杉浦 知範 院長の独自取材記事
杉浦内科クリニック
(豊田市/梅坪駅)
最終更新日:2025/01/20

豊田市市木町に位置する「杉浦内科クリニック」。杉浦知範院長は名古屋市立大学を卒業後、市中病院で勤務、その後大学病院に戻り、20年以上、循環器内科の専門家として経験を積んできた。心臓と血管のスペシャリストで、心血管疾患の研究にも注力し、特に血圧に関して長年研究してきたという。大学病院では医療安全管理室で安全管理業務を担い、安全・安心な医療のあり方を学んだ実績もある。「患者さんの話に真摯に耳を傾け、しっかりと説明をし、安全で安心できる医療を提供したい」と話す杉浦院長に、診療時の心がけや展望などについて話を聞いた。
(取材日2024年9月17日)
大学病院での知識、経験を地域医療に生かす
大学病院で長く勤務されていたそうですね。

私は大学卒業後、市中病院での勤務を経て、大学院に進み医学博士の学位を取得、以降は循環器内科の専門家として大学病院で勤務しました。大学病院では専門的な医療を提供する急性心臓疾患治療部という心臓の集中治療室で副部長を務めていた時期があります。重症な心疾患の治療を行うのですが、治療を終えて退院してもまた増悪したり、救急の現場で命を取り留めても十分に回復せず後遺症を残してしまったりする方をたくさん見てきました。そこで重篤な症状になる前の早い段階から病気を見つけて早く治療をする、あるいは病気になった場合は再発しないよう適切に管理する、といったことの重要性を強く認識するようになりました。
先生は研究にも力を注がれていたとお聞きしました。
はい。病院の多くの患者さんから同意を得てデータを収集し、解析を行っていました。病気を発症した方にはどのような背景があったのか、どのような指標を使えば症状の悪化を予測できるのか、また健康診断を受診された方々を対象にデータを解析し、健康な方がどのように病気を発症するのか、予防にはどんなことが有用かなどを研究していました。膨大なデータを解析すると、どういった方々が病気になり悪くなっているのかなど過程が見えてくるのです。例えば、血圧の高い方から採取した検体を見ると、塩分摂取が年々増加する傾向があります。塩分についてはしっかり管理していくべきと痛感しました。現在も大学の研究員として研究を続けていて、データを整理して系統立てて考えるという研究者の視点が日々の診療や治療にも役立っています。
病院での医療安全業務についても教えてください。

大学病院のような専門的な医療を提供する施設においても、医療者と患者さんとの意思疎通が十分ではないことによるトラブルはあり、それらに対応する医療安全管理室で業務に携わっていました。医療ミスや医療過誤というより、術前の医師の説明と患者さんの受け取り方が違うケースや、手術をしても患者さんが納得されていないというケースが少なからずあったのです。「説明した」「聞いていない」とならないためには、徹底したわかりやすい説明をすること、文書などでも明示すること、患者さんが納得した上で次のステップに進むことが大切です。開業医となった今もこれらを徹底していきたいと考えています。
長寿のためにも、生活習慣病の適切な管理を
開業されて2年余り、患者さんはどのような方が来られていますか?

開業時は新型コロナウイルス感染症がまん延している中でしたので、そうした患者さんをたくさん診てきました。感染症の患者さんには今もお電話をいただいた上で対応しています。主な主訴は、高血圧症などの生活習慣病、風邪、喘息、また私が循環器内科専門であることから循環器疾患の方が来られることも多いです。心筋梗塞を発症した方や心不全、不整脈の方など、近隣病院などからの紹介のほか、健康診断で引っかかった方も来られますね。胸がどきどきする、胸が苦しいという症状の方もいらっしゃいます。不整脈は病気でなくストレスや自律神経の乱れから来る可能性もあり、お話をきちんと聞くことが大切です。年齢層は20~30代の若い方から高齢の方までさまざまで、豊田市内を中心に三河南部や尾張地方からも足を運んでくださいますね。
生活習慣病はどのようなことに注意すべきでしょうか?
若くして生活習慣病を発症する方の多くは、それまでの生活環境が大きく影響しています。食生活もそうですし、運動習慣もそうですね。今はインターネット社会で、長時間座ったままの方が多いのではないでしょうか。まずは定期的に健康診断を受けることが大切。血圧値、血糖値、コレステロール値は健康のバロメーターですから、ご自身で把握しておくと良いと思います。わかりにくい場合には、健診のデータをお持ちいただければ適切にサポートいたします。勤務医時代に難治性の生活習慣病を診療してきた経験から、なるべく早い段階で医療介入して、早めに治療することの重要性を感じています。ご自身でできることとして、まず一家に1台、血圧計を用意しておくことをお勧めします。
生活習慣病を悪化させないためにはどうしたら良いでしょうか?

