二森 浩行 院長の独自取材記事
にもり内科クリニック
(川崎市麻生区/柿生駅)
最終更新日:2025/06/26

「生まれ育った柿生の町や麻生区の医療に貢献したい」、医師を志した時からそう考え、2021年に「にもり内科クリニック」を開業した二森浩行院長。子どもから高齢者まで幅広く訪れる同院で、内科全般の診療に加え、専門家による内視鏡検査、発熱症状専門の外来などにも対応し、さらに医師の増員や分院の開設で地域ニーズに応える体制づくりを進めてきた。「地元ならではの体験や悩みを共有できるのも自身の強み」と話す二森院長に、地域医療に対する考えや地元・麻生区への思いなどについて聞いた。
(取材日2025年3月13日)
診療体制の拡充やオンライン診療でより受診しやすく
クリニックの特徴や分院の開設についてお聞かせください。

生まれ育った麻生区柿生で皆さんのお役に立ちたい、と2021年に開業したクリニックです。内科全般の診療を中心に、かかりつけ医院として子どもから高齢の方まで幅広く診ています。私は新百合ヶ丘総合病院で消化器内科や救急医療、緩和ケアなどに従事し、在宅医療専門のクリニックでも勤務しました。多様な経験をもとに、当院でも日本消化器病学会消化器病専門医として内視鏡検査を行い、訪問診療では痛みの緩和に細かく対応できることなどは特徴の一つでしょう。さらに2024年4月から女性医師の天神和美先生が加わり、受診を希望する女性の患者さんも増えています。また、区内で医療機関が不十分なエリアを少しでも減らしたいと考え、2025年1月に分院の「くろかわ内科クリニック」を黒川駅近くに開業しました。これまで以上に、麻生区の医療の質を高め、地域に貢献していきたいです。
医師の増員で診療体制も拡充されたのですね。
私と天神先生、または非常勤医師による二診体制になり、患者さんの受診のご希望に添うよう努めていますが、待ち時間が長いこともある点はご了承ください。天神先生は私と同じように地域医療に熱心な方で、専門は消化器外科ですが、婦人科領域にも対応でき、女性の患者さんで肛門や直腸の診察などの場合も受診しやすいと思います。私とは異なる観点で診療できる点も患者さんのメリットでしょう。内視鏡検査も私と2人で担当できるため、検査予定が以前より前倒しで組めるようになりました。また、分院である「くろかわ内科クリニック」の大内崇弘先生は脳神経内科が専門で、当院で週1回、当院の非常勤医師を務めています。頭痛やめまいの症状、認知症のご家族からの相談などは、「この日はその分野に詳しい先生が来るから」と受診を勧められるので、診療の幅が広がりました。
そのほか外来診療でどんな変化がありましたか?

地域の皆さんに受け入れていただき、天神先生も来られて患者さんは増えています。子どもの患者さんも案外多く、近隣の小児科クリニックの混雑時には当院にご紹介いただく場合もあるほど。目の前が通学路なので、子どもたちが登下校中に「ニモ先生〜」と声をかけてくれるのもうれしいですね。また、2025年3月からはオンライン診療も始めました。現在は花粉症、自宅の検査キットで陽性になった新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、多汗症が対象で、今後は通常の外来診療もオンラインで行えるよう準備を進めています。利用は30〜40代や子どもの患者さんが中心で、特に子どもをクリニックに連れて行くのが大変という親御さんには便利だと思います。
最期の瞬間まで患者に寄り添った医療をめざす
胃の内視鏡検査では、検査が苦手な人にどんな工夫をされていますか?

痛い・つらいのイメージで内視鏡検査を敬遠されると、病気の発見が遅れることもあるため、より多くの方が少しでも楽に検査を受けられるよう心がけています。当院では挿入時の痛み軽減が図れる経鼻内視鏡を使用しますが、それ以上に和やかなトークとリラックスできる雰囲気づくりで、前段階の緊張を緩和することを大切にしています。検査内容や手順の丁寧な説明はもちろん、この先生なら大丈夫と思ってもらえるよう、いろいろな話をして不安の解消に努めています。それでも抵抗のある方には鎮静剤も使用できますし、初めて検査を受けた方に「こんなに楽だとは思わなかった」「また検査を受けよう」と言っていただけたらうれしいですね。
訪問診療にも熱心に取り組まれていますね。
当院の理想は「地域の皆さんの一生をトータルサポートできるようなクリニック」。病気にならないための健康診断から自宅療養までカバーするのは当然と考え、その一環として訪問診療を行っています。新百合ヶ丘総合病院で救急医療や緩和ケア病棟で患者さんの苦痛に対するケアを行った経験は、さまざまな症状への対応、緩和ケアなどが必要な訪問診療でとても役立っています。さらに急な体調の悪化で手術や治療が必要なときには適切な医療機関を選んでご紹介できます。老老介護などで介護力が不足しているご家庭には、緩和ケア病棟での療養のメリットをお伝えし、在宅療養では主治医を中心に訪問看護や訪問介護が手厚くできるというように、複数の情報と選択肢を提示できます。天神先生も緩和ケアに詳しく、訪問診療では患者さんとご家族に寄り添って対応されています。
先生が訪問診療で大切にされていることは何でしょうか。

