全国のドクター8,936人の想いを取材
クリニック・病院 160,175件の情報を掲載(2023年6月11日現在)

  1. TOP
  2. 大阪府
  3. 豊中市
  4. 少路駅
  5. あお在宅・往診クリニック
  6. 池田 光憲 院長

池田 光憲 院長の独自取材記事

あお在宅・往診クリニック

(豊中市/少路駅)

最終更新日:2022/07/22

池田光憲院長 あお在宅・往診クリニック main

豊中市西緑丘にある「あお在宅・往診クリニック」は、クリニックを中心に、豊中市・箕面市・池田市・吹田市など半径5~6km圏内の家庭や施設を対象とする訪問診療専門のクリニックだ。院長を務める池田光憲先生は、救急救命の分野で命の最前線を預かってきた医師の一人。消えようとする命の炎をつなぎ止めることを使命とし、研鑽を重ねる過程で感じた疑問への答えを見つけ出すべく、訪問診療を専門とするクリニックの開業を決意したという。「現在の医療体制への疑問であり、死生観との出会いだったのかもしれません」と話す池田院長の瞳は、穏やかであると同時に、医療従事者ならではの「人の命」に対する責任がにじむ。今回はそんな池田院長に、開業の経緯や訪問診療への想いについて、詳しく聞かせてもらった。

(取材日2022年6月15日)

365日、24時間体制で医療を届けるクリニック

まずは「あお在宅・往診クリニック」について教えてください。

池田光憲院長 あお在宅・往診クリニック1

当院はクリニック名からもわかるように、訪問診療を行う在宅療養支援診療所です。一般的なクリニックとは違い、ここで診療を行うことはなく、ご依頼いただいた患者さんのもとへ足を運んで診療を行います。そのため診療科を限定することはせず、患者さんにとって必要な、われわれにできることはなんでも行います。病気による疼痛管理や終末期ケアはもちろん、在宅での呼吸管理や栄養管理、注射、超音波をはじめとする各種検査、褥瘡(じょくそう)の管理、さらに救急時の対応は外科処置を含め、24時間365日行っています。地域の皆さまに必要な医療を届けることをめざしていますので、まずは「家まで来てくれるクリニックがあるんだ」と知っていただけるとうれしく思います。

訪問診療専門のクリニックをつくろうと思ったのはなぜですか?

私はこれまで、救命救急や外科、集中治療などの診療に携わってきました。私はその中で、人の命を救うことにやりがいと使命感をもとに頑張ってきました。しかし、長く働いていくにつれて、少しずつ違和感が顔を出すようになりました。自分が行っている医療は誰のためのものだろう? 今の医療は病気を「治す」ためだけのものになっているのではないか? できる治療をすべて行うことが本当に患者さんのためになっているのか……。人間の生死と向き合い続ける日々の中でいろいろな感情が生まれるようになったんです。また、私はドクターカーやドクターヘリを活用した「病院前診療」と呼ばれる医療にも従事してきました。命を救うために一分一秒でも早く医師が現場に駆けつけるというのがコンセプトで、災害時などにも威力を発揮します。この病院前診療の考え方の延長線上に、自宅でも救急医療を提供できるのではないか、と考えたのもきっかけの一つです。

シリアスな現場で命を見つめてきたからこそ、生まれた疑問かもしれませんね。

池田光憲院長 あお在宅・往診クリニック2

もちろん、医療によって多くの人の回復につながることもたくさんあります。そんな時は「本当に良かった」とうれしい気持ちになります。しかし、一方では90歳を超える高齢者の方が死を目前に運び込まれ、蘇生のためのさまざまな処置を受けます。心臓マッサージを行うと、肋骨が折れることも少なくありません。これは何のための医療だろう、患者さんにとって幸せな最期なのだろうか、と考えても仕方がないことかもしれませんが、超高齢社会の日本において、目を逸らしてはいけない問題のように感じました。自問自答を繰り返し、その結果、「治す」ことだけを目的に医療を提供するのではなく、患者さんの価値観に寄り添い「支える」ことがとても大切なのではないかと考えるようになりました。

