英 久仁子 院長の独自取材記事
はなぶさ女性クリニック
(大阪市住之江区/住之江公園駅)
最終更新日:2024/06/28

大阪メトロ四つ橋線・住之江公園駅から徒歩3分の好立地にある「はなぶさ女性クリニック」。優しい笑顔で患者を迎えるのは、長年、住之江区内で産婦人科医療に従事し、地域の特徴にも精通している英久仁子(はなぶさ・くにこ)院長だ。近隣には産婦人科が少ないこともあり、幅広いライフステージにいる地域の女性が気軽に悩みを相談できるクリニックをめざし、スタッフと連携を取りながら患者の話に耳を傾けている。「患者さんにはそれぞれの生き方がありますから、一人ひとりの生き方に沿って、必要な医療を提供することを大切にしています」と話す英院長に、クリニックのこだわりや診療への思いなどを聞いた。
(取材日2024年6月11日)
「住之江区内で妊婦健診が受けられる施設を」と開業
広々とした院内ですね。内装やクリニックの雰囲気づくりへのこだわりを感じます。

待合室の空間を広く取って、明るくニュートラルな雰囲気になるよう心がけました。クリニックの雰囲気に院長の個性は必要ないと、私は思っているんです。来院した方が美しく映える内装をめざし、色調は中性的なものを選びました。トイレも広々とした設計で、ベビーカーや車いすがそのまま入れる大きさになっています。もちろん、おむつ交換台も完備していますよ。待合室のソファーからよく見えるところには、キッズスペースを配置しました。こちらも空間を広めに取り、絵本やおもちゃを置いています。気に入ったおもちゃを手に、院内を歩いているお子さんを見かけることもありますね。産婦人科の受診に不安を抱えている方やお子さんと一緒に来院される方も多いですから、入りやすい雰囲気づくりは大切にしています。
どのような患者さんが多く来院されていますか?
近隣に産婦人科が少ないので、妊婦健診に来られる方や更年期障害のお悩みで受診される方が多いですね。不正出血が起こりやすくなってくる40代の方もよく来られますし、最近は月経困難症で来院される方も増えてきています。あとは、思春期の方や高齢者ですね。未病といわれる、検査では異常がないものの何らかの自覚症状がある状態の方も多いです。近隣の患者さんがほとんどなので、当院ではお名前ではなく番号で患者さんをお呼びして、少しでもプライバシーを守れるよう配慮しています。
開業のきっかけを教えてください。

私が11年間勤務していた住之江区の住吉市民病院が閉院することになり、区内でお産ができる施設がなくなってしまったんです。そうすると、住之江区の妊婦さんは区外にお産をしにいかなければならないのですが、妊婦健診も定期的に受ける必要がありますから、なかなか大変なんですよね。体も心も不安定になりがちな妊娠期間に、妊婦健診のために毎回遠い医療機関へ通うことを思うと、「せめて妊婦健診だけでも住之江区内で」という気持ちが強くなり、開業を決意しました。産婦人科医療の危機に直面しているこの地域に、これまでの経験と知識を生かして貢献したいと思ったんです。妊婦健診をするためには分娩施設との連携が不可欠ですが、幸い近隣の産婦人科の先生は存じ上げている方がほとんどですし、長年の区内での勤務経験から、「この人はこの病院に行きやすいのではないか」といった土地勘もあり、スムーズな連携ができていると思います。
スタッフと連携し、患者に寄り添う診療を実践
妊婦健診においての工夫があれば教えてください。

