田中 紀浩 院長の独自取材記事
桜ヶ丘クリニック
(伊丹市/伊丹駅)
最終更新日:2022/07/11
2022年5月に開業した「桜ヶ丘クリニック」は阪急伊丹線伊丹駅から車で5分ほど、住宅や商業施設が立ち並ぶバス通りにある。田中紀浩院長は親しみやすい話しぶりと朗らかな笑顔が印象的なドクター。過去には多くの地域基幹病院で、総合内科や内科救急の診療に打ち込んできた。また腎臓内科や医院での診療を経て「最初から正しい診断をつける」ことの重要性を痛感。同時に超高齢社会の今だからこそ「治療や予防でかかりつけ医の担うべき役割は大きい」と、開業を決意したという。自らには高度な診療技術や職業倫理を課す田中院長だが、患者に対しては「幸せの中身を決めるのは患者さん自身です」と寄り添う優しさも。そこで同クリニックの診療内容や、熱意の背景にあるこれまでの歩みをじっくりと聞かせてもらった。
(取材日2022年6月6日)
「病気だけでなく人を診る」診療を
クリニックの特徴をご紹介ください。
総合内科と腎臓内科を軸に、地域のかかりつけ医として幅広い診療を行います。「幅広い」というのはさまざまな症状や内科系の病気を診察することですし、ここで適切な診断をつけ、治療もできるところまでなるべく行います。さらに長期にわたり経過をフォローしながら他の病気の予防や早期発見にも目を配り、必要に応じて高度な治療を行う医療機関への紹介も可能です。僕は総合内科や内科救急での診療を通じて、これまでの診断や治療部位にとらわれず、今起きている異常や病気を正確に見極めるための診断力と治療技術を高めてきました。また開業にあたっては、内科系のクリニックでは珍しいと思いますがCTを院内に設置し、診療放射線技師による撮影を行っています。患者さんの全身、さらに心まで支えるような「病気だけでなく人を診る」診療がモットーです。
ご開業までは、どのような診療をされてきたのですか?
大学卒業後は神戸労災病院で研修を受け、そのまま総合内科や内科救急で診療経験を積みました。当時は日夜を問わず患者さんを診て、休日は大量の医学書や論文と向き合う過酷な日々でしたが、指導医に恵まれ貴重な経験ができたと思います。その後は第二大阪警察病院の腎臓内科で勤務しながら複数の病院で夜間救急診療も担当し、さらに医院の院長として地域医療を経験しました。内科救急には、複数の病気があったり治療が不十分であったり、複数の病院に通院していて主治医がわからなかったりと、状況や情報の混乱した患者さんが多数搬送されてきます。治療を始めながら整理していきますが、手遅れになる患者さんも少なくありません。このような事態を防ぐには、患者さんの健康状態や病気の全体像を正確に把握して、一定の水準まで治療できるかかりつけ医が必要だと強く感じるようになりました。
CT検査も受けられるそうですね。
16列CTがあり、画像は神戸大学放射線科の医師とダブルチェックを行っています。血液検査や心電図では、心臓や腎・肝臓などが正常に機能しているかどうかを調べていますが、検査学的にはこれだけでは不十分で、臓器の形や実際の状態を確認する形態学的な検査が欠かせません。CTでは、例えばがんの有無や肝硬変の程度などが視覚的に確認できます。特にがんの有無の確認は非常に重要で、開業を考えた時にCTの導入は当然のことでした。またご高齢の患者さんでは、検査のたびに大病院へ行くこと自体が大きな負担になるため、通い慣れたかかりつけ医院でCT検査ができれば、患者さんのご負担も軽くなると考えています。
正しい診断と本当に必要な治療の提供をめざす
では、こちらで受けられる診断について詳しく教えてください。
総合内科にはだるさや熱、胸痛、咳などの症状が続き、原因不明の患者さんが多く来られます。セカンドオピニオンの希望も多いです。問診や過去のデータなどから疾患を想定し、ガイドラインや教科書に即して必要な検査を行います。この段階では見分けるべき疾患を的確にリストアップします。またCT検査は内科クリニックでは省略されがちですが、重大な病気を見逃さないためにも必要な検査は愚直なまでに行います。専門性を要する領域では、どうしても「あの先生の診断だから正しいはず」という思い込みが生じがちですが、それでは別の医師が改めて診察する意味がありません。もちろん専門家も間違える時はあります。その際に「専門の先生が診ているから大丈夫」と思うと、2人目以降の医師はもれなく誤診し続けることになります。ですから、「思い込みを捨てあらゆる可能性を検討する」そして「必要な検査を怠らない」という総合内科的な診断を徹底しています。
