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伊藤 洋太 院長の独自取材記事

明日を考える糖尿病クリニック

(渋谷区/恵比寿駅)

最終更新日:2021/10/12

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日本糖尿病学会糖尿病専門医である伊藤洋太院長が、栄養面からのアプローチに着目した診療を行う「明日を考える糖尿病クリニック」。なるべく糖尿病にならないよう、なっても生活の質をできるだけ落とさない方向を示したいとのことで2021年4月1日に恵比寿に開業。インタビュー中に印象的だったのは、院長の話上手で明るい人柄と、たびたび使う「ポジティブ」「楽しく」という言葉だ。栄養指導は食事に制限が設けられることにつらさを感じて挫折する患者も多いそうだが、「ネガティブな要素をどれだけ削れるかが僕の仕事です」と院長。実際にどのような診療をしているのか、話を聞いた。

(取材日2021年5月14日)

糖尿病は患者が主役になって治療に参加できる病気

クリニック名の「明日を考える」という言葉がユニークですね。どういった思いで名づけたのでしょうか?

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糖尿病という病気の治療はとてもユニークなものだと思っています。骨折をしたとしたらギプス、切除ができるがんなら手術と自分で介入する隙間はあまりありません。しかし糖尿病は違います。上手にコントロールする主役は患者さんご自身です。ですがそこの理解がなかなかうまく浸透していないのが課題と思っていますし、わかるように説明するのは担当医の努めです。理解していただければ患者さんの生活の質をかなり改善できると思っています。患者さんご自身と担当医がともに「明日を考える」のが大事なのです。

開業のきっかけは何ですか?

「先生、私は本当に糖尿病なんでしょうか?」以前、ある糖尿病の外来の閉鎖のお手伝いをした時にもう10年もその病院に通っていた方からお聞きした言葉です。これにはショックを受け何かが大きく違っていると思いました。ずっとモヤモヤ思っていたことが堰を切ったように流れ出しました。「自分の体のことをもっと知ってもらおう」そうした経験が開業を後押ししました。「食事を工夫したり運動をすると、どんないいことがあるのか」「なぜこの薬を飲んだほうがいいのか」など治療の必要性をよく理解できるようにお話ししないといけないんじゃないかと思います。小さな診療所だからできることを大事に患者さんと向き合っていきたいですね。

特に栄養相談に力を入れているそうですね。

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本来、栄養相談というのは、健康的にできるだけおいしく食べるにどういう工夫をしたらよいかと考える場であるべきと思っています。「これは食べられません、あれも控えましょう」ではモチベーションも上がるわけもありません。本来糖尿病食=健康食であるはずですから、もっとポジティブに取り組めるやり方があるのです。自分だけがご家族と違うおかずを用意されて食べなければならない、と訴える患者さんもおられます。そういうことにならなくて済むことをお話したいですし、具体的にどうすればいいかも私どもの考える栄養相談でお伝えしたいと思います。ネガティブをポジティブに変える。意味のないことはやめて、意義が感じられるように視点を変えていく。これが私たちが提供すべき栄養相談です。

一生付き合う病気だからこそ、楽しさを見出せる治療を

具体的にはどんな栄養相談を受けられるのでしょうか?

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例えば独身の会社員で、朝はアンパンと牛乳、昼は定食屋、夜はラーメンといった具合の人がいるとします。その人に、「朝は王子さまのように、昼は平民のように、夜は貧民のように」なんて指導する。明らかに無理目です。ではどうするか。改善策を現状にじんわりなじませていく方法を考えます。例えばコンビニ弁当をアレンジ、自炊風のおかずを作るアイディアの数々をお伝えするのも一つです。昼のとんかつ定食問題もしかり。切り口を変えるところから始めていきます。キャベツを大盛りでオーダー、白飯半分は若者に譲渡、など具体的にです。食欲の満足は確保しつつ、食後の血糖値を急激に上げないためにオーダーメイドの策を練っていきます。絵に描いた餅に終わらせないための作戦を伝授するのが当院の栄養相談室です。おいしいことを前提にいかに健康的な食事をつくるかをテーマとして、リモートで行う料理教室なども段階的に提供していきます。

運動療法についてはいかがでしょうか。

そもそも運動は何のためにするのでしょう?「そんなの簡単でしょう、運動すればすぐ血糖が下がるし」、「痩せるために運動するんですよね。痩せれば糖尿病が良くなるって聞きました」とおっしゃる方がいたとします。間違いではありませんがまるごと正解という訳でもありません。実際の診療ではそこからお話ししたいと思います。理由がしっかりわかると自然とやる気も出てくるというものです。そして継続をめざします。やり方は人それぞれです。個々に合う方法を探っていきましょう。運動する習慣などないんだけど、という人でもできるところからまず1日5分の早歩きから始めれば大丈夫。運動すれば目に見える変化が表れることが多いため、それが一番のモチベーションになるでしょう。まずは患者さん一人ひとりが実践できそうな落としどころを一緒に探していきたいと思います。

患者さんのモチベーションを保つために心がけていることは何ですか?

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病気についてよく知ってもらうことです。合併症で苦しむ将来の自分を想像したくないという気持ちが治療継続の大きなモチベーションの一つになるでしょう。とは言っても何も悲観することはありません。合併症は食後の血糖スパイク(急激な血糖上昇)が大きいと急に進んでしまう。では、どういう仕組みで困ったことが起きてしまうのか、絵を書いたりグラフを書いたり、かみ砕いてご理解いただきます。「そういうことか」とわかれば、「じゃあ、血糖スパイクはどうして防げばいいの?」と進みます。食事でいえばレシピはもちろんのこと食べ方の工夫一つでもずいぶん変化が実感できることがあります。運動がどうして血糖スパイクを変えていくのかの仕組みがわかれば運動だってしたくなってくるものでしょう。映画の予告編を見て、本編が見たくなるようなものでしょうか。そういうものがモチベーション保持の極意ではないかと思います。

患者の通院負担を減らすため、院内にもこだわりを

待合室がカフェのような雰囲気で素敵ですね。

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僕自身が受診するならこんなところがいいなと思ったものを設計士さんに作ってもらいました。検査・診察で呼ばれるまで、お隣さんとは程良く仕切られたスペースで落ち着いて順番を待ちたいと思います。「仕事のメール、この待ち時間で片づけたいんだけどな」と思ったら、無線LANとか電源、「待ち時間はせっかくだからゆっくり本でも読んでくつろぎたいなぁ」を叶えるこもり感のあるスペース、ついでにコーヒーでも出てきたらもう最高だなと思います。そういう私の希望を全部そろえてみたという感じです。皆さんもいかがですか? よかったらくつろぎに来てください。

糖尿病以外の病気の相談もできますか?

大学病院時代は糖尿病・代謝・内分泌内科というホルモンの病気を主とする医局で長年働いていましたのでバセドウ病や橋本病に代表される甲状腺疾患の診察も得意です。診療所ですが院内には超音波診断装置もありますので甲状腺の検査は一通り可能です。病気に関する情報はインターネット上にあふれています。読んでしまったばかりにかえって迷うこともあります。そんな時は専門家に意見を聞いてみましょう。また健診結果もそのままにしていませんか? せっかく受けたのですから有効活用しないともったいないです。「軽度異常でB判定」で来年まで放っておいていいものもありますが、中には受診が必要なものもあります。診療所は小回りが利くのがいいところです。「こんなこと相談していいのか?」と思わずおいでください。「相談してよかった」となるようきっちり説明いたします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

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糖尿病になって良かったと言ってほしいわけではありません。しかし「糖尿病の診断をきっかけにライフスタイルをいい方向に改善できた」、「不摂生な食生活を改善せざるを得なくなったおかげで今はずいぶん健康的に食べたり飲んだりしています」という患者さんのお話を聞くときが、担当医としては最高の気分です。治療の理由を知っている患者さんは糖尿病を相手にするのがとても上手だと感じます。血糖値を管理するために生きるのではなく、これからの人生を楽しく過ごすために糖尿病と向き合っていく。患者さんがそう考えられるように私どもは明日も診療を続けてまいります。

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