佐藤 守 院長の独自取材記事
あさがお歯科
(町田市/町田駅)
最終更新日:2026/03/26
2006年に開業し、今年で20周年を迎える「あさがお歯科」。一般歯科診療の他、訪問歯科診療に注力している。超高齢社会において、口腔ケアは生活の質の向上や全身疾患予防につながる重要な役割を果たす。院長の佐藤守先生は、訪問歯科診療において、ポータブルのユニットやエックス線などの専用機材を完備し、摂食嚥下障害に強い歯科医師も2人在籍。外来診療と同等の治療・メンテナンスの提供をめざす。ケアマネジャーや在宅医などとも密に連携し、歯科と介護連携の活性化を図る中心的存在だ。取材では、明るいあいさつで出迎えてくれた佐藤先生。歯科医療を通じて将来的な健康維持に配慮する様子からは、患者に親身に寄り添う姿が想像できた。そんな佐藤先生の、訪問歯科診療にかける思いを聞いた。
(取材日2026年2月9日)
訪問歯科診療を中心に。摂食嚥下障害の検査も行う
開業当初から、訪問歯科診療に力を入れていると伺いました。

当院は一般歯科と訪問歯科診療を取り扱っていますが、年々訪問歯科診療の患者さんは増えています。対象とするのは通院困難な方たちで、重篤な病気や認知症を患っている、障害があるなど、70代以上の高齢者が中心です。ご自宅には、歯科医師、歯科衛生士、コーディネーターの3人で伺うことが基本で、介護施設などに伺う際は増員して対応しています。「訪問歯科診療では、できることが限られているのでは?」と思われがちですが、一般治療とほとんど遜色はありません。歯を削ったり、歯型を採ったりできる他、エックス線で撮影することも可能です。高額な医療サービスということもなく、介護保険の対象となっているのでご安心ください。
患者さんの自宅へ入るとき、どのような配慮をされていますか?
「お邪魔させていただきます」というリスペクトの姿勢を、スタッフ全員に徹底させています。他人が複数人でいろいろな機材を持って家に入って来たら、患者さんもご家族も、あまりお気持ちの良いものではないかもしれません。靴を脱ぐのできれいな靴下を履く、必要であればスリッパを持参するなど、歯科診療以外の心配りも忘れないようにしています。患者さんと接するときも同様に、「お口の中を見せていただいてもよろしいですか?」といった丁寧な言葉遣いを基本に、事務的ではない多くの会話でコミュニケーションを取るようにしています。毎週同じ曜日、同じ時間に同じスタッフで通うことで、患者さんに覚えていただく。このように、地道に信頼関係を築いていき、訪問歯科診療が患者さんの生活習慣に組み込まれるようにしています。
社会の高齢化に伴い、訪問歯科診療のニーズが増えているのではないでしょうか。

まさにそのとおりです。私が当院で訪問歯科診療に携わっていた18年前くらいは、「歯科医師が家に来てくれるの?」といった感じでした。それが7~8年くらい前からは認知度が急激に上がり、家に来るのは当たり前で、治療の質を求められるようになっています。介護施設でも口腔ケアの重要性が把握されているので、職員さんからの質問が「奥歯が磨きにくいのですが、どうすればいいですか?」「歯磨きが嫌いで口を開けてくれない人への対応はどうすればいいですか?」など、より専門的な内容になっていることを感じます。当院には、食べ物を飲み込みづらいというような摂食嚥下障害を得意とする歯科医師が2人在籍しています。内視鏡検査なども行い、それが歯の問題なのか、内臓や認知症の問題なのかを適切に判断して、治療の方向性を導き出すことができます。
歯科、医科、介護とITツールで効率良く連携
訪問歯科診療では、外部スタッフとの連携が患者さんの健康維持の鍵となるのですね。