治療や予防・早期発見にも注力しているそうですね。
一般内科クリニックでは、症状の急変や治療のレベルを考慮して、患者さんを積極的に専門医療機関へ紹介する場合がありますが、僕はできるところまでは主治医として責任をもって治療したいと考えています。もちろん、救急診療の経験から紹介すべきタイミングの見極めも熟知しています。ご高齢になると複数の病気を抱えがちですが、生活や人生観も含めた患者さんの全体を知っていれば、今はどの治療を優先すべきかが見えてきます。例えば80歳を超えてから糖尿病を発症した方で、10~20年後の悪化を防ぐために厳格な食事療法は必要でしょうか? こういう切り口で治療を行えるのが、主治医の利点であり役割だと思います。また現在発症している病気だけでなく、今後起こり得る病気や、早期のがんのように画像検査で偶然写り込む可能性のある病気にも注意深く目を向けています。
診療の際に、心がけていることはありますか?
今患者さんが抱えている各々の疾患の治療のみを最優先して病気を治すことが、すべての患者さんの幸せにつながるとは限らないと思っています。年齢もありますし、例えばゆっくり進む前立腺がんの初期と大腸がんの末期を併発している場合、前立腺がんの治療を急ぐ必要はありません。ただ、各疾患を専門の医師が別々に診ていると、そのような調整が見落とされることもあります。病気だけでなく生活や人生観も尊重しながら患者さんと治療内容の落としどころを見出して、最終的に患者さん方の幸せにつながる治療がしたいですね。もちろん、医学的に不可欠な治療や服薬もありますが、その際にも「○○しなければいけない」という言葉は使わず、「僕はこうなってほしくない」という気持ちを伝えます。救急で命を落とす患者さんを日々見ていましたので、「そうはなってほしくない」と心の底から思っていますから。
患者の心身に寄り添う
総合内科の医師をめざした経緯をお聞かせください。
研修当初は楽な医療に流れがちでしたが、今もなお尊敬する3人の指導医との出会いがあり成長させてもらいました。診断がつけられないときにすぐに紹介するのではなく、まずは主治医としての強い自覚をもって、専門外のことでも徹底的に考える。あるいは患者さんに説明をする際には、患者さんが抱いている不安や求めていることを想像して、まずそこから話をして信頼関係を結ぶ。さらに救急患者さんのさまざまな病気に対して、診断から治療まで1人で対応できるスキル。これらの指導から、内科の医師として必要な診療技術を身につけられ、医療に対する向き合い方も大きく変わったと思います。
ご苦労も多かったと思いますが、そこまで頑張れるのはどうしてですか?
幼い頃から医師という職業に強く憧れて勉強も頑張っていましたが、高校以降は家庭の経済状況が悪化して、経済的にも精神的にも非常に苦しく落ち込んだ時期がありました。そんな経験からか、仕事があるありがたさ、お金のありがたさは強く感じますし、お金を払って受診してもらっているのだから、プロとしてそれに応える仕事をすべきだという思いは昔も今も強いです。また、病気で弱っている人や頑張れない人の気持ちも痛いほどわかるので、精神的に弱っている方に冷たい言葉をかける医師には絶対なりたくないですね。病気になると、ご家族がサポートすることが多いですが、医師という仕事も社会的にサポートできる立場でありたいと強く思っています。
読者へのメッセージをお願いします。
これまでの経験を生かして、正しい診断をつけ適切な治療ができる、さらにこれから起こる可能性がある病気にも目を向けた本当の「予防」を提供していきたいと考えています。もちろん風邪など日常疾患での受診や、セカンドオピニオンにも対応しています。病気や体の不調でお困りの方に、心身ともに「ここへ来て良かった」と信頼してもらえるクリニックをめざしていますので、気がかりなことがあればご相談ください。