「生きた証」にもなるACP
自分らしい生き方を考える人生会議
たかはし内科クリニック 自由が丘
(世田谷区/自由が丘駅)
最終更新日:2024/08/30
- 保険診療
人生はいつ何が起こるかわからず、それは重い病気の患者だけの話ではない。今は健康であっても、いつ緊急を要する状態となり、体の負担ともなり得る治療の選択を迫られることがあるかもわからない。「たかはし内科クリニック 自由が丘」ではACP(アドバンス・ケア・プランニング)の外来を設け、もしもの時の対応について本人の意思を事前に確認している。高橋賢至院長いわく、健康や治療について家族と話す時間は、自分の人生を考える良いきっかけになるという。話し合った内容は一度決めたら終わりというわけではなく、何度でも考え直せるそうだ。緊急時には本人の意思として取り扱われ、「生きた証」を残すことにもつながるというACPについて、高橋院長に話を聞いた。
(取材日2023年3月28日/更新日2024年8月27日)
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- QACPとは何なのでしょうか?
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A
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは、急な病気を発症した際にどのような治療を受けたいか、もしくは受けたくないのかを事前に相談をして計画をしておくことを指します。一度決めたら終わりというわけではありません。人生が進んでいく中で価値観が変わることもありますから、誕生日など節目ごとに話し合いをすることをお勧めしています。ご自身の体調や意思を確認し、人生について考える場であることから「人生会議」という言葉で表されることもあるACP。急性期の診療の現場でさまざまな患者さんの悩みを経験した医師が、状況にあった治療法の選択についてご本人にアドバイスし、ご本人の思いを形に残す取り組みを行っています。
- QACPを行う目的を教えてください。
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A
急な病気を発症し緊急の治療が必要となった時に、患者さんの希望に沿った治療を選択できるようにすることが一番の目的です。例えばご本人に意識がない場合は、患者さんの思いを知ることができず、ご家族の判断で治療を進めることになります。ところが気持ちに余裕がない中で決めた治療内容が、患者さん自身の考えとは異なることも多々あります。意識の戻った患者さんが「この治療は受けたくなかった」とおっしゃるケースも目にしてきました。今は健康であっても、いつ急な判断が必要な状況になるかはわかりません。もしもの時にご本人の意思に沿った治療を進められるよう、周りの人と人生会議をあらかじめ行っておくことはとても重要です。
- Q思いをうまくまとめられるか不安です。
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A
入院もしていない段階で「もしも」の時のことを考えるのは難しいことかもしれませんね。これまでカテーテル治療や人工呼吸治療などの集中治療の現場に多く携わってきた経験から、治療の現場がどのようなもので、「もしも」の時に迷うポイントについてアドバイスをさせていただきます。周りの人とまさかの時の対応を考えることは、自分の価値観をじっくり見直す機会となります。さまざまなテーマについて話すことで、人生でやりたいことなど新たな気づきを得たり、自分の思いを残すことにもつながります。冊子やゲーム形式でのツールも生かして少しずつ考えをまとめていくと良いと思います。「自分らしい生き方」を一緒に考えていきましょう。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診・検査で普段の健康状態を確認
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まずは現在の病状について詳しく聞かれる。普段の治療内容や悩んでいる症状を医師に伝え、もしもの時にはどのような治療が想定されるのかを共有してもらう。同院では治療の内容を理解してもらいやすいように、画像や動画に加えて、これまでの経験を踏まえた説明を行っている。急性期に行われる治療が患者の人生観に合うか、体力的に耐えられるかまで考えてくれるという。
- 2ACPに関する説明を受ける
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冊子を見ながら、ACPではどのようなことが対応可能かの説明を受ける。そして、自分自身と周りの人、皆が納得できる治療方針をじっくりと時間をかけて医師と話し合う。人工呼吸器などの治療は一度始めたらやめることはできないと説明されることもあるが、同院のガイドラインには治療の中止についても記載がある。つまり、望まない状況になった場合には、中止を検討するのも可能ということだ。
- 3自宅で家族や周りの人と話し合う
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ACPの外来での相談をもとに、希望する治療について家族や介護に関わる人など周りの人と相談する。誕生月や年末年始など、節目や家族が集まるタイミングで何度も話し合うことで、互いの思いを知ったり自分の人生を振り返ったりする良い機会にもなるという。同院では、初めての患者でも無理なく取り組めるようにゲーム形式でのツールも取り入れているので、無理のないペースで進められるだろう。
- 4クリニックで人生会議を行う
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患者と家族、医師も交えてクリニックで人生会議を行い、今後の過ごし方の方向性を決めていく。同院では会議の内容をカルテに記録し、もしもの時は搬送先の病院に情報提供を行うという。また、ACPの事前指示書として、希望する内容を書類に記載してもらい自分で保管することも可能。書類は一度作ったら終わりではなく、再度の話し合いによっていつでも変更できる。自分らしい治療を受けられるように準備してもらえる。
- 5話した内容を記録に残してもらう
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ACPの事前指示書は、症状や状況によっては弁護士も交えて作成。内容に誤りがないことを確認したらサインをする。書類は公的文書として扱われ、緊急時には本人の意思として扱われる。搬送された病院で、治療に関する意思が変わった場合は、事前指示書ではなくその時の本人の意思が第一に尊重される。同院では、ACPの外来を受診した患者であれば、入院後の治療方針に関する相談もできるという。