地域のケアマネジャー、介護ヘルパー、訪問看護ステーション、内科の在宅医、介護施設などと連携し、情報共有は不可欠です。そのために、ITツールを活用するようになりました。訪問歯科診療の内容を共有したり、ケアマネジャーから受診依頼を受けるなど、非常に役立っています。例えば、介護施設職員から、入所者さんの症状の写真が送られてきた場合、写真があると事前にトラブルを確認できるため、効率の良い診療につながります。それが患者さんへの迅速な治療に結びつき、医療の質を底上げしてくれると考えています。
訪問歯科診療で定期的に歯を診ることの重要性について教えてください。
私たちの体が外界とつながる入り口の一つが、口です。口から、酸素、食べ物、ウイルスなど、あらゆるものが入ってきますから、口の中を診るだけで、体の状態はほぼわかります。例えば、口腔内チェックで脱水症状などを早期に発見できれば、在宅医の検査につなげることができるでしょう。口腔内が整った状態をめざすことで、唾液が出やすくなることにつながり、ご飯を食べやすくなったり、感染症のリスクが減ったりすることが見込めます。高齢になるにつれて、思ったように噛めなくなったり、食欲自体が減少してしまったりする方もいますが、私は高齢者の食べる喜びを支えたいと思っています。訪問歯科診療は患者さんの食欲を守ることにつながり、最終的には健康をサポートするための入り口としても重要です。
今まで出会った中で、印象的な患者さんのエピソードがあったら教えてください。

勤務医時代、長期間の安静状態や運動量の減少により、心身のさまざまな機能が衰えてしまう「廃用症候群」の患者さんを担当しました。ほぼご飯を食べず、寝たきりだったのです。私が「何か食べたい物はないですか?」と伺うと、「やっぱりすしが食べたい」と。「それなら入れ歯を作ってみませんか」とご提案し、歯が1本もなかったため上下で義歯をつくりました。適切な口腔管理をすることで、要介護が要支援になることにつながり、やがて元の日常を取り戻せるまでに生活の質が上がることも期待できると思っています。
オーラルフレイルを食い止めるため、地域医療に尽力
先生の診療のモットーは、どのようなことですか?

患者さんに、楽しんでいただく診療を大切にしています。1週間に1度の訪問ですが、私たちが訪問することで少しの時間だけでも明るく、いつもとは違う雰囲気をつくり、ご本人やご家族が楽しみに待っていてくださればいいなと思っています。そのために、少しでも多く会話をして、治療だけの事務的ではないコミュニケーションを図り、心のケアも重視したいと考えています。診療を楽しんでいただけていれば、「今日は歯医者が来る」と思うことが心の張りにつながるのではないでしょうか。また、診療に関しては丁寧な説明を心がけ、患者さんだけでなくご家族にも納得していただくように心がけています。
先生の経歴をお聞かせください。
昭和医科大学を卒業後、地域クリニックに勤めました。その時の恩師がベテランの歯科医師だったのですが、「インプラントをやりたいです」と言ったら、「入れ歯も作れないのに、インプラントなんてできない」と諭されました。顎や骨の構造を十分に理解しないと、患者さんにフィットした入れ歯はめざせません。そんなレベルで、インプラントなんてとんでもないということです。勉強の一環として、技工所で歯科技工士の代わりに自分で入れ歯を作っていました。おかげで患者さんごとに入れ歯をフィットさせる難しさを実感し、知識と技術が培われました。その経験が生かされ、現在でも義歯は私の得意領域となっています。その後、当院で訪問歯科診療に携わったことで、多くの高齢者においしく食事をしてもらいたい、前向きに生きる希望を提供したいと思うようになりました。その思いが訪問歯科診療を続ける道しるべとなったのです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

訪問歯科診療と聞くと、少しハードルが高いイメージがあるかもしれません。でも「こんな悩みを相談してもいいの?」という段階から積極的に対応しています。ケアマネジャーに相談していただいても、当院にお電話いただいてもかまわないので、心配なことがあれば話だけでもお聞かせください。介護施設に対しても、定期的に職員さん向けに口腔ケアなどの講習会を行うようにしていて、オーラルフレイルになる手前で食い止めることをめざしています。1人でも多くの人に訪問歯科診療を知って、活用していただきたい。今後も介護のスタッフや医療機関を巻き込み、町田市の地域医療に貢献していきたいと思っています。

