切る前にまずは生活改善から
内科的アプローチによる痔の治療
なるせ内科・胃腸のクリニック
(町田市/成瀬駅)
最終更新日:2016/01/24


なかなか人に言えない痔の悩み。場所が場所だけに「診察を受ける踏ん切りがつかず」、「手術が怖い」といった理由で、つらい痛みを我慢しながら日々を過ごしている人は少なくないのでは? しかし今、必ずしも「痔の治療」=「手術」というのは当てはまらない。「痔はいわゆる生活習慣病。生活習慣を改善し、薬などをうまく用いることでよって手術の必要がなくなる場合もあるんですよ」と話すのは、「なるせ内科・胃腸のクリニック」の岩田誠一郎院長。生活習慣の改善と内科的な治療は、手術を回避するだけでなく、痔の疾患に多いとされる再発を防ぐ大きな効果もあるという。クリニックが推奨する内科的な痔の治療について詳しく伺った。(取材日2012年6月4日)
目次
切らずに治す、再発を繰り返さない痔の治療
- Q主な肛門の病気とその原因について教えてください。
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A
▲お尻に負担をかける排便習慣の積み重ねが痔を引き起こす
痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう、この3つが肛門の3大疾患といわれています。いずれも症状は異なりますが、病気を引き起こす根っこはみな同じで、肛門に負担がかかる排便習慣が原因だといわれています。便秘で便が硬くなったり、下痢が勢いよく出ることで肛門が傷つき、痔ができてしまうのです。排便の習慣には食事の内容やとり方、睡眠不足など、生活習慣が大きく関わってくるため、痔は生活習慣病の一つといってもよいでしょう。
- Qこちらではどのような治療を行っていますか?
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A
▲一人ひとりに合った薬を処方し、スムーズな排便をサポート
3大疾患のうち、痔ろうは外科手術でしか根治できませんが、痔核・裂肛に関しては塗り薬を処方し、生活習慣の改善を指導を行います。痔の治療というと手術のイメージが強いようですが、切らずに治るケースも多いんです。当院ではこうした内科的治療をまず数ヵ月続け、それで改善しなかった人のみ症状に応じて注射や手術による治療に切り替えています。生活習慣の改善で、まず行うのは食生活の見直しです。便の原材料である食べ物が不規則に体に入ってくれば、当然体から出ていくのも不規則に。そこで規則正しい食生活を心がけてもらい、内容についても繊維質や水分をたっぷりとってもらうよう指導します。必要な場合は薬も処方しています。例えば下痢になりやすい人は下痢になりにくいお薬、便秘の人には便がスムーズに出るお薬をご本人に合わせて処方し、スムーズな排便をサポートします。実際、このアプローチで手術が必要ない状態までに改善するケースは、当初の予想以上に多いと感じています。
- Q診療の流れを教えてください。
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A
▲患者の生活習慣もしっかりヒアリングして痔ができる原因を探る
問診票を書いていただいたあと、診療で普段の生活習慣から過去の病歴なども含めしっかりとお話を伺います。たとえご本人が気づいていなくても、話を聞くと「ああ、やっぱり」と、悪い排便習慣を引き起こしている原因が見えてくるものなんですよ。お話を伺ったあとは、診療台に横になっていただき、診察を行います。診察では肛門鏡と呼ばれる道具を使い、肛門の中の状態を確認します。お尻を押し広げる形で道具が入るので多少の違和感はありますが、潤滑油がわりにゼリーを塗ったり、患者さんと呼吸を合わせたりしながら、できるだけ苦痛がないように配慮しています。診療にかかる時間は5分弱。大腸の内視鏡検査のように下剤を事前に飲んでいただくこともありませんし、検査着に着替えることもありません。
- Q治療期間はどのくらい?内科的治療で治らない場合は?
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A
▲肛門専門の医院と違い標榜科目が多いので、気後れせず通える
生活習慣を変えるのは毎日の積み重ね。長い時間かけて悪くなったのですから、そのぶん時間もかかると考えたほうが良いでしょう。当院では生活習慣の改善や薬の処方を数ヵ月間続け、それでもよくならない場合、痔核に対しては「ジオン注射」による治療に切り替えます。これは、中国の消痔霊(しょうじれい)という漢方の生薬から作られた薬で、痔核に注射すると痔の組織を硬く小さくするというもの。そして最後の手段が外科手術となります。ただ、一見して手術が必要だと判断しても、生活習慣の見直しをすることは必須であると考えます。なぜなら、たとえ手術をしても悪い排便習慣が残ったままでは結局再発してしまうから。最初に生活習慣の改善指導に力を入れるのは再発させないためにも非常に重要なことなのです。
- Q痔の症状のある人には大腸がんの検査もすすめているそうですね。
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A
▲岩田院長は専門医資格も持つ内視鏡検査のエキスパート
はい。なぜなら、痔の発症を誘引する便秘は、大腸がんの危険因子でも言われており、便秘の人に大腸がん発症率は高いといわれているからです。大腸がんの検査として、当院では、大腸内視鏡検査に力を入れています。鎮静剤を使用し、ほとんど眠っている状態で検査を行うので、受けられた方の感覚としては「知らないうちに終わっていた」とか「つらくなかった」という声が多いようです。内視鏡検査で大切なのは苦痛を感じさせない技術ももちろんですが、一番はやはり正しい診断をすること。私は開業前、外科医として消化器系がんの検査・手術を数多く手掛け、たくさんの症例を見てきた経験、そして内視鏡検査の専門医資格も生かして、わかりにくい症例も見逃さないよう、しっかり診て正しい診断を心がけています。