私も父が病気をした際に感じたのですが、ご本人は病気を受け入れても、ご家族は何かしてあげたいという気持ちが大きいものです。ご本人だけでなく、それ以上にご家族に重きを置き、ご家族や患者さんの周囲にいる方と同じ視点になるよう心がけています。一方で、急変時の延命措置など医療面で確認すべきこともあり、心情のバランスには注意しています。ただ、自分のことに置き換えて話をしていると気持ちが入ってしまい、特に患者さんが亡くなったときはご家族やスタッフと一緒に涙を流してしまうこともあります。そういう心が震える医療というのはご家族と一緒に深く入り込まないと届かない域なのでしょう。日ごろから寄り添ってもらい、理解してくれた先生に最期を看取ってほしいという思いに応えるため、一人ひとりの患者さんと深く関わり、最期の瞬間まで寄り添うことが訪問診療を含めた医療のゴールと考えています。
地元の医療への貢献をめざし人材や設備の充実を図る
発熱症状に対する外来を設けたのはなぜですか?

新型コロナウイルス感染症の流行時、地域の保健所から発熱の外来の開設を打診され、期待に応えようと開設したのが始まりです。新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行したものの、以前より発熱の外来を持つクリニックが減ったことで、時期によっては当院に多くの患者さんが来られています。当院では感染が疑われる方は隔離室でお持ちいただいた後に陰圧室で対応し、感染してない方とは動線を分ける造りなので安心して利用いただけるでしょう。また車で来られた患者さんはクリニック前にある駐車場で待機いただき、車内にいながら抗原検査から陰性時の診察まで終えられます。院内も高性能フィルター搭載の換気システム、新しい予約システムやウェブ問診など、効率化と感染症対策に力を入れています。
地域の医療機関や介護サービスとはどう連携されていますか?
勤務していた新百合ヶ丘総合病院との連携は深く、患者さんの状況に応じて担当医師を指定して紹介できます。ほかの病院やクリニックとの連携も強め、相互に患者さんを受け入れることで地域全体で医療が完結可能な「顔の見える地域医療連携」をめざしています。また私は2023年から麻生区の介護認定を行う介護認定審査会の委員を務め、介護保険制度や地域の介護サービスの勉強にも注力しています。他のクリニックや介護サービスから質問を受けることもあり、医療と介護の連携にも力を入れたいと思います。
最後に今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

医師の増員や分院の開設などで麻生区の医療の向上をめざす当院は、意欲的なスタッフも強みの一つです。それに応えて朝礼でスタッフ向けに勉強会を行い、週1回はスタッフが発表する場を設けるなどバックアップを続けています。私は地元で開業し一生を地域医療に捧げる覚悟で医師をめざしました。そして今、生まれ育った地域で医師として働け、スタッフもここで働くことを誇りに感じてくれる、そんなクリニックになれたことをうれしく思っています。テレビドラマで医療監修を務めたときは患者さんにとても喜んでいただけ、麻生区の温かさを一層感じました。今後も家族への感謝と地域への恩返しの気持ちを忘れず、微力ながら医療を通じて貢献してまいります。
自由診療費用の目安
自由診療とは胃の内視鏡検査/1万5000円、胃の内視鏡検査(鎮静剤を使用した場合)/2万円、ウイルス抗原検査/5500円、新型コロナウイルスPCR検査/1万2000円、健康診断スタンダード(雇入時健診等)/1万900円、血中抗ピロリ抗体価検査/3000円、血液型検査/2000円、肺炎球菌ワクチン/8000円、帯状疱疹ワクチン/1回2万2000円(2回接種)、RSウイルスワクチン/2万7500円