生活習慣の改善に加えて、必要に応じて薬を使用し、適切に体を管理することが重要です。薬を仕方なく飲むのではなく、薬を使ってコントロールを図るという考え方で、今よりも悪くならない状態の維持をめざします。現代社会においてバランスの良い食生活や運動を継続することは現実問題として困難でもありますので、適宜、薬に頼って健康に近い状態の維持を図っていけば良いでしょう。必要に応じて薬を使用して適切に管理することが長寿につながると考えます。心臓や血管の病気は隠れた生活習慣病を背景に進行しますので、早い段階で発見して適切に管理し、重篤な病気に進展しないように介入していく。あるいは病気になった後もしっかり治療を管理して、再発しないようにする。当院ではそういったお手伝いをしていきたいですね。
地域に信頼され、寄り添う医療の提供を追求
先生が医師を志した理由、開業したいきさつを教えてください。

身近な人が大きな病気をして病気の怖さを感じ、健康のありがたさを実感するようになりました。そこで病気や健康に関わる仕事をしたいと医師を志すようになったのです。もともと開業を予定していたわけではなかったのですが、大学病院に同門の先生が入院され、クリニックの閉院を考えていらっしゃるということで継承のお話をいただきました。大学病院では管理的な業務の割合が増加し、診療の現場からは少し遠ざかっていることに一抹の寂しさを感じていましたので、熟慮した結果、医師を志した原点に帰り、生まれ育った土地で医療を提供しようと決断しました。スタッフは前の医院から引き続き勤務してくれている人もいて、私が教えてもらうことも多いです。みんな、各種検査や発熱患者さんの対応もしっかりしてくれて、大いに助かっています。
普段心がけていらっしゃることはありますか?
混んでいる時はなかなか難しいのですが、患者さんのお話をじっくり聞くように心がけています。慢性疾患の方、特に心臓病の方にはできるだけその時の状態や、日常の些細なことまで聞き取るように配慮しています。例えば、「体重が増えた」「最近眠れない」といったことも治療のヒントにつながるからです。高齢者は基本的に筋肉量が急激に増減することはなく脂肪もつきにくいので、体重の増減はそれほどありません。そのため増減がある時は、体内の水分が影響していることが多いと考えられるのです。血管の外に水分がたまるとむくみにつながることになります。また「眠れない」というのは単に生活リズムの乱れからくる場合もありますが、心臓の状態が悪くなっていることも考えられます。その辺りを注意しながらお話を聞いています。
今後の展望についてお聞かせください。

当院の理念は3つ。「地域の皆さんに信頼されて困った人に寄り添う医療をしたい、地域の方々の健康をサポートしていきたい」「大学で学んできたことを還元して、地域医療の向上に貢献したい、地域の方たちには健康を維持して長生きしてほしい」「大学でやってきた医療安全業務を生かし、安全で安心できる医療を提供していきたい」。これらを大切に、自分にできる限りの診療を行っていきたいですね。先にお話ししたように、小さなことまで話していただくためには、こちらがいつでも話しやすく信頼される医師であることが大事。常にそのような姿勢でいたいです。また、患者さんの悩みに対して、それが自分の専門でなくても、適切な医療機関をアドバイスすることも当院の役割だと考えていますので、何でもご相談してくださればと思います。