつけクリニックだ。院長を務めるのは、大学病院や市中病院などの呼吸器外科で活躍してきた松本学(まつもと・がく)先生。その高い専門性を生かしつつ、幅広い疾患や体の不調を訴える患者の窓口となり、治療や生活の質の改善をめざすことはもちろん、緩和ケアから看取りまで、一人ひとりの状況や希望に応じたサポートに徹する。そんな松本院長に、クリニックの方向性や特徴、患者に対する向き合い方などをじっくり聞いてみた。
(取材日2023年4月18日)
呼吸器疾患を軸に、一般内科や訪問診療まで幅広く
まずは開院の経緯を教えてください。
私は兵庫医科大学卒業後に関西ろうさい病院で初期研修を終え、神戸大学医学部附属病院の呼吸器外科へ入局しました。同大学病院や大阪府済生会中津病院では、主に肺がん手術などを行ってきましたが、手術後の患者さんへの対応を通じて緩和ケアや予防などにも携わるようにもなっていきました。そんな中で、手術以外にも、患者さん一人ひとりに寄り添い、患者さんと一緒に症状に向き合うことに興味を抱くようになりました。それが開業にかじを切ったきっかけです。この町には、かつて母方の祖父の「紀田診療所」があり、それを継承するかたちでこの地にクリニックを新築する運びとなりました。私は現在も週に1回、大阪府済生会中津病院で肺の手術を行っています。実際に開業した後も手術を続けていけることは、外科の医師として非常にありがたく思います。先端の医療に触れることができる機会にもなるため、とても感謝しています。
こちらでは、どのような診療が受けられますか?
まず呼吸器疾患に関しては、治療とリハビリの両輪が理想的だと呼吸器外科の術後の患者さんを診て考えるようになったのですが、クリニック単位でやっている施設は、私の知る限り大阪にはありませんでした。それなら自分で作ろうと考えたわけです。また、風邪や生活習慣病などの一般内科診療はもちろん、専用の入り口と隔離室を設け、発熱者の外来にも対応しています。通院できない方には訪問診療や往診などの在宅医療も提供していますし、もともとが外科の医師ですから、けがの処置も可能です。その他の領域であっても、地域のかかりつけ医として窓口の役目は果たせます。私は医師として、この地域の方々へ医療貢献をできることがとてもやりがいに感じています。さまざまな方面で患者さんのニーズにお応えしていきたいですね。
病院時代との違いはお感じになりますか?
実際に開業してみて強く感じるのは、患者さんに対する医療のすべてに自分自身が関われることです。すべてを自分の裁量で行うことには重い責任が伴いますが、私にとっては同時に大きなやりがいです。外来診療から在宅診療、終末期医療まで、それを一人のドクター、一人のかかりつけとしてやっていくことが今後のテーマです。医療の細分化が進む中にあって、そんな泥くさい医師がいてもいいのではないかと思っています。
治療とリハビリの両輪で患者をサポート
先生の専門である呼吸器疾患について教えてください。
呼吸器疾患には気管支喘息や肺気腫、肺炎、気管支炎、原発性肺がんなどがあり、長引く咳や息切れなどの症状で、日々の生活に問題を抱える患者さんがいらっしゃいます。そうした皆さんの症状の改善を図り、平穏な生活を取り戻すことが第一の目標です。当院では総合呼吸機能検査装置や一酸化窒素分析装置をはじめ、さまざまな検査機器をそろえており、胸部レントゲン検査と併せて診断します。また、喘息治療にも使用する吸入薬に関しては院内で吸入指導を行い、診断がついた時点でその日のうちに治療をスタートできます。なかなか体調が改善されず、長引くような症状があれば、ぜひ当院を受診してみてください。
呼吸リハビリにも力を入れておられますね。
2階のリハビリ室には2人の理学療法士が常勤し、さまざまな方法で呼吸器疾患を持つ患者さんのサポートに尽力しています。手術の影響で体力が低下している患者さんや、肺炎で入退院を繰り返している患者さんのほか、在宅で治療を受けられている方なども対象です。呼吸というのは肺だけで行っているわけではありません。肺の周囲にある呼吸筋を鍛えたり、運動や呼吸法の練習をしたりすることで、呼吸をしやすくすることが望めるようになります。また、リハビリの成果は呼吸機能検査を再度測定し、客観的なデータによって確認ができます。当院では呼吸リハビリに長年従事してきたスタッフが、患者さんそれぞれに合わせたリハビリのプランを組んでおります。病院からの紹介も徐々に増えていますので、ぜひ私たちと一緒に頑張っていきましょう。
患者さんと接する際に心がけていることを教えてください。
大切にしているのは、患者さんの声に耳を傾け、ご要望に沿って治療方針を決めることです。当院では治療方針を私のみで決めるのではなく、できる限り患者さんの希望を尊重して決めています。もちろん、命に関わるような場合は私が方針を決めることもありますが、その患者さんの背景にあるものをしっかりとくみ取る姿勢を大切にしています。患者さん自身も前向きに治療に取り組んでいただき、二人三脚で歩んでいけることを目標にしています。
祖父と同じ思いで地域に貢献していきたい
医師の仕事に対する思いをお聞かせください。
私が医師をめざしたのは、開業医をやっていた祖父の影響です。こうやって実際に医師の仕事をやっていると毎日が実に充実していて、この道を選んで良かったと改めて思います。祖父はもう13年ほど前に他界しましたが、同じ土地で診療していると昔を知る患者さんもやって来られます。すると祖父の話になり、「夜中であっても往診をしてくれた」「どんな時でも話をよく聞いてくれた」など、初めて聞く話が今の私とそっくりなんです。血は争えないと思いましたね。いつでも誰に対しても診療を提供し、最後まで患者さんの声に耳を傾け、患者さんのために最善な医療を提供する。祖父と私が似ているのは、その考え方が共通していたせいかもしれません。
プライベートはどのようにお過ごしですか?
私の妻は歯科医師で、現在は夫婦2人暮らしです。クリニックを開業する際は、よく相談に乗ってもらいました。新型コロナウイルス感染症流行前は2人でよく海外に行きました。私は野球をやるのも観るのも好きなので、アメリカのフロリダまで試合を観戦しに行ったことがあります。病院見学のため、短期留学で2週間ほどフランスに滞在した時もすごく楽しかったですね。景色も食べ物も好みに合って、日本人が暮らしやすい文化だと感じました。世間やクリニックがもうちょっと落ち着いてきたら、また夫婦で海外旅行に行きたいですね。健康でさえあれば、それぞれの人生の楽しみ方ができるでしょう。その大切さをつくづく感じます。
最後に、読者へ向けたメッセージをお願いします。
呼吸器疾患に関しては、幅広い治療や検査に対応できるように、専門的な設備をそろえたクリニック体制にしております。それは当院の強みの一つですが、診療の対象は決して呼吸器に限ったものではありません。体のどこかに不調をお感じであれば、どんなことでも気軽に相談にお越しください。また、入院や手術など、クリニックレベルでは対応できないことであっても、責任をもって他院に速やかにご紹介します。スピードを重視し、治療の機会を逃さないよう心がけております。「理由はわからないけれど調子が悪い」という方も遠慮する必要はありません。それを診るのが開業医の仕事です。今後は介護との連携なども深めながら、地域のかかりつけ医として、より多くの皆さんのお役に立ちたいと考えています。どうぞ期待していてください。