患者の全身を診る「かかりつけ医」をめざして

そこでたどり着いたのが、今の訪問診療というスタイルなんですね。

池田光憲院長 あお在宅・往診クリニック3

そうですね。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行で、今の日本の医療システムの問題点が浮き彫りになったように感じたことも大きいです。感染症とはいえ、苦しみながら自宅で療養するしかない人がいる。とても不安だと思います。それでもさまざまな理由で、病院では受け入れることができない。苦しさのあまり救急車を呼んでも、受け入れ先が見つからず何時間も救急車の中で過ごすしかない人も多くいらっしゃいました。現状の医療システムについてどれほど考えても、すぐに解決できない問題はたくさんあります。だからこそ、自分でできる範囲のことから始めよう、不安に思う患者さんのもとに行こうという気持ちが大きくなり、訪問診療のスタイルを選んだんです。

クリニックとして特定の診療科を大きく掲げていないのはなぜですか?

今は、病院も町のクリニックも、診療科が細分化しています。ですから、1人の人が、複数の病院にかかることが当たり前になっています。こういった現状は、患者さんが病気に対する専門的な治療を受けられるという大きなメリットがあるものの、患者さんの全身状態を把握したかかりつけ医を不在にしているのではないかとも思います。かかりつけ医の不在は、「いざという時に相談する先がない」ということにつながります。私は救急救命の領域で働き、人の命を守るためにさまざまな検査・処置をしてきました。その経験をフルに生かして、診療科を問わず、患者さんのすべてを診ていきたいと思っています。

在宅診療だけでなく救急時の往診にも対応されているのですね。

池田光憲院長 あお在宅・往診クリニック4

在宅診療は、主に高齢の方や病気や障害によって通院が難しい患者さんが対象です。ご家族やケアマネジャーを含めてミーティングを行い、患者さんやご家族の希望に沿う形で医療計画を立て診療を行います。一方、救急時の往診は全年代が対象。急な病気やけがに対して迅速に対応し、必要に応じて処置や処方を行っています。相談は無料ですので、お子さんが発熱や嘔吐した時や、救急車を呼ぶべきなのか迷ってしまった時などにお気軽にご相談いただければと思います。

生と死に寄り添い、人生を見つめ、支えるための医療を

訪問診療では患者さんのご自宅に伺うわけですが、大変だと感じることはありませんか?

池田光憲院長 あお在宅・往診クリニック5

患者さんのプライベートな空間にお邪魔するわけですから、人としての礼儀には気をつけています。訪問診療はITとの親和性が高く、スマホで電子カルテの閲覧もできますし、モバイルプリンターで処方箋もすぐにプリントできます。小型のエコー機器もありますから超音波検査もできます。MRI検査などできないこともありますが、これまで働いてきた病院と連携を取り、私が信頼している先生方に検査・手術などをお願いできる環境も整えています。そもそも、訪問診療は患者さんを主役として、どう生きたいかをサポートするのが役目ですから、場所や環境はあまり関係ないのかなと思います。

クリニック名の「あお」には、どんな意味があるのでしょうか?

「あお」という色は、人によって青、碧、蒼、藍……など、さまざまなイメージがあると思います。空や海、山々を想像するかもしれません。つまり「あお」という言葉が持つ意味は、人によってグラデーションがあるんですよ。私はそのグラデーションが、人生のようだと感じました。人生観や死生観は人それぞれで、どれを選んでも正解・不正解はない。人が生きる生と死の狭間で、患者さんの想いはさまざまなグラデーションを描きます。私たちはそのグラデーションをそっと支えていきたい。また、私は趣味でサーフィンをするんですが、空と海が溶け合う時に生まれる青のグラデーションの美しさは格別です。その景色のように、患者さんの人生の美しさも大切にしたいという願いがこもっています。

それでは最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いします。

池田光憲院長 あお在宅・往診クリニック6

この地域は私が生まれ育った、深い愛着のある場所です。私はここで、医師だった祖父の背中を見て育ちました。ですから今、医師としてこの町に帰ってきたことを本当にうれしく思っています。高齢化が進む日本で、この地域も例に漏れず高齢化が進んでいます。これから医療を必要とする人が増えることは間違いありません。医療資源の多い地域ではあるものの、まだまだ必要な医療にたどり着けていない人もたくさんいらっしゃいます。そんな人やご家族に、医療従事者として安心を届けられたらいいなと思っています。在宅での暮らしが、ご本人にとって少しでも快適であるように、これからも努力してまいります。医療の形も人の人生もさまざま。こんな形もあるんだと知っておいてくれたらうれしいです。

Access