股関節が痛くて歩きづらい
整形外科を早期受診することのメリット
鶴見かとう整形外科
(横浜市鶴見区/鶴見駅)
最終更新日:2022/01/14


- 保険診療
年齢とともに増える関節痛。特に股関節周りに痛みが出ると、歩く動作に関わる部分なので日常生活にも影響する。市販の湿布薬などで紛らわしている人も多いのではないだろうか。「鶴見かとう整形外科」の加藤章嘉院長は、開業前まで股関節や膝関節の置換術を数多く手がけてきた。手術や人工関節の長所、短所を熟知している強みを生かし、保存療法から手術まで幅広い選択肢を提供するなど、患者の気持ちを考えたアドバイスを大事にしている。「昔は治療の最終形が手術でしたが、現在は治療の一つとして早期から考えるのが望ましい形です」と加藤院長。股関節の痛みにはどのような疾患や原因が考えられるのか、詳しく話を聞いた。
(取材日2021年12月17日)
目次
QOLを左右する股関節の痛み、早期受診と治療で現在の状態と将来的な見通しも知ることができる
- Q股関節の痛みにはどのような病気が考えられるのでしょうか。
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A
▲手術は治療の一つとして早期から考えるのが望ましいという
年齢により異なりますが、例えば、60代くらいなら、関節軟骨のすり減りからくる痛みが多いですね。関節には関節唇(しん)というくぼみがあり、そこが損傷すると痛みや炎症が起こります。一つには変形性股関節症があります。加齢とともに徐々に股関節の軟骨がすり減り、痛みや炎症が起こり、変形が進むと、股関節が内側に入り込んでしまうため、脚の長さが短くなってしまいます。放っておくと関節が硬くなり、歩行が困難になり、血流が滞るため血栓ができやすくなります。女性の場合は、排尿時に尿が内股に伝ってきてしまうといったことが起こります。
- Qどのような原因が考えられますか?
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A
▲骨盤の外側にある臼蓋が小さいと負荷がかかり、痛みを感じる
生まれつき股関節のかぶりが浅い、臼蓋(きゅうがい)形成不全があると発症しやすくなります。大腿骨は骨盤の外側にある臼蓋という受け皿に入っていて、この受け皿が生まれつき小さい方がいます。臼蓋が小さいと広い面積で体重を支えることができないため負荷がかかりやすく、痛みや炎症の原因になります。また、臼蓋形成不全は、乳児に見られる先天性股関節脱臼の原因にもなります。新生児検診もずっと行っていましたが、100人に1人くらい股関節の開きが悪い子がいて、エックス線を撮るとかぶりの浅い子がいました。逆子だったり、脚をそろえて抱っこしたりすると発症しやすいといわれていますが、近年では情報が行き渡り減少傾向です。
- Q変形が進んでしまったら手術を考えたほうがいいのでしょうか。
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A
▲リハビリテーションでは、理学療法士が個別に対応してくれる
股関節の手術で使用される人工関節は、以前よりも良くなってきています。使用されている部品の摩耗が格段に減り、耐久年数が大幅にアップし、なじみも良いといわれています。30年くらい前は、なるべく保存療法で治療し、最後の最後に手術をするという考え方でしたが、今は逆で、早めに関節を置換したほうが筋力を維持できQOLを落とさずに済むことが期待できます。関節が壊れきってしまうと逆に痛みがなくなってしまうので、皆さん、手術を躊躇されてしまうのでしょうね。僕は長年、股関節や膝関節の置換術を行ってきたので、人工関節の良さは十分に理解しています。ですから、30代、40代の方でも、必要な方には手術をお勧めしています。
- Q手術の適用も含めて診断の流れを教えてください。
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A
▲患者とともに痛みのない日常への治療法を考えていく
まずどのような症状が出るのかを問診し、実際に関節を動かして確認した上で、エックス線検査で股関節のかぶりなどを見ます。同じ「痛い」という症状でも、年齢により原因が異なり治療も変わってきますが、最初は、痛み止めや湿布薬を使った治療からスタートします。薬で痛みや炎症がコントロールでき、歩いて買い物にも行けるという場合は、手術は必要ありません。日本は床に座る文化があるので股関節や膝に負担がかかりがちです。脚をダブリューの形にして座るアヒル座りや、女性に多い横座りは良くないですね。また、体重があると負荷が大きくなるので、適正体重の維持と股関節周りの筋力強化するリハビリテーションや運動も必要です。
- Q痛みを我慢せず早期に受診するべきでしょうか。
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A
▲股関節の置換術を行ってきた先生のアドバイスを受けられる
重要ですね。早期に受診することで、自分の股関節の状態を知ることができますし、診断をもとに、痛みの除去や緩和につなげるための治療が可能になります。さらに、将来的な見通しもできます。例えば高校生の場合、将来は立ち仕事ではなくデスクワークに就いたほうがいいなどのアドバイスをすることができます。サプリメントを服用している方も多いですが、医学的な根拠はまだ解明されていません。毎月かかる費用も高額になるので、それだけに頼らず、ぜひ、受診をしていただき、現在の関節の状態を正しく知ってほしいと思います。