当院では、地域の妊婦さんが楽しく受けられる妊婦健診をめざし、妊娠初期から33週までの妊婦健診に対応しています。特に大切にしているのは、面談です。不安を抱えて受診される方が多いので、じっくりとお話を伺うようにしています。昔は「指導」という名前でしたが、私は妊婦健診はもっとポジティブで楽しみなものであってほしいと思っているんです。面談はこの方針に賛同してくれる経験豊富な助産師が担当しています。面談室は体の変化やさまざまな心配事を個別に相談できるプライベートな空間になっていますから、何でも相談してほしいですね。医師には話しづらいけど、助産師になら話せることもあるでしょうし、当院のスタッフは聞き上手ですから、些細なお悩みもぜひ打ち明けていただきたいです。面談には医師の診察よりも時間を取っていますが、そこでお話しいただいたことが結果的に診療にもつながっているんですよ。
スタッフさんと連携して、患者さんに寄り添った診療を実践されているのですね。
そうですね。先程もお話ししましたが、当院のスタッフは患者さんのお話を聞き出すのが上手なので、妊婦健診の面談以外に、問診も助産師や看護師に担当してもらっています。問診はクリニックの第一印象を決める大切な時間。患者さんがどういう目的で来院されたのか、どんなことをしてほしいか、面談室でゆっくりとお話を伺って、患者さんお一人お一人のご希望に沿った治療に役立てています。また、当院にはドクターズクラークも在籍しており、診察の書記係を担ってくれています。検査などの入力を任せることで、診察時に私が入力するのはカルテだけになりますから、より患者さんと目を合わせて診察できるんです。スタッフたちと連携を取ることで、より患者さんに向き合う診療ができていると思います。
スタッフの皆さんと連携を取るために、取り組まれていることはありますか?

まずは予習ですね。前日に、次の日に来られる患者さんのカルテを確認して、検査結果や何を求めて来院されるかを予習しています。医師は医師の立場で、看護師は看護師の立場で、受付は受付の立場で予習することで、当日のスムーズな診療に備えているんです。次は朝礼です。前日に予習した内容を朝礼で確認し、スタッフ全員で共有しています。そして、月に1回カンファレンスを行っています。さまざまな業務の改善点をそれぞれが持ち寄って検討し、最終的に「こうする」とスタッフ全員で決めています。日頃から情報を共有し合うことが、スムーズな連携に役立っていると思います。
幅広いライフステージの女性の健康を支えたい
診療で大切にされていることは何ですか?

患者さんがどうなりたいのか、今後どうしていきたいのか、ご希望をなるべく取り入れることを大切にしています。例えば、子宮筋腫があって生理がすごく重い場合でも、「貧血の治療だけで構わない」という方もいらっしゃれば、「薬で治療したい」という方や、「筋腫を取ってしまいたい」という方もいらっしゃるんです。患者さんにはそれぞれの生き方がありますし、その生き方に沿って対症療法や薬物治療、手術を希望されているわけですから、基本的には患者さんのご希望に沿って、それぞれに必要な医療を提供することを心がけています。また、患者さんのご希望に合わせた診療のためには、患者さんご自身が言いたいことを話せる環境も大切だと思っています。「はい」「いいえ」だけではなく、なるべくご自身の言葉でお話しいただけるよう、オープンクエスチョンで質問するように意識しています。
漢方も取り入れていらっしゃるのですね。
更年期障害や月経困難症の治療の選択肢の一つとして漢方を使えればと思い、開業に先立って勉強を始めました。患者さんによっては試してみたい治療法がある方もいらっしゃいますから、こちらから「あなたには漢方を」と押しつけるようなことはしていません。「こんな治療がありますけれど、どうですか?」と、あくまで治療法の選択肢の一つとして提示しています。個人差がありますから、使用してみてあまり合わないと感じられた場合には、患者さんに合わせて別の方法も試し、症状の改善を図っていきます。
最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

思春期から更年期、老年期に至るまで、幅広いライフステージの女性の健康を支えるクリニックでありたいと思っています。さまざまな悩み事に気軽に応じて、地域の患者さんを末永く診ていきたいですね。生理や更年期のお悩みもそうですが、「こんなことで受診してはいけないんじゃないか」と、我慢する必要はありません。どんな症状でも、日常生活に支障があるなら受診を考えるべきですし、些細な不安でもまずは相談することが大切です。来ていただいたら一緒に考えさせてもらいますので、気軽に相談してください。