口腔機能維持のための検査や訓練が
健康寿命の延伸につながる
久里浜駅前マリン歯科口腔外科
(横須賀市/京急久里浜駅)
最終更新日:2021/12/14
- 保険診療
年齢を重ねると、体の至るところに衰えがみえてくる。「口」も例外ではない。「久里浜駅前マリン歯科口腔外科」の小野沢基太郎院長は、歯や口から全身の健康まで考えて診療を行っている。開業前は大学病院の口腔外科で研鑽を積み、栄養サポートチーム(NST)を率いる経験もしてきた小野沢院長。低栄養の原因の一つでもある「嚥下障害」についても造詣が深い。「口腔機能を維持することが、健康寿命の延伸につながります」と話す小野沢院長に、口腔機能低下と健康障害について、また同院で行っている「嚥下内視鏡検査」についても話を聞いた。
(取材日2021年12月3日)
目次
口腔機能の低下が嚥下障害や誤嚥性肺炎を引き起こす。健康寿命を延ばすために、気づいた時から検査・訓練を
- Q口腔機能の低下は、全身にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
-
A
口腔機能が低下すると、摂食や嚥下障害・構音障害・誤嚥性肺炎・窒息・低栄養や脱水など、さまざまな症状を引き起こします。口腔には大きく分けて4つの器官としての機能があります。唾液を分泌して咀嚼や嚥下を行う「消化器」、酸素を取り入れて生命を維持する「呼吸器」、意思を伝達するための「発声器」、食べ物を認知して味わう「感覚器」。このように役割は多岐にわたるため、その機能の低下による全身への影響は小さくありません。
- Q嚥下障害について教えてください。
-
A
「食事」はいくつかの動作によって成り立ちます。まずは目の前の食物を目や鼻で認識し、適切な量を口に運びます。口に入った食べ物は咀嚼により唾液と混合され、味蕾で味を認識しながら嚥下しやすい食塊とします。これを舌で喉に送り込み、飲み込みます。皆さんも日々行っている一連の動作ですが、このプロセスのどこかがうまく機能しない場合「嚥下障害」となります。また人間には誤嚥を防ぐために、飲み込む目的の「嚥下反射」と、異物を押し出す目的の「咳反射」が備わっています。しかし加齢などによりこの機能が衰えると、食べ物が正しく取り込まれず、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。
- Qどのような症状があれば診療を受けるべきなのでしょうか?
-
A
次に挙げる項目に1つでもあてはまったならば、口腔機能低下症の検査を受けることをお勧めします。硬いものが食べにくい、汁物でむせる、口が乾く、薬が飲みにくい、滑舌が悪い、口臭が気になる、食事をする時間がかかるようになった、味がわかりにくい、食べこぼしをするようになった、食後に口の中に食べ物が残るようになった、奥歯を噛みしめることができない。これらの症状は厚生労働省の口腔機能向上マニュアルでも取り上げられており、放置すると摂食・嚥下障害といった口腔機能障害に進んでしまいます。
- Qこちらでは嚥下内視鏡検査にも対応していると伺いました。
-
A
嚥下内視鏡は、咀嚼能力、食物の混ざり具合、飲み込み方などを観察するための医療機器です。視診や触診などいくつかの検査と合わせて用います。放射線を用いないため被ばくの心配もなく、所要時間は10分程度です。鼻腔にゼリー状の表面麻酔を使って、鼻から内視鏡を挿入します。初めはそのままの状態で観察をし、次いで検査食を用いてチェックします。診るのは主に上咽頭・舌根・喉頭の状態で、誤嚥や喉への食物の残留を確認することができます。検査の結果、誤嚥がみられる場合には嚥下訓練を行います。
- Q嚥下訓練とはどのような内容なのでしょうか?
-
A
まずは虫歯治療やクリーニングで、口腔衛生状態を整えるところから始めます。次にマッサージです。麻痺があったり、十分に食事を経口摂取できていない方を対象に、口唇・舌・頬といった口腔周囲の筋肉をマッサージします。また検査結果をもとに一連の動作の中で患者さんが苦手とする部分を見つけ、評価に応じて段階的な筋力増強訓練を行います。食事形態や食事中の姿勢の調節も大切ですね。介助を必要とする患者さんの場合は、ご家族に介助方法についてお話しします。このように計画を立てながら進め、口から食べる機能の回復をめざすのが「嚥下訓練」です。