山口 潔 理事長の独自取材記事
ふくろうクリニック自由が丘
(世田谷区/自由が丘駅)
最終更新日:2024/11/28
脳神経内科と整形外科を中心に幅広い診療を行う「ふくろうクリニック自由が丘」。山口潔理事長は、老年医学が専門で認知症の治療と予防に取り組んできたドクターだ。2013年に「ふくろうクリニック等々力」を開業し、物忘れ・認知症に特化した外来診療と在宅医療を行ってきたが、「在宅医療が必要になる前段階の患者に働きかけて健康寿命を延ばしたい」との想いで2021年に「ふくろうクリニック自由が丘」を開業。玉川医師会でも在宅医療部門を担当し、新型コロナウイルス感染拡大下での対応や、世田谷区の認知症施策にも関わるなど、地域貢献にも努める。「患者さんに近いところで、必要な医療を確実に届けたい」と語る山口理事長に、同院の診療の特徴や認知症診療への思いなどを聞いた。
(取材日2024年8月23日)
地域に根差し、認知症や脳卒中、整形外科疾患に対応
こちらには、さまざまな診療科の医師や専門職が在籍されていると聞きました。
認知症やパーキンソン病、在宅医療の経験も豊富な橋本昌也院長をはじめ脳神経外科、脳神経内科、整形外科、疼痛緩和内科、リハビリテーション科など多様な専門性を持つ医師、理学療法士や認知症ケアを専門とするスタッフといった専門職も多数在籍しています。認知症や脳血管疾患、神経難病、頭痛やめまいなどの診療、筋力低下による腰、膝の痛みなど整形疾患の診療に対応しており、MRI画像検査機器を整備し、脳と体を診ることができることから、スポーツ外傷の診療も積極的に行っています。スポーツ医学に詳しいドクターが多いので、高齢の方だけでなく、お子さんや現役世代、アスリートの受診も多いですね。
2階のリハビリテーションスペースは医療施設とは思えない雰囲気ですね。
リラックスして楽しくリハビリテーションを受けていただけるように、スポーツジムに近い雰囲気の中で、理学療法士や作業療法士が、スポーツ頭部外傷、高次脳機能障害、呼吸器疾患、全身の骨や関節、筋肉の痛みなど運動器の問題、がんの手術前後など多岐にわたるリハビリテーションを行っています。また認知症の進行予防には、脳と体のトレーニングと栄養バランスの取れた食生活が重要ですから、管理栄養士と公認心理師が連携してフレイルや認知症の予防プログラムを作り、カウンセリングを行っています。
先生が高齢者の医療や認知症に興味を持たれたきっかけは?
医学部実習生の頃、整形外科で自分の受け持った高齢患者さんの退院後を調べたことがあったのです。当時はリハビリテーションが充実していないこともあり、あまり経過が良くありませんでした。大学病院では先端的な医療に注目しがちですが、高齢者医療に関してはありふれた病気の治療管理こそが重要だと興味を持ったのです。その後、東京大学医学部附属病院の老年病科に入局し、認知症や神経内科の病気の診療に取り組んできました。
では、開業された経緯を教えてください。
認知症診療は、大学病院より、患者さんが居住する地域の医療機関がしっかり対応して、患者さんの生活の質を上げる医療を提供するべきと感じていたので、2013年に「ふくろうクリニック等々力」を開業しました。物忘れや認知症の外来診療に加えて在宅医療にも取り組み、認知症・高齢者、がん末期、若い精神疾患の患者さんをそれぞれ、専門のドクターが訪問できる診療体制を整えました。お年寄りは持病のある方も多いことから、高齢者総合支援診療所という構想で、眼科、皮膚科、整形外科、嚥下機能の評価をする歯科、リハビリテーション科、神経内科にも対応できるようにしました。そうした経験と実績をもとに、さらにリハビリテーションへの充実した対応と、院内のMRI導入で迅速に診断できる体制のクリニックとして開業したのが当院です。
先進の治療やMCIへの対応。独自の認知症診療を展開
こちらの認知症診療の特徴は何でしょう。
認知症の診断からリハビリテーションまで手がける守備範囲の広さです。新しいタイプのアルツハイマー病治療薬にも対応し、2階のリハビリテーションスペースで通所リハビリテーションにも対応しています。認知症の前段階である、軽度認知障害(MCI)の早期発見に力を入れているのも特徴です。というのも、新しい治療薬はごく早期の認知症のほうがより進行抑制が期待できるからです。しかし、物忘れに特化した外来に来られる患者さんは、ある程度進行している方が多いのです。一方で、軽度認知障害では、サルコペニアによる体重減少や、ロコモティブ症候群による歩行障害、不安やうつといった症状が見られます。そこで、内科や整形外科でも認知症の前段階の患者さんを見つけられるようにしたいと考えています。
早期の認知症への対応に力を入れているということですね。
そうです。まずは、軽度認知障害と考えられる方にどうしたら受診してもらえるかということが課題となります。こうした方は、まだ自分で歩けるし、会話もできる。「私はどこも悪くない」と受診を嫌がる人も多い。その一方で、実は日常生活の困り事が増えているというような場合が多く、早期の認知症への対応というのは難しいのです。ケアは必要ですが、いわゆる介護が必要な状態ではない。そうした患者さんやご家族に対して、認知症の診断支援に加え、ご家族が認知症かもしれないと思ってから医療施設を受診するまでをどうサポートするか。具体的には、認知症カフェなどで、認知症に詳しい看護師や、精神保健福祉士などに相談できる仕組みなどを考えています。従前の介護サービスに加え、認知症と診断される前の方、ごく早期、軽症の方に対する治療法を確立して、生活での困り事を拾い上げるケアのシステムも構築したいです。
MRIを活用して脳振とうの診療にも注力しているとか。
お子さんや若い人にも多い脳振とうは、副院長の野手康宏先生が担当となり、東邦大学医療センター大橋病院と連携して治療やリハビリテーションを行っています。脳振とうは頭部外傷の一つで、出血はしていないが神経損傷を起こしている状態です。コンタクトスポーツなどで脳振とうを繰り返すと認知機能が低下する恐れもありますし、認知症の危険因子の一つに若い時の脳振とうというのがあるので、きちんと診たいと考えています。
地域のニーズに確実に応える真のかかりつけ医をめざす
かかりつけ医としてどのような思いがありますか?
開業して高齢者の医療に携わりたいと考えて取り組んできましたが、当院を開業したことで、お子さんや現役世代も含めて幅広く診療することになりました。いずれも患者さんに近いところで必要とされる診療を行うという気持ちは変わりませんね。開業してから、在宅医療で新型コロナウイルス感染症の患者さんをたくさん診てきました。厳しい状況もありましたが、先生方やスタッフと連携して乗り越えることができ、かかりつけ医にはかかりつけ医の役割があること、自分の専門分野でなくても地域の医療ニーズに、かかりつけ医として応えることはとても大切だと思い至りました。また、感染症や呼吸器疾患を診る経験ができたことも勉強になりましたね。
今後の展望について伺います。
当院は、新型コロナウイルス感染症が流行する前に計画しましたので、発熱症状に対応する外来がないなど地域のニーズに応えきれない部分があります。そこで、発熱患者さんのための外来を備えた内科・小児科を中心としたクリニックを開業し、3院連携で、地域の住民の方が困ったときに対応できる医療環境をつくりたいと考えています。新しいクリニックでは、がん検診にも力を入れる予定です。2人に1人ががんにかかる時代ですから、がんの早期発見もかかりつけ医の重要な役割。さまざまながんの検診を1日で受けられる検診システムをつくり、また外来でできるがん治療や、小児期のがんを経験した人の診療なども手がけたいと考えています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
お子さんからお年寄りまで幅広い医療の提供、力のある真のかかりつけ医として患者さんに近いところでの医療の提供をめざしていますので、ぜひ多くの方にご利用いただきたいと思います。小学生でも頭部のMRI検査は可能ですから、脳振とうや頭部打撲はぜひ受診してください。特に脳振とうになった後、画像診断では異常がなくても脳がクラクラする、頭が痛い、運動をすると吐き気がする、立ちくらみやめまい、乗り物酔いなどの症状があるときはご相談ください。また認知症は、早期から診断を受け治療を始めることが大切です。生活習慣病の検診などと同じように、気軽に脳ドックなどを活用していただければと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは脳ドック/1万5000円、脳ドック(医師説明付き)/